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第2話サイドエピソード2 私という存在は何処へ行く?

「これ、飲めよ」


 水筒に入れたお茶を渡されたので、「ありがとう……」っと私はお礼を言い、喉が渇いていたのか一気に飲み干す。

 正直のどがカラカラだった、飲み物の水分が身体中を染み渡らせるような感覚が広がっていく。

 私は飲み終えると、コップを彼に渡す。


「喉が渇いてたなら言えよ」


 コップを受け取ると、お茶を入れ再び渡してくるので「いい、大丈夫」と遠慮すると 「遠慮するな、まだまだいっぱいあるから」と押し付けるように言ってくる。

 「じゃあ、もう一杯だけ」っと言って私は受け取り飲む。


「ふぅっ」

「まだいるか?」

「ううん、もう大丈夫。 ありがと」


 この人、優しいな。

 笑みで返すと、「やっぱりもう一杯」と言って飲み物を貰い飲むと、少し落ち着く。

 落ち着い所で考える。

 私はこれからどうすればいいのだろうと、急激な不安が襲ってくる。


「私、これからどうすればいいんだろう?」


 記憶の無い私はこの後の事を不安に思った。

 記憶も何かをやる目的が私にはないのだ。


「君はどうしたい?」


 彼は私の頭を優しくなでると、優しい微笑みを浮かべ私に問いかけてくる。

 この状況でその笑顔は狡いよ。


「わかんない、どうしたらいいのかどうすればいいのか。 私が何者なのか、何をすればいいのか全く……」


 そういうと彼は少し考えこむような仕草をすると、人差し指を立て提案してくる。


「ならこうしよう、一旦僕達の所に来て新しい君を見つければいい」


 彼の提案に「新しい、私?」と彼に返す。


「うん。 以前の記憶の君にとらわれるより新しい君として頑張っていこう。 僕と一緒にさ」

「リックも、一緒に?」

「……あぁ、君が望むなら」


 リックの言葉を聞いた瞬間、何とも言えない暖かさが胸の奥から広がっていく。

 目の前の真剣な瞳で見る彼に嘘偽りない優しさを感じ、自然と心がほぐれていくような感覚が広がる。

 「新しい私……」心の中で反芻するたびに不安が薄れていく。

 そう、だよね……。

 彼の言う通りだ、記憶がないのならないで新しい自分を見つければいい。

 過去の私も今の私も私なのだ。


「……じゃあ、頑張ってみる」


 そういうと同時に私は自然と彼に右手を差し出し「これから、よろしくね」と彼にニコリと笑う私の手を彼は取ると力強く「あぁ」と答える。

 記憶戻った時どうなるかはわからない。

 もしかしたら今の私が消えるかもしれないが、どうなろうと最後まで彼と共に居ようと私は思うのだった。

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