『さっ! レイテアちゃん特訓がんばろう』
「が、がんばりますわ」
“考えるスライム”に戦う動きを覚えさせる特訓が始まります。
今、
対面に並ぶは
『まずやってほしいのはさ、スライディングかな』
(すらいでぃんぐ?)
『相手の足元へ滑り込んで、足首あたりを蹴飛ばすことによって、転ばせるのさ。あのバランス悪そうな大型ゴーレムには有効だと思う』
(滑り込む……)
今ひとつどんな動作なのかが思い浮かびません。
『身体を寝かせて、相手の足元へ自分の足を突っ込む感じ?』
これはよくわかります。
『ひっくり返ったら、大型ゴーレムは絶対起き上がれないよ』
(なるほど……動けなくして無力化するのですね)
でも
身の丈も
それに比べずっと華奢で小柄な
『大丈夫だよ。“考えるスライム”が動きを覚えるだけでいいんだから』
おじさまの思い浮かべる動作が伝わります。
『幸い床はツルツルのピカピカだ。助走つけてやってみよう』
「い、いきます!」
覚悟を決めました。
床を蹴り助走、狙うは騎士の足首。
思い切り身体を寝かせ足の裏をぶつけます。
「おっと」
騎士は身じろぎするものの、少しも動きません。
(おじさま、やはり駄目なのではないでしょうか?)
『いやあれで上出来だよ。騎士はゴーレムと違って関節があるから、そう簡単に転ばない。解剖学の図で習っただろう?』
(関節……あ、そうでしたわね)
医師さまに見せてもらった解剖学の書。
よく覚えています。
『関節が衝撃を受け止めるから、人間はそうそう簡単に転ばない。でも大型ゴーレムなんて足はただの棒。バランス崩したら簡単にすっころぶよ』
(なるほど!)
次の日からあらゆる特訓をしました。回し蹴り、飛び蹴り、張り手など。
『動きが鈍いゴーレムを、速い動きで翻弄すればいいわけさ』
(ですわね)
『レイテアちゃんもストレッチをやった成果もあって、なかなか良い動き出来るようになったし』
(おじさまのおかげです)
そんなある日。
私が騎士相手に飛び蹴りを決めた瞬間に、格技場へ飛び込んできた人が。
「レ、レイテア嬢ぉぉぉぉぉぉっ!! な、何をしているぅぅぅぅっ!」
あら! ダロシウ王太子殿下です。
先ぶれもなしにいらっしゃるとは……。