建国記念祭、最終日の朝!
王都は、もうお祭り騒ぎのクライマックスって感じで、朝からすごい熱気!
窓の外からは、楽しそうな音楽とか、人々の歓声とかがガンガン聞こえてくる。
「うわー、マジで祭りって感じ!」
宿屋の窓から外を眺めて、ゆきぽよもちょっとだけテンションが上がる。
今日はこれから、ヤバい奴らと大立ち回りって予定だけど、まあ、その前にちょっとくらい、祭りの雰囲気を楽しんでもバチは当たんないっしょ!
…なんて思ってたら、すぐにアル(アルフォンス王子ね)の部下の人が迎えに来て、そんな余裕はなかった。
ちぇー。
アルや、騎士団長のおじさん、諜報員のお姉さんたちと合流して、今日のメイン会場である王宮広場へと向かう。
広場は、もうすでに、ものすごい数の人で埋め尽くされてる!
みんな、これから始まる式典を楽しみにしてるみたいだ。
キラキラした笑顔がいっぱい。
(この人たちが、テロとかに巻き込まれるとか、マジありえないし…)
普段は能天気なゆきぽよも、さすがにちょっとだけ、ピリッとした気持ちになる。
あたし…いや、ウチの今日の任務は、この広場のどこかに紛れて待機して、ヤバい奴らが出てきたら、速攻でぶっ飛ばすこと。
アルには「目立たないように」って言われたけど、まあ、この格好(黒の戦闘用ドレス)じゃ、どっちみち目立つか。
ウチは、広場の隅っこの、いざという時に動きやすそうな場所に陣取った。
アルは、国王陛下と一緒に、広場正面に設けられた豪華な壇上へ。
側近の人たちも、それぞれの持ち場について、警備や監視を始めたみたいだ。
通信機で、いつでも連絡は取り合えるようになってる。
やがて、ファンファーレが高らかに鳴り響き、建国記念祭の最終式典が始まった。
国王陛下の、なんか長くてありがたいお話(正直、聞いてなかった)とか、偉い人たちの挨拶とかが続く。
広場の民衆は、静かにそれを聞き入ってる。
華やかだけど、どこか張り詰めたような空気。
(いつ来るんだろ…マジで来んのかな…)
ウチは、『気配察知』スキルをMAXにして、広場全体の空気の流れとか、人々のざわめきとか、怪しい気配がないか、神経を集中させる。
でも、特に変わった様子はない。
平和そのものだ。
式典が中盤に差し掛かり、なんか騎士団の行進みたいなのが始まった、その時だった。
ドォン! バァン!
「!?」
突然、広場の数カ所から、黒い煙がもくもくと上がり、同時に、小さな爆発音が響き渡った!
「きゃあああああ!」
「な、何だ!?」
「魔物か!?」
一瞬にして、平和な雰囲気は吹き飛んだ。
広場は、パニックに陥った民衆の悲鳴と怒号で、大混乱に陥る!
「落ち着け! 慌てるな!」
衛兵や騎士たちが、必死に人々をなだめようとするけど、効果は薄い。
(来たな…! けど、これ、なんかショボくね?)
爆発はあったけど、被害はそんなに大きくなさそうだ。
これは、たぶん…。
「陽動か!」
通信機から、アルの緊迫した声が聞こえる!
その言葉を証明するように、混乱に乗じて、本命が動いた!
広場を見下ろせる、周りの建物の屋上!
そこに、いつの間にか、黒装束の集団が出現していた!
杖を構えて、明らかにヤバそうな大規模魔法の詠唱を始めてるヤツらがいる!
さらに!
広場の左右からも、別の黒装束の一団が、国王陛下やアルがいる壇上めがけて、猛然と突撃を開始した!
「敵襲ーっ!」
「陛下と殿下をお守りしろ!」
壇上にいた騎士たちが、すぐさま応戦する!
剣と剣がぶつかる甲高い音、魔法が炸裂する轟音!
式典会場は、一瞬にして戦場へと変わった!
