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第11話 街の英雄? ま、ウチだし当然っしょ!

洞窟から地上に戻ってきた時の、太陽の眩しさ!

マジ、生き返る心地だったわー。

あのジメジメ洞窟、二度と行きたくないんですけど。


「はー、マジ疲れたー。早く風呂入りたいんだけど」


あたし、ゆきぽよは、泥やらスライムの粘液やら(考えたくない)で薄汚れた服をパタパタさせながら、隣を歩くゴルドーさんを見る。

ゴルドーさんは、あたし以上にボロボロ。

鎧は傷だらけだし、顔にも煤がついてるし、歩き方もなんかフラフラしてる。


「…ったく。お前さんは、なんでそんなにピンピンしてやがるんだ…」


ゴルドーさんが、恨めしそうな目でこっちを見る。


「えー? ウチも結構疲れてるんですけど? てか、ゴルドーさん、マジで大丈夫?」


「ああ、なんとかな…。だが、当分、洞窟はこりごりだぜ…」


あたしたちが、そんな会話をしながら街に戻り、冒険者ギルドの扉を開けると、中にいた人たちが一斉にこっちを見た。

そして、次の瞬間、ワッ! と歓声が上がった。


「おおっ! 帰ってきたぞ!」

「ゆきぽよさんとゴルドーさんだ!」

「ご無事でしたか!」


エリアナさんが、カウンターから飛び出してきて、あたしたちの元へ駆け寄ってきた。

その目には、うっすら涙が浮かんでる。


「ゆきぽよさん! ゴルドーさん! 本当によくご無事で…! 心配しました!」


「おう、エリアナさん。まあ、なんとかな」


ゴルドーさんが、疲れた顔で笑う。


「まさか、本当に原因を突き止めて、解決してきたというのですか…?」


エリアナさんが、信じられないといった様子で聞く。


「まあね! なんか、黒いキモいクリスタルがボスだったから、ウチがぶっ壊してきた!」


あたしがドヤ顔で言うと、ギルド内が「おおーっ!」と、どよめいた。


「詳しい話を伺いましょう。マスターがお待ちです」


エリアナさんに案内されて、あたしたちはギルドの奥にある、一番豪華な部屋に通された。

そこには、ギルドマスターのおじさん(前に緊急依頼を貼りだしてた人だ)が、ドーンと座っていた。

なんか、威厳ある感じ。


「よくぞ戻った、ゴルドー、そして…ゆきぽよ君」


ギルドマスターが、あたしたちを見て頷く。


あたしたちは、洞窟での出来事を報告した。

主にゴルドーさんが、ダーククリスタルのこと、異形の魔物のこと、そしてクリスタルを破壊した経緯を説明してくれた。

あたしは時々、「そうそう! めっちゃキモかった!」「タコみたいなヤツ、ヌルヌルでマジうざかったし!」「クリスタル、ウチが踵落としで粉々にした!」みたいに、感想を交えつつ補足した。


報告を聞き終わったギルドマスターは、しばらく黙って腕を組んでいたけど、やがて、深い溜息をついた。


「…信じられんな。まさか、あの『魔物の巣穴』の元凶がダーククリスタルであり、それを破壊して戻ってくるとは…」


ギルドマスターは、あたしとゴルドーさんを交互に見た。


「ゴルドー、貴殿の長年の経験と勇気にも感謝する。そして、ゆきぽよ君」


ギルドマスターの視線が、あたしに注がれる。

なんか、めっちゃ真剣な目で見られてるんですけど。


「君の力は、規格外だ。Bランクという枠には、到底収まりきらん。今回の功績は、街をスタンピードの危機から救ったと言っても過言ではない」


「え、そんなにヤバかったの?」


「ああ。君たちがあのクリスタルを破壊してくれたおかげで、周辺の魔物の活性化は急速に収束に向かっている。街の危機は去ったと言っていいだろう」


マジか!

あたし、そんなすごいことしちゃったんだ。

まあ、なんかヤバそうなのはぶっ壊すに限るって思っただけだけど。


「よって、今回の依頼報酬、金貨5枚に加え、特別ボーナスとして、さらに金貨5枚を支給する!」


ドン! と、金貨が10枚、テーブルの上に置かれた!


