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第4話三政会議と彼女の名

 しばらくしてイファルが到着する。


「やぁリック、大丈夫だったかい? 盗賊と喧嘩したって聞いたけど」

「うん、大丈夫だよ。 早速だけど、会議をしてもいいかな?」


 そう言って彼は頷くと、僕らは円盤の机にある席に座り話しを進める。


「ごめん、この子も近くにおいてもいいかな?」

「構わないけど、その子は?」

「盗賊に襲われてたのを助けたんだ」


 そう説明し記憶喪失なのも説明すると、三人ともうなづいてくれた。


「今日集まってもらったのはここ最近の盗賊や魔物活性化についてだ。 近隣の村に魔物の襲撃が後を絶たないのは知ってると思うが、ここ最近は特に活性化や襲撃で被害が拡大してきてる。 そこで提案だ、何人かで活性地点を調査しようと思う」


 魔物の活性化は大抵理由がある。

 魔力の濃い者の存在、ロードと呼ばれる魔物だ。

 王という存在は突如として発生し、魔物の活性化を促すとされていて全ての魔物を従える存在だ。


「王がもし近づいているなら、無視は出来ないな」


 イファルは深刻そうにそう言った。

 本来、王はそれほど深刻でもない。

 深刻でもないというのは語弊があるが、実際通常の魔物よりも少し強いくらいだ。

 だがその上の存在である新王や帝王エンペラー、皇王となれば話は別だ。

 王の中をすべる存在はかなりの強さだ。

 一度王都で帝王のゴーレムと戦ったことはあるが、一歩間違えれば死ぬほどの強さだった。

 王都騎士や冒険者を含めかなりの被害が出たのを覚えている。

 皇王は大昔に一度出たと言われていて国がいくつか壊滅的な被害を負ったと知らされている。

 人語を話し、惑わし焼き殺し喰らう悪魔のようだったと。

 だから僕らの世界では新王は全国共通の始末の対象となっている。


「でもどうする? 王と渡り合えるのなんて村でイアか君くらいだろ。 まぁ、僕も負ける気はないけどな」


 イファルは王と戦闘経験がないが、戦った事のある僕からすれば多分死ぬ。

 真正面からの戦いなら彼は死ぬことはないだろう、真正面からならね。

 相手は複数で臨機応変に戦うとなれば彼は恐らく死ぬと僕は踏んでいる。


「お前は村の剣だ、行く必要はない。 最後の要だからね」


 正直、彼はここの防衛が向いていると思う。

 理由としては正面突破小細工なしなら僕と同等の力を発揮できるからだ。


「なら、ボクが行こうか?」

「いや、イアにはフェイル《あの馬鹿》を牽制してほしい」

「ボクじゃ無理、あれはどうやったって何かやらかすから無理。 むしろ、貴方が居た方がまだましだと思う」


 理由を吐き捨てるが、その表情は心底嫌悪に満ちた表情を浮かべている。


「っというか、あいつと関わるくらいなら死んだ方がマシ」


 本音出たな、気持ちはわかるけどさ。


「うちの愚兄がすみません」


 イファルが頭を抱えて謝罪してくるが、 彼が悪いわけじゃない。


「っという事で、ボクが行く。 いいね?」

「でも……」

「リックには今その子がいるでしょ、その子を連れて遠征に行くつもり?」

「そこはイアに頼んで僕が……」


 同性のイアの方が僕よりも彼女と一緒に居るのが適任だろう。


「記憶がなくて身寄りのない彼女を知らない場所で彼女の事を知らないボクに預けるっていうの?」


 鋭い目つきで圧を掛けてくる。

 そうは言われても、僕も彼女と会ってまだ数日だ。

 大して変わらないだろう。

 僕は彼女に決めてほしいから問いを投げかける事にした。


「イアと一緒は嫌かい?」

「言い方に悪意を感じるわね」


 僕の問いかけにイアは口を挟んできた。

 イアの言葉通り彼女がいい子なのであえてこんな嫌な言い方をしたのは僕の意図だ。

 彼女はいい子だから絶対に嫌とは言わないのをわかっていった。


「私、イアの事、好き、だよ?」


 彼女はそう言ってイアを見つめると、イアの口元が緩み彼女を抱きしめる。


「お留守番、すればいいんでしょ? わかってるよ、私のせいでイアはリックを行かせられないんでしょ? 私はイアとここで待ってる、よ?」


 そう言って彼女を抱きしめ返しながらそう言うと、イアが「この子は私が命を賭けて守るから!!」っといった眼差しでこっちを見つめてきた。


「ありがとう。それともう一つなんだけど、この子記憶がないから名前をつけてあげたいんだけど、村で名前を募集してもいいかな?」

「はいは~い、ならリファちゃんってのはどう!?」


 話聞いてたのか?


「募集するって言ったんだが、話聞いてたか?」

「別に今決めたっていいじゃない、決めるのはこの子なんだから」

「そうだけどさ……」


 少女は「リファ……」と小さく呟く。


「いい名前、うん、私、リファがいい」


 気に入ったのか、彼女は「リファ、リファ」っと刷り込むように自分の名前を嬉しそうに口にする。

 彼女が決めた事だし、いいか。


「じゃあリファ」

「うんリファ」

「挨拶じゃねえよ」


 口にしすぎて語尾みたいになってるし。

 突っ込むと、彼女はクスッと笑う。


「冗談、何?」

「僕はこれから遠征に出かけるけど、イアと仲良く出来るな?」

「うん、大丈夫。 イア、優しいから」

「っという事だから、二人は防衛頼むよ」


 そういうと、二人は「わかった」と言って三政会議は終了とした。


「リック、この後時間ある?」

「うん、特に予定はないよ」

「ならこの子連れて私の部隊に紹介したいの」


 仲間皆で彼女の事を見るつもりなのだろう。

 僕も彼女一人より、部隊で見てもらった方が安心できる。


「リファもそれでいいよな?」

「大丈夫」


 そうして僕らは歩き出し、彼女の部隊のいる場所へむかった。











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