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第10話 ボスとかクリスタルとか、まとめて粉砕!

洞窟の最深部。

あたしとゴルドーさんは、広間の中央で不気味に脈打つデカい黒い結晶体と、その周りでうごめく異様な魔物たちを目の当たりにして、立ち尽くしていた。

空気、重すぎ…。

てか、あの魔物たち、マジでデザイン悪趣味すぎん?


「ゴルドーさん、あれ、何? 魔物?」


あたしが小声で聞くと、ゴルドーさんは険しい顔で結晶体を睨みつけながら答えた。


「…間違いない。ありゃ『ダーククリスタル』だ。周囲の魔力を無理やり吸い上げて、歪んだ魔力を放出し、邪悪な魔物を生み出すと言われている呪いの結晶だ。こいつが、今回の騒動の元凶だろうな」


「へー。じゃあ、あの周りにいるキモいのは、そいつが生み出したってこと?」


「おそらくはな。しかも、ただの魔物じゃねえ。クリスタルから直接、歪んだ魔力を供給されてやがる。かなり厄介だぞ…!」


ゴルドーさんが言い終わるか終わらないかのうちに、結晶体の周りにいた異形の魔物たちが、一斉にこっちを向いた!

全部で3体。

岩石でできたゴーレムみたいなヤツと、腕がいっぱいあるタコみたいなヤツと、黒いモヤモヤでできた獣みたいなヤツ。

どれもこれも、さっきまでの雑魚とは比べ物にならないくらい、ヤバいオーラを放ってる!


「グルォォォ!」

「キシャァァ!」

「シュゴォォ!」


3体のボス(仮)が、同時に襲いかかってきた!


「ちっ! 来るぞ、嬢ちゃん!」


ゴルドーさんが斧を構え、一番手前にいた岩石ゴーレムに斬りかかる!


ガキィィン!


重い金属音が響く!

ゴルドーさんの斧が、ゴーレムの硬い体に弾かれた!?


「くそっ、硬え!」


ゴルドーさんが体勢を立て直す隙に、ゴーレムの巨大な岩の拳が振り下ろされる!


「危ねっ!」


ゴルドーさんは、間一髪でそれを回避!

拳が叩きつけられた地面が、メリメリと陥没する!

パワーもヤバい!


「こっちも相手してらんないんですけど!」


あたしの方には、多腕タコ野郎と黒モヤ獣が迫ってきていた!


「とりあえず、邪魔!」


あたしは、まず突進してきた黒モヤ獣に向かって、ストレートパンチを叩き込んだ!


ボフン!


…あれ? 手応えがない?

あたしの拳は、黒いモヤを素通りして、空を切った。


「シュゴォォ!」


黒モヤ獣は、嘲笑うかのようにあたしの周りを飛び回り、鋭い爪のようなもので攻撃してくる!


「ちょ、実体ないとか、ウザすぎ!」


あたしは、ひらりひらりと攻撃をかわす。

当たっても大したことなさそうだけど、なんか腹立つ!


「キシャァァ!」


そこへ、多腕タコ野郎が、無数の触手を鞭のようにしならせて襲いかかってきた!


「うっとおしいんだよ!」


あたしは、迫りくる触手を掴んで、逆にタコ野郎をぶん投げようとした!

…けど!


ズルッ!


触手がヌルヌルしてて、掴めない!


「うわ、キモ! なんなん、こいつら!?」


硬いヤツ、実体ないヤツ、ヌルヌルなヤツ。

どいつもこいつも、めんどくさい特性持ちすぎ!


「嬢ちゃん、そいつら、物理攻撃が効きにくいタイプかもしれん! 何か別の手を…!」


ゴルドーさんが、ゴーレムと打ち合いながら叫ぶ。


「別の手って言われても…魔法とか使えないし!」


くっそー!

イライラする!

あたしは、こういうチマチマしたのが一番嫌いなんだよ!


「…しゃーない。ちょっと本気出すし!」


あたしは、『身体強化 極』の出力を、グン! と一段階引き上げた!

全身の細胞が活性化するような、内側からパワーが溢れ出してくる感覚!

視界が、さらにクリアになる!


「まずは、ウザいモヤモヤから!」


あたしは、飛び回る黒モヤ獣の動きを完全に見切り、その核(コア)らしき、一際黒い部分を狙って、超高速の掌底を打ち込んだ!


ドパァンッ!!


空気を切り裂くような音と共に、掌底は黒モヤ獣のコアにクリーンヒット!

黒いモヤが一瞬で霧散し、獣は断末魔の叫びを上げる間もなく消滅した!


「よし、一体!」


「キ、キシャ…!?」


残った多腕タコ野郎が、仲間が一瞬で消滅したのを見て、明らかに怯んでいる。


「次、お前ね!」


あたしは、タコ野郎に向かって突進!

