目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第9話 洞窟、魔物ビュッフェかよ! キモすぎ無理!

ジメジメして、カビ臭くて、暗くて、マジ最悪。

あたし、ゆきぽよは、ゴルドーさんの持つ松明の明かりだけを頼りに、不気味な洞窟の中を進んでいた。


「てか、ゴルドーさん。まだ奥あんの? この洞窟」


「ああ。地図があるわけじゃねえからな。どこまで続いてるか…。しかし、この淀んだ空気…嫌な感じだぜ」


ゴルドーさんが、斧を握りしめながら警戒を強める。

あたしも、なんか背筋がゾワゾワする感じがする。

気のせいじゃなくて、マジでヤバい気配が濃くなってきてる。


キシャァァ! チュルチュル! ギーギー!


「うわっ! なんかキモい音、めっちゃ聞こえるんだけど!」


あたしが顔をしかめた瞬間、前方の暗闇から、何かがうごめく気配がした。

松明の明かりが、それを照らし出す。


「うげぇっ!!」


思わず声が出た。

そこは、少し開けた広間みたいになってるんだけど、床も、壁も、天井も、なんか半透明でプルプルしたヤツとか、デカいコウモリとか、緑色のキモい小鬼とかで、埋め尽くされてる!


「スライムに、ジャイアントバット、それにケイブゴブリンか! 数が多いな!」


ゴルドーさんが叫ぶ。

スライム? ゴブリンは分かるけど、コウモリも魔物なわけ? てか、数、ヤバすぎ!

マジで、魔物ビュッフェ状態じゃん!


「ギギィィィ!!」

「キシャァァァ!!」


あたしたちに気づいた魔物たちが、一斉にこっちに向かってくる!

スライムが地面を這い、コウモリが空から襲いかかり、ゴブリンが奇声を上げて棍棒を振りかぶる!

カオスすぎ!


「嬢ちゃん、数を減らすぞ! 囲まれるな!」


ゴルドーさんが斧を振るい、迫ってくるゴブリンを薙ぎ払う!

さすがBランク! 頼りになる!


「わかってるって! うざいのが多すぎんだよ!」


あたしは、足元に迫ってきていたスライムの大群に向かって、思い切り地面を踏みつけた!


ドォォォン!!


『身体強化 極』のパワーを込めた踏みつけ!

衝撃波が巻き起こり、足元のスライムたちが、まとめて吹き飛んで壁に叩きつけられ、ベチャッ! と潰れた!


「うわ、キモ…」


なんか、緑色の液体が飛び散ってるし。

最悪。


「キシャァ!」


頭上からは、ジャイアントバットが急降下してくる!


「うっとおしい!」


あたしは、飛んでくるコウモリを、ハエ叩きみたいに素手でバシッ! と叩き落とす!

数匹まとめて地面に叩きつけられて、ピクピクしてる。


「ギィィ!」


横からは、ケイブゴブリンが棍棒で殴りかかってきた!

昨日までのゴブリンより、ちょっとガタイがいい感じ?


「はい、ワンパン」


あたしは、向かってくるゴブリンの顔面に、カウンターで拳を叩き込んだ!

ゴキャッ! という鈍い音と共に、ゴブリンはくの字に折れ曲がって吹っ飛んでいった。


「嬢ちゃん、右!」


ゴルドーさんの声!

右を見ると、壁を伝って別のゴブリンが飛びかかってこようとしてる!


「サンキュ!」


あたしは、近くに転がっていた手頃な大きさの岩を拾い上げると、それを野球のボールみたいにゴブリンに向かって投げつけた!


「うぎゃっ!?」


岩は見事にゴブリンに命中し、ゴブリンは岩ごと壁にめり込んだ。


「…ふぅ。マジ、キリないんですけど! まだいんの!?」


あたしが辺りを見回すと、さっきまで埋め尽くされていた魔物の姿は、ほとんどなくなっていた。

ゴルドーさんも、残っていた数匹を片付けてくれたみたいだ。

床には、魔物の死骸とか、スライムの残骸とかが散らばってて、マジで地獄絵図。


「…ったく。これだけの数を、あっという間にか。嬢ちゃんの強さは、何度見ても規格外だな」


ゴルドーさんが、呆れたように笑う。


「まあね! で、どーする? まだ奥行く?」


「ああ。こいつらは、明らかに異常発生だ。原因は、もっと奥にあるはずだ」


あたしたちは、魔物の死骸を踏み越えて、さらに洞窟の奥へと進むことにした。

道中、また何度か同じような魔物の群れに遭遇したけど、あたしとゴルドーさんのコンビ(主に、あたしが無双して、ゴルドーさんがサポートするスタイル)で、問題なく蹴散らしていく。


しばらく進むと、道が二手に分かれている場所に出た。


「うわ、分岐とかあんの? めんどくさ」


どっちに進めばいいわけ?

勘で決める?


「待て、嬢ちゃん。こっちの通路…何か感じるか?」


ゴルドーさんが、右側の通路を指さして言う。

あたしも、そっちに意識を集中してみる。


「……んー? なんか、空気が違う感じ? こっちの方が、もっとヤバい気配するかも」


左の通路からも魔物の気配はするけど、右の方が、もっと濃密で、なんか…異質な感じがする。

うまく言えないけど、勘ってやつ?


「俺もそう思う。魔物の巣があるなら、おそらくこっちだろう。行くぞ」


ゴルドーさんも同意してくれた。

あたしたちは、右側の通路へと足を踏み入れる。


こっちの通路は、さっきまでの道より、さらに狭くて、天井も低い。

壁には、なんかヌメヌメした苔みたいなのが生えてて、マジでキモい。


「うわー、なんかヤバそうな雰囲気マシマシじゃん…」


奥に進むにつれて、ゴボゴボ…とか、シュルシュル…とか、今までとは違う、もっと気味の悪い音が聞こえてくる。

そして、通路の突き当たり、少し開けた空間が見えてきた。

その空間の真ん中あたりが、ぼんやりと紫色の光を放っている…?


「ゴルドーさん、あれ、なに?」


「分からん…。だが、この異常な魔力の発生源は、あの光に関係がありそうだ。気をつけろよ、嬢ちゃん!」


ゴルドーさんが、松明を掲げて、ゆっくりと広間へ入っていく。

あたしも、ゴクリと唾を飲んで、後に続いた。

なんか、ラスボス前のステージみたいな雰囲気なんですけど!


広間の中央で光っているのは、地面から突き出た、黒曜石みたいなデカい結晶体だった。

その結晶体が、不気味な紫色の光を明滅させながら、ドクン、ドクン、と脈打っているように見える。

そして、その結晶体の周りには…。


「……なんか…いるんですけど…」


これまでの魔物とは明らかに違う、もっとデカくて、もっと異様な姿をした何かが、結晶体を取り囲むように、うごめいていた。

あれが、魔物大量発生の原因…?

てか、あれ、倒せんの? ウチでも。


あたしは、ゴルドーさんと顔を見合わせる。

いよいよ、ヤバいヤツのお出ましかもしれない。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?