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第16話 探偵ごっことかマジうける! 黒いの発見!

「はぁー、疲れたー」


あたし、ゆきぽよは、王城から宿屋『陽だまり亭』に戻ってきて、速攻でふかふかベッドにダイブした。

叙任式とか、王子様との密約とか、なんか色々ありすぎて、マジでキャパオーバーなんですけど。


金貨100枚の極秘依頼。

貴族の失踪、黒装束の暗躍…。

正直、めっちゃ面倒くさそう。

でも、アル(もう王子様って呼ぶの面倒だからアルで統一)があんな真剣な顔で頼んでくるし、報酬もヤバいし、それに、なんかちょっとだけ、面白そうかもって思っちゃってる自分もいる。


「ま、なんとかなるっしょ!」


とりあえず、難しいことは後で考える!

それが、あたし、ゆきぽよスタイル!

…とか言ってたら、いつの間にか寝ちゃってた。


翌日。

すっかり元気を取り戻したあたしは、早速、アルから頼まれた調査を開始することにした。

まずは情報収集だよね!

探偵の基本っしょ!


あたしは、王都の冒険者ギルドへと向かった。

昨日、Aランクになったばっかだから、なんか新しい情報とか見れるようになってるかもだし。


ギルドに着くと、やっぱり昨日よりさらにあたしへの視線がすごい。

遠巻きにヒソヒソ話してるのが丸聞こえ。

まあ、もう慣れたけど。


Aランク用の依頼ボードや情報掲示板を見てみるけど、貴族失踪とか黒装束とか、そういう直接的な情報は載ってないみたい。

やっぱ、極秘情報ってことか。


「こーなったら、聞き込みっしょ!」


あたしは、ギルド内の酒場スペースに行って、たむろしてる冒険者たちに声をかけまくった。


「ねーねー、お兄さんたち! 最近、なんか物騒な噂とか知らない?」


「ちわーっす! この辺で、ヤバい情報とか持ってない?」


最初は、「なんだこのギャルは?」みたいな感じで警戒されたり、「知らねーよ」って適当にあしらわれたりしたけど、あたしはめげない!

持ち前のギャルスマイル(圧強め)と、しつこさで、粘り強く聞き込みを続ける!


そしたら、何人かがポツポツと情報をくれた。


「そういや、夜中に裏通りで、黒いマントの連中がコソコソしてるのを見たって奴がいたな」

「ああ、聞いたことあるぜ。なんか、やけに身軽な連中らしい」

「貴族街に近い、第七地区あたりは最近、特に治安が悪化してるって話だ」


ふむふむ。

黒マント、身軽、第七地区ね。

メモメモ(心の中に)。


ギルドだけじゃなくて、街中でも聞き込み続行!

市場の商人のおっちゃんとか、露店の可愛いお姉さんとか、なんか路地裏で怪しい商売してそうな情報屋っぽい兄ちゃんとかにも、片っ端から話しかける!


「ねーねー、面白い噂ない? なんでもいーから教えて!」


「最近、なんか変わったことあった?」


こっちでも、最初は怪しまれたけど、あたしが冒険者だって分かったり(Aランクのギルドカード見せびらかしたり)、時にはお菓子とかあげたりして(昨日買ったやつ)、なんとか情報を引き出す!


「そういや、最近、マルティン侯爵家の警備が、やけに厳重になったって話だぜ」

「ああ、あの悪徳侯爵か。なんかヤバいことでも企んでんじゃねえの?」

「黒装束の連中なら、闇ギルドと繋がりがあるって噂もあるな。ま、あくまで噂だが」


マルティン侯爵!

やっぱり、あの縦ロールの家、怪しい!

闇ギルドとかも出てくんの?

なんか、キナ臭くなってきたじゃん!


あたしは、情報収集のついでに、マルティン侯爵の屋敷の近くまで行ってみた。

うわー、デカい! 豪華!

