「君が護衛騎士相手に公爵令嬢としてあるまじき野蛮な振る舞いをしていると聞いた。そして! 今見た」
こちらへ歩いてくるダロシウ殿下は不機嫌です。
『レイテアちゃん、何で王子様が特訓のこと知ってんの?』
(王家お抱えの護衛部隊が
『こうやって来たということは隠す気もないってことか』
(公然の秘密ですので……)
私の前に立ち、不機嫌さを隠さないダロシウさま。全てをお話しするしかありませんね。
「レイテア嬢、何も言わないのはどういうことかな」
「殿下、どう説明したものかと頭の中でまとめておりました」
「……このように
「理由はわかった。しかし君は将来の王太子妃、ゆくゆくは王妃だという自覚はあるのか」
「もちろんございます。だからこそ国防は重要。そのための
『レイテアちゃん、流石は貴族令嬢だねぇ。さらっと自分の趣味を大義名分にしちゃったよ』
(あら、おじさま。これは本当ですよ。白い巨人は王国を守ったのですから)
「それが王太子妃のすることだと?」
「そうでございます」
「国防省の仕事だと思うが?」
「はい。
「な、なんだと?」
「国を守ってこその王族。
「な、な、な」
殿下は頭を抱えてしまいました。表情がくるくる変わって、大道芸人の百面相を連想してしまいました。
「殿下、
「……帰る」
殿下は肩を落として、足を引きずるようにして馬車の方へ行かれます。
『あ〜あ。王子様ショック受けてるぜ』
(殿下のご期待に沿えないのは心苦しいのですけど……)
『……ま、国王ってのは何でも飲み込んでしまうぐらいの度量がないとな』
(あ、それは父も同じこと言ってました)
夕刻に帰宅した両親に色々と訊かれましたけど、殿下との会話を聞いたお父さまは顔色がすぐれません。
お母さまは『レイシアのすることですからね』とため息。
翌日。
早朝から先ぶれがあり、意外なお客さまがいらっしゃいました。