ヌルヌル触手が、また鞭のように襲いかかってくる!


「んなもん!」


あたしは、触手の動きを完璧に読み切り、そのすべてを掻い潜ってタコ野郎の懐に飛び込む!

そして、そのぶよぶよした本体(胴体?)に、渾身の右ストレートを叩き込んだ!


ズッッッッ…!!!


鈍い衝撃音!

タコ野郎の体が、ありえない形に歪み、内部から破裂するように弾け飛んだ!

緑色の体液が飛び散る!


「うげ! 最悪!」


あたしは、咄嗟に顔をガードしたけど、服とかにちょっとかかったかも…。

マジで萎えるんですけど…。


「嬢ちゃん、ナイスだ! あとはこいつと…!」


ゴルドーさんが、岩石ゴーレムとまだ奮闘している。

あたしも加勢しようとした、その時。


ゴゴゴゴゴ…!


広間の中央にあるダーククリスタルが、ひときわ強く脈打ち始めた!

そして、砕け散ったタコ野郎や消滅した黒モヤ獣の残骸から、紫色の魔力が立ち上り、クリスタルに吸い込まれていく!


「まずい! あのクリスタル、魔物を再生させる気か!?」


ゴルドーさんが叫ぶ。

え、マジ?

それ、無限ループってやつじゃん!

だるすぎ!


「だったら、あのクリスタル自体をぶっ壊せばいいんでしょ!」


あたしは、ターゲットを岩石ゴーレムから、中央のダーククリスタルに変更した!


「邪魔すんな!」


あたしは、ゴーレムの横をすり抜け、クリスタルに向かって一直線にダッシュする!


「グルォォォ!」


ゴーレムが、あたしを止めようと腕を振りかぶる!


「行けぇ! 嬢ちゃん!」


ゴルドーさんが、身を挺してゴーレムの前に立ちはだかり、その攻撃を受け止める!


「ゴルドーさん!」


「俺のことは気にするな! クリスタルを、やれぇぇぇ!!」


ゴルドーさんの背中が、頼もしく見えた。

…あんま時間かけると、ゴルドーさんがヤバいかも。


「しゃーない! これで、終わり!!」


あたしは、ダーククリスタルに向かって跳躍!

空中で体を捻り、全てのパワーを右足に込めて、踵落としを叩き込む!


「くらえやぁぁぁ!!」


あたしの踵が、脈打つダーククリスタルに、吸い込まれるように激突した!


バキィィィィィィィィィィィィン!!!!!!


今までで一番デカい破壊音が、洞窟中に響き渡る!

ダーククリスタルは、蜘蛛の巣状にヒビが入り、次の瞬間、粉々に砕け散った!


紫色の光が、弾けるように消滅する!


「グ…オ……」


あたしの後ろで、ゴルドーさんを抑えつけていた岩石ゴーレムも、まるで糸が切れた人形のように、動きを止め、ガラガラと崩れ落ちていった。


「…………」


広間に、静寂が戻る。

さっきまでの淀んだ魔力の気配は、嘘のように霧散し、洞窟にはただ、ひんやりとした空気が流れているだけだ。


「…はぁ、はぁ…終わった…のか?」


ゴルドーさんが、肩で息をしながら呟いた。

結構、ボロボロだ。

大丈夫かな?


「ふぅー、やっと終わったー! マジ、疲れたんですけど!」


あたしは、ケロッとした顔で(まあ、ちょっとは疲れたけど)、腕を組む。

クリスタル、思ったより硬かったな。

最後の踵落とし、結構マジで力込めたし。


「お前さんは、本当に…化け物だな…」


ゴルドーさんが、呆れたように笑って、その場にへたり込んだ。


「ま、これで解決っしょ? 街も平和になるんじゃね?」


あたしは、砕け散ったダーククリスタルの欠片を蹴飛ばしながら言った。

欠片は、もう光っておらず、ただの黒い石ころみたいだ。

…あれ? なんか、奥にまだ道、続いてない?

気のせいかな。


「ああ…。これで、魔物の異常発生も収まるはずだ。…帰るか、嬢ちゃん。ギルドに報告しねえと」


「だねー。早く帰って、風呂入りたい! なんか、色々浴びたし!」


あたしたちは、互いを労い(主にゴルドーさんが疲弊してるだけだけど)、薄暗い洞窟を後にすることにした。

帰り道は、魔物の気配もすっかり消えていて、楽勝だった。


こうして、あたしとゴルドーさんの、ドキドキ(主にゴルドーさんが)洞窟探検&原因究明ミッションは、無事(?)に幕を閉じたのだった。

まあ、あたしにかかれば、こんなもんっしょ!

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