騎士団や衛兵たちも、必死に戦ってるけど、敵の数も多いし、連携も取れてる。
しかも、中には、明らかに人間じゃない動きをする、魔物っぽいヤツも混じってる!
まずい、このままじゃ押し切られる!
「…待ってました!」
ウチの出番っしょ!
ゆきぽよは、ニヤリと笑って、地面を蹴った!
人混みを、まるで障害物がないかのように、飛び越え、すり抜け、一直線に、一番ヤバそうな戦線…屋上で魔法詠唱してる連中の元へ向かう!
「まずは、あのウザい魔法から止める!」
建物の壁を、重力無視して駆け上がり、一気に屋上へ!
そこには、5人の黒装束が、巨大な魔法陣を展開して、まさに術を発動させようとしているところだった!
「させっかよ!」
あたし…ウチは、詠唱に集中している黒装束たちに、音もなく忍び寄り(気配察知スキルで完璧!)、一番中心にいたリーダーっぽいヤツの延髄に、手刀を叩き込んだ!
「ぐふっ!?」
リーダー格(たぶん)は、白目を剥いて崩れ落ちる!
魔法陣の光が、不安定に揺らぐ!
「な、何奴!?」
残りの4人が、驚いてこっちを向く!
「お前らの相手は、このウチだよ!」
ウチは、残りの詠唱者たちに、超高速で接近!
パンチ! キック! アッパー!
魔法を発動させる間も与えず、次々とノックアウトしていく!
数秒後、屋上には、伸びてる黒装束5人だけが残された。
楽勝!
眼下を見ると、広場ではまだ激しい戦闘が続いている。
壇上では、アルも剣を抜いて戦ってる!
王子様なのに、やるじゃん!
「よし、次は下の奴らだ!」
ウチは、屋上から広場に向かって、躊躇なく飛び降りた!
狙うは、壇上に突撃してる黒装束の集団!
ドシャァァァン!!
ウチは、地面に隕石みたいに着地! (ちょっとやりすぎたかも?)
その衝撃で、近くにいた黒装束たちが、数人吹っ飛ぶ!
「な、なんだ!?」
「空から何かが…!?」
敵が混乱してる隙に、ウチは突撃部隊のど真ん中に突っ込む!
「邪魔だ、オラァ!」
『身体強化 極』、パワー全開!
殴る! 蹴る! 投げる!
まるで、ボーリングのピンみたいに、黒装束たちが吹っ飛んでいく!
周りにいた騎士や民衆は、口をあんぐり開けて、その光景を見てる。
「な、なんだ、あの子は…!?」
「す、すごい…!」
へへーん、もっと褒めていーよ!
ウチの圧倒的な蹂躙によって、敵の第一陣の勢いは、明らかに衰えてきた。
よし、このまま一気にケリを…!
そう思った、その時だった。
広場の一角から、今までの敵とは明らかに違う、禍々しくて、とてつもなく強大なプレッシャーが放たれた!
空気が、ビリビリと震える!
「…ようやく、お出ましか」
そのプレッシャーの中心…黒煙の中から、ゆっくりと姿を現したのは、漆黒のローブを纏った、長身の男だった。
顔はフードで隠れていて見えないけど、その存在感だけで、周りの空気を凍りつかせるほどの威圧感がある。
「ふむ…ネズミが紛れ込んでいるとは思っていたが…まさか、これほどの『イレギュラー』だったとはな」
男が、静かに呟く。
その声は、冷たくて、感情が感じられない。
「貴様が、我らが『蛇の目』の計画を邪魔する蝿か」
男の視線が、真っ直ぐにウチに向けられる。
ヤバい。
こいつ、今までの奴らとは、マジでレベルが違う!
蛇野郎(ファング)よりも、さらに上…!
「…やっと本命のお出ましか!」
でも!
ここでビビるウチじゃない!
むしろ、燃えてきた!
ウチは、不敵な笑みを浮かべて、漆黒のローブの男を睨みつけた!