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第6話 彼女の居場所と新たなる火種

 そうしてイア達の元へ向かうと、楽しそうに話しているリファの姿が目に入る。

 どうやらイア達と仲良くなれたようでよかった。 

 イアの部下達も彼女の可愛らしい笑顔に嬉しそうにほほ笑む。

「リック!!」


 リファは僕が来たのに気づいたのか、こっちに向かってくる。

「仲良くなれたみたいだな」

「うん!! イアの組織?の人たち皆優しくてとってもいい人達だね」

「……そうか」


 ……そうかな?と思ったのがバレたのか、「何よリック、何か言いたそうね?」と言わんばかりの表情でイアは不服そうにこっちを見てくる。

 だって君達、僕に対して当たりきついんだもん。

「何もないよ」

「ならいいんだけど」

 そういうと、彼女と彼女の部下の圧が消える。

 そういうところだぞ、君達。

 リファの方を見ると、何か言いたげにこっちを見ている。

「どうした?」

「えっと、その、えっと……」

 言いどもるリファを見かねてか、イアは「リファ、言いたいこと言いな」っと彼女の背中を叩き彼女の軽い身体が前屈みになりそれを受け止める。 


「イア、加減」


 僕がそう言うと「ごめんごめん」と悪びれることなく言い放つ。


「大丈夫か、リファ」

「ん、大丈夫」

「よかった。 言いたい事を聞いていいかい?」


 そういうと、彼女は再び沈黙したが、少ししてから彼女は噤んでいた小さな口を開く。


「あ、あのねリック、お願いがあるんだけど……私を、弟子にして!!」


 服の袖をぎゅっと握りしめ、彼女は決意を込めたように言い放つ。

 イアの奴、要らんことを……。


「私ね、強くなりたいの。 あの時リックが私を守ってくれたように、私も誰かを守れるように強くなりたいの!! だから、リックの弟子にして!!」


 彼女は勢いでそう言い放ったが、僕は首を横に振ると「えっ」と落胆に満ちた声を上げる。


「絶対にリックを守ってあげるからね」


 ………。

 瞬間、昔の光景が僕の頭に浮かんでくる。

 どうして今、そうくるかなぁ~。


「弟子を取る気はないんだ、ごめんな」

「なんで? 私聞いたよ、昔リックが弟子を取っていたことがあるって」


 このおしゃべりめ。 

 この中でこんなことをしゃべるのはイアしかいないので彼女を見ると、ごめんねっと舌をぺろっと出し謝ってくる。


「僕じゃなく、イアに頼めばいいじゃないか」

「イアに頼んだ。 だけどリックの方がいいだろうって」

「イアの方がいいよ、彼女はここの組織の責任者だし何より君は女の子だ。 僕が見るより同性の彼女に見てもらった方がいいと思う」


 実際僕が見るより彼女の方が指導者としてはむいてると思う。

 僕の部隊は基本的に僕が指導するのではなく、冒険者時代の仲間アライドに任せている。


「私じゃ嫌?」

「リファだからとかそういうのじゃないんだ。 適材適所だよ」


 イアならある程度の戦士にリファを仕上げる事は可能だろう。


「あれならイアの部隊に入るといい、きっと君にとっていいと思う」

「でも、私リックに……」


 そういうと彼女は口を噤み、下を向き言いたい事を我慢していた。

 困ったな……。


「だったらこうしよう。 イアの部隊で修行して、イアと渡り合えるようになったら正式に弟子にするというのはどうかな?」


 実際、イアは相当強い。

 剣技だけならこの村で最強格と言ってもいい程の実力だ。

 普通に彼女の元で修業を詰めたとて10年、いや双方の成長を考えて20年以上はかかるだろう。


「あら?その言い方だと、まるで自分の方が強いみたいな言い方ね?」


 負けん気の強いイアが笑顔だが、笑っていない目でこっちを見てくる。


「何なら今やってみる?」


 そう言って奥の方を指差す。

 この先は訓練場や決闘場としての役割もあるので、いつでも実戦形式の戦いは可能だ。


「決闘するから、それぞれ訓練を終了しなさい」

「誰もやるなんて……」

「こんなコケにされるような言われ方して黙ってられないわ。 時間は三十分後、自由戦で」


 そういうと、彼女は奥に入っていった。


「面倒なことになったな」


 そう呟くとリファは「私を弟子にしないからこうなる」と言い放ってくる。

 理不尽だ。


「リック」

「なんだ?」

「さっきの話だけど、イアと渡り合ったらリックの弟子にしてくれるって話だけど。 彼女と渡り合えるようになったらもう一つ、私のお願いを聞いてほしい」

「お願い?」

「うん、彼女に渡り合って勝てるようになったら、その時にお願いを言って了承してほしい」


 そういう彼女の目は真剣そのものだった。


「因みに聞くけどそのお願いは何か教えてくれたり……」

「だ、駄目、今は言わない!!」


 首を横に振り、断固として言わない感じだった。

 あれかな、記憶を探しに行くのを了承してほしいとかそんな感じかな。


「僕に出来る範囲ならいいよ」


 そういうと彼女の瞳は見開き、嬉しそうな表情を浮かべる。


「約束だからね」


 リファは小さな小指をたてるので、「あぁ」と答えると小指を彼女の小さな指の絡める。


「指切りげんまん、嘘ついたら針千本串刺し、指きった!!」


 なんだ、その物騒な約束の仕方。


「何、それ」

「なんか浮かんできた!!」


 怖いよ、この子。


「それじゃ、私はイアのとこ行ってくるから」


 そう言って彼女は奥へ消えるのだった。












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