でも、なんか、門とか壁とかに、やたらと屈強な衛兵がいっぱい立ってて、ピリピリした雰囲気。

悪いことしてる奴って、だいたいこーゆー分かりやすいことするよねー。


「よし、今日のところはこれくらいにしとくか」


結構、情報集まったし、そろそろ夜だ。

例の「治安が悪い」って噂の第七地区あたりを、ちょっとパトロール(という名の夜の散歩)してみることにした。


第七地区は、王都の中でも古い建物が多くて、道も入り組んでる感じ。

街灯も少なくて、薄暗い。

確かに、なんか物騒な雰囲気。


あたしは、気配を消して(できるのか?)、路地裏とかを歩き回る。

しばらくすると…。


(…ん?)


建物の屋根の上に、黒い影が動いたのが見えた!

しかも、めっちゃ素早い!


「いた! あれじゃね!?」


あたしは、直感的に確信した。

あれが、噂の黒装束だ!


「待てやゴルァ!」


あたしは、叫びながら、近くの建物の壁を蹴って、一気に屋根の上へ跳躍!

『身体強化 極』のパワーで、身軽さもMAX!


屋根の上を、忍者みたいに飛び移っていく黒装束!

あたしも、負けじとそれを追いかける!

王都の屋根上を舞台にした、リアル鬼ごっこ開始!


「ちょ、はっや! でも、逃がさねーし!」


黒装束も、かなりの手練れみたいで、煙幕を焚いたり、まきびしみたいなの撒いたりして、追跡をかわそうとしてくる!

うざっ!


あたしは、そんな小細工は全部無視して、一直線に距離を詰める!

そして、ついに、袋小路になってる路地裏に、黒装束を追い詰めた!


「ふぅ、やっと捕まえた…って、あれ?」


路地裏には、あたしが追いかけてた黒装束だけじゃなく、他にも4、5人の仲間が待ち構えていた!

囲まれた!?


「キヒヒ…まさか、追ってくるとはな。愚かな娘め」


リーダー格っぽい、仮面をつけた黒装束が、気味の悪い声で笑う。


「仲間がいたわけね。まあ、別にいーけど。まとめてボコるだけだし」


あたしは、拳をポキポキ鳴らしながら、臨戦態勢に入る。


「殺せ」


リーダー格の合図で、黒装束たちが一斉に襲いかかってきた!

短剣や、クナイみたいな手裏剣、鎖鎌とか、色んな武器を使ってくる!

動きも、暗殺者みたいで、素早い!


「うっとおしい!」


けど、あたしの『身体強化 極』の前では、そんな攻撃、全然通用しない!

あたしは、飛んでくるクナイを素手で掴み取り、投げ返し!

短剣の攻撃を紙一重でかわし、カウンターで鳩尾に一撃!

鎖鎌を掴んで、相手ごと振り回し、他の仲間たちにぶつける!


数分後。


「…ぜぇ、ぜぇ…つ、強すぎる…!」


路地裏には、伸びてる黒装束たちが転がっていた。

あたしは、もちろん無傷。


「ふんっ、雑魚どもが」


あたしが、リーダー格の仮面の男に近づこうとした、その時!


シュッ!


仮面の男は、最後の力を振り絞って、何か小型の筒のようなものを投げつけてきた!

パンッ! と音を立てて、強烈な閃光と煙が辺りを包む!


「うおっ! 目くらまし!?」


思わず目を閉じた、一瞬の隙。

煙が晴れた時には、仮面の男の姿は、どこにもなかった。


「ちっ! 逃げ足だけは、はえーな!」


まあ、いっか。

雑魚は捕まえたし。

あたしは、気絶してる黒装束の一人の懐を探ってみる。


「お? なんだこれ?」


出てきたのは、蛇が絡みついたような、奇妙な紋章が刻まれた、小さな金属製のバッジみたいなやつ。

これが、こいつらの所属する組織の証ってことかな?


「なるほどねー、だいたい分かったわ(←まだ全然分かってない)」


あたしは、そのバッジをポーチにしまい込んだ。

とりあえず、初めての手がかりゲットだぜ!


「さてと、アルに報告しなきゃ」


あたしは、懐からアルフォンス王子にもらった通信機を取り出す。

使い方、これで合ってるかな?


「もしもしー? アルー? ゆきぽよだけどー。ちょっと面白いもん見つけたんだけどさー」


夜空の下、あたしは通信機に向かって、今日の成果(?)を報告し始めた。

秘密の調査、本格的にスタートって感じ!

これから、もっとヤバいことになりそうだけど、まあ、なんとかなるっしょ!

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