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第21話 テロとか暗殺とかマジ無理! 王子と秘密の作戦会議!

「ぷっはー! やっぱ戦いの後は肉っしょ!」


ゆきぽよは、王都の安くてウマいと評判の食堂で、山盛りのステーキ丼(異世界風)をガツガツかき込んでいた。

さっきの倉庫での大乱闘で、結構カロリー消費したしね!

あの蛇野郎(ファング)と黒装束たち、どうなったかって?

まあ、気絶してる間に、衛兵さんたちに匿名で通報しといたから、大丈夫でしょ。

たぶん。


お腹もいっぱいになって、満足して、宿屋『陽だまり亭』に戻り、早速アルフォンス王子に通信機で連絡を入れた。


「もしもしー、アルー? ゆきぽよだけどー」


『ゆきぽよさん! 先ほど衛兵から報告がありました! 倉庫街で不審な集団が倒れていたと…! あなたが無事ならそれでいいのですが、一体何が…』


通信機の向こうで、アルがめっちゃ焦ってる声がする。


「あー、それウチがやったやつ。なんか、指名依頼が罠だったから、返り討ちにしといた。蛇野郎、今度こそボコってやったわ! あと、なんか指令書みたいなのもゲットしたよー」


事もなげに報告すると、通信機の向こうが、またしても沈黙した。

…からの、


『ファングを…! あの『蛇の目』の幹部を、あなたが捕らえたというのですか!? しかも、指令書まで!? ゆきぽよさん、あなたは一体…! 信じられません…!』


アル、めっちゃ興奮してる。

そんなにすごいことだったの? まあ、確かにあの蛇野郎、強かったけど。


「とりあえず、蛇野郎と他の黒いの、気絶させといたから、後はよろしく。指令書は、これどーする?」


『すぐにこちらで回収します! 我々の部隊が、秘密裏に彼らの身柄を確保し、指令書も回収に向かいますので、あなたはもうそこから離れてください! お願いですから!』


アル、必死すぎウケる。


「はーい。んじゃ、よろしくー」


通信を切ろうとすると、アルが慌てて付け加えた。


『お待ちください! ゆきぽよさん、今回の功績は計り知れません! 報酬は、必ずや弾ませていただきます! …それと、実は、あなたから預かった帳簿と、我々が独自に進めていた調査から、少し気になる情報が入ってきたのです』


「ふーん? なになに?」


『『蛇の目』の…『次なる計画』についてです』


アルの声が、一段と低くなる。


『断片的な情報をつなぎ合わせた推測に過ぎませんが…彼らは、近々この王都で開かれる『建国記念祭』を狙っている可能性が高い』


「建国記念祭? なんそれ、お祭り?」


『ええ。数日にわたって行われる、この国で最も重要で、最も多くの人々が集まる祭典です。パレードや式典、夜会などが予定されています。…彼らは、その祭りの混乱に乗じて、大規模なテロ行為、あるいは…王族の暗殺を計画しているのかもしれません』


「テロ!? 暗殺!?」


マジかよ!

なんか、急に話がヤバくなってきたんですけど!


「それ、マジでヤバいやつじゃん!」


『ええ。目的のためには手段を選ばない彼らのこと、何をしでかすか分かりません。この計画を阻止しなければ、王都は、いえ、この国自体が、未曽有の危機に陥るでしょう』


アルの声は、かつてないほど真剣だった。


『ゆきぽよさん。これは、もはや私個人の依頼ではありません。この国の未来が懸かっています。どうか…どうか、あなたのその規格外の力を、私たちのために、この国のために、貸していただけませんか?』


うわー…。

なんか、めっちゃ重いんですけど…。

テロとか暗殺とか、マジで関わりたくないし、面倒なのはゴメンだし…。


でも…。


祭りで人がいっぱい死ぬとか、アルが狙われるとか、そういうのは、なんか、やっぱ見過ごせないっていうか…。

あと、ウチ、一応、この国のAランク冒険者になったわけだし?

ちょっとは、責任とか、ある…のかな?


「…しょーがないなー」


ため息をついた。


「アルがそこまで言うなら、協力してやるよ。国とか、よく分かんないけど、テロとか暗殺とか、胸糞悪いのは嫌いだしね。ただし!」


ビシッと指を立てて条件を付けた。


「報酬は、金貨…500枚! それと、この件が片付いたら、一か月くらい、ちょー豪華なバカンスに行かせて! あと、王都の美味しいスイーツ、全部奢りね!」


『…! ありがとうございます! ゆきぽよさん! 報酬も休暇もスイーツも、必ずやお約束します!』


アル、めっちゃ食い気味にOKしてきた。

よっしゃ!


「では、至急、作戦会議を開きましょう。私の隠れ家へ来ていただけますか? 場所は…」


アルから、王都内にある、とある住所を教えられた。

表向きは、古い画廊かなんからしい。


早速、その隠れ家とやらに向かうことにした。

指定された場所に行くと、そこは確かに、目立たない古い画廊だった。

裏口をノックすると、昨日帳簿を受け取りに来た、あの無表情の部下の人が出てきて、中に案内してくれた。


画廊の奥には、隠し扉があって、その先は、なんかハイテクな(魔法的な?)作戦司令室みたいになっていた!

デカい地図とか、通信機器とかがいっぱい!

すげー!


部屋の中には、アルフォンス王子と、他にも数人の男女がいた。

鎧を着た、めっちゃ強そうな騎士団長っぽいおじさんとか、黒い服着た、いかにも諜報員って感じのクールなお姉さんとか。

みんな、めっちゃ真剣な顔してる。


「よく来てくれました、ゆきぽよさん」


アルが、出迎えてくれた。

側近っぽい人たちは、ギャルな見た目とラフな服装を見て、一瞬、ギョッとした顔をしたけど、アルが紹介すると、すぐに表情を引き締めて、一礼してきた。

実力(とヤバさ)は、もう伝わってるみたいだ。


「さて、早速ですが、作戦会議を始めましょう」


アルが、中央の大きなテーブルに広げられた王都の地図を指さしながら、説明を始めた。


「我々が掴んでいる情報と、ゆきぽよさんが手に入れた指令書の断片から推測するに、『蛇の目』が狙っているのは、建国記念祭の最終日に行われる、王宮広場での記念式典、及び、その後の王宮での夜会である可能性が高い…」


騎士団長っぽいおじさんや、諜報員のお姉さんも、次々と情報を付け加えていく。

警備体制、予想される襲撃ルート、敵の戦力…。

なんか、マジで本格的な作戦会議じゃん!


話の半分くらいしか理解できてないけど、とりあえず、フンフンと頷きながら聞いておく。


「…それで、ゆきぽよさんには、その規格外の戦闘能力を活かして、敵の主力、あるいはリーダー格を叩いていただきたいのです」


アルが、こちらに向き直って言った。


「ふーん。で、ウチは何すればいいわけ? 具体的に」


核心を突く質問を投げかけた。

いよいよ、「蛇の目」との本格的な対決が始まる!

面倒だけど、ちょっとだけ、燃えてきたかも!

祭りを、そしてアルを、守ってやんよ!

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