「き、金貨10枚!? やったー!! マジで!? ウッソー!?」


あたしは、人生で見たこともない大金(異世界基準)に、テンションMAX!

目がチカチカする!

これで、当分、ウマいもん食い放題だし、可愛い服とか買えるかも!


「あ、ありがとうございます!」


あたしは、慌てて金貨をポーチにしまい込んだ。

落としたらマジで泣く。


「さらに、ゆきぽよ君。君をBランクに留めておくのは、ギルドとしても損失だ。早急にAランクへの昇格を推薦させてもらう。異論はあるかな?」


「え、Aランク!? やった! なるなる!」


あたしは、二つ返事でOKした。

ランクが上がれば、もっと稼げるもんね!


「うむ。では、近日中に正式な手続きを行おう。今日はゆっくり休むといい。二人とも、本当によくやってくれた」


ギルドマスターは、満足そうに頷いた。


あたしたちは、ギルドマスターの部屋を後にした。

ギルドのホールに出ると、冒険者たちから拍手と歓声で迎えられた。


「よくやった!」

「街を救ってくれてありがとう!」

「あんた、すげえな!」


なんか、めっちゃ英雄扱いされてるんですけど!

ちょっと照れるじゃん。

まあ、ウチだし当然っしょ! って顔しといたけど。


ゴルドーさんも、周りの仲間たちから肩を叩かれて、労われていた。

まんざらでもなさそうだ。


ギルドを出ると、街の雰囲気が、朝とは全然違うことに気づいた。

ザワザワした感じがなくなって、活気が戻ってる。

すれ違う人たちの顔にも、笑顔が見える。


「おお、マジで平和になったんじゃね?」


あたしがキョロキョロしていると、果物屋のおばちゃんが、あたしに気づいて駆け寄ってきた。


「あんた! ゆきぽよちゃんだろ! ギルドから聞いたよ、あんたが魔物をやっつけてくれたんだってね! ありがとうよ!」


そう言って、真っ赤なリンゴみたいな果物を、あたしの手に握らせてくれた。


「え、あ、ども…」


なんか、こーゆーの、慣れないな。

でも、悪い気はしないかも。


あたしは、ゴルドーさんと別れて、宿屋「陽だまり亭」に戻った。


「あらあら、ゆきぽよちゃん! おかえり! 無事でよかったよぉ!」


宿屋のおばちゃんも、あたしの無事をすごく喜んでくれた。

そして、「お疲れだろうから」って、すぐにお風呂を用意してくれた。

異世界のお風呂は、なんかデカい木の桶みたいなやつだったけど、お湯はちゃんと温かくて、いい匂いのするハーブ? みたいなのが浮いてた。


「はぁ~、生き返る~…」


お湯に浸かると、どっと疲れが出てくる感じ。

洞窟での泥とか、魔物の体液とか(思い出したくない)、全部洗い流して、マジでスッキリ!


お風呂から上がって、部屋に戻る。

ふかふかのベッドにごろーんと寝転がる。

最高。


(Aランクかー…)


ベッドの上で天井を眺めながら、さっきのギルドマスターの言葉を思い出す。

Aランクになったら、もっとヤバい依頼とか受けられるのかな?

ドラゴン討伐とか、マジであるかも?


今回の洞窟のボス、正直、レイジボアよりは手強かった。

ちょっとだけ、「ヤバいかも?」って思った瞬間もあったし。

『身体強化 極』の力、まだ全然、底が見えないけど、もっと強い敵と戦ってみたい気もする。

…なんてね。

まあ、基本は楽して稼ぎたいんだけど。


(とりあえず、明日は何しよっかなー)


難しいことは考えずに、あたしは心地よい疲労感に包まれて、またすぐに眠りに落ちていった。


翌朝。

すっかり元気になったあたしは、いつも通り、ギルドへと向かう。

街の人たちの視線が、昨日までとちょっと違う気がするけど、まあ、気にしない。


「さて、今日はどんな依頼があるかなー?」


英雄扱いされても、あたしはあたし。

能天気ギャル、ゆきぽよの異世界ライフは、まだまだ続くのだ!

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