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第25話 後片付けマジだるい! けど、英雄ってことでOK?

「あの野郎! 逃げる時に置き土産とか、マジでタチ悪いんだけど!」


目の前で、さっきまで何もなかったはずの王宮広場の地面から、次から次へと魔物が湧き出してくる。

ゴブリン、オーク、リザードマン…なんかデカいキメラみたいなやつまでいるし。

あの黒ローブの男、どんだけヤバい召喚魔法使ってんだよ。


広場は、またしてもパニック状態。

さっきの襲撃で、騎士団や衛兵の人たちも、結構消耗してるっぽい。

あちこちで悲鳴が上がり、戦闘の音が響き渡る。


「うわー! マジでキリないんですけど!」


ゆきぽよは、思わず叫んだ。

さっきの黒ローブとの戦いで、さすがのウチもちょっとは疲れてるのに。

休む暇もなしかよ!


「けど、ここでへこたれるウチじゃないし!」


気合を入れ直し、再び魔物の群れに向かって突撃!


「邪魔なんだよ、お前ら!」


『身体強化 極』のパワーを、今度は広範囲にぶちまける感じで!

近くにいたゴブリンの集団を、まとめて蹴り飛ばす!

突進してきたオークを、カウンターのパンチで地面にめり込ませる!

尻尾で攻撃してきたリザードマンの尻尾を掴んで、ハンマー投げみたいに他の魔物にぶつける!


「オラオラオラー!」


気分は、まるでアクション映画の主人公!

…って言っても、やってることは、ただの暴力だけど!


周りを見ると、アル(アルフォンス王子)や騎士団長のおじさん、諜報員のお姉さんたちも、必死に戦ってる。

アルは、剣で華麗に魔物を切り伏せながら、的確な指示を飛ばしてる。

王子様なのに、マジで有能。


「ゆきぽよ嬢! 大型魔獣は任せた! 我々は小型の掃討と民衆の避難誘導を!」


騎士団長のおじさんが叫ぶ!


「おっけー! あのデカいキメラ、ウチがやる!」


ちょうど、ライオンとヤギと蛇が合体したみたいな、キモいキメラがこっちに向かってきていた。

火球とか吐いてきて、マジうざい!


ウチは、キメラが吐き出す火球を避けながら、一気に懐へ!

そして、そのデカい胴体に、渾身のボディブロー!


ドゴォォン!!


キメラが「ギャオオオン!?」みたいな悲鳴を上げて、くの字に折れ曲がる!

よし、効いた!

そのまま、連続でパンチとキックを叩き込む!


ウチが大型の魔物を引きつけて、派手に暴れてる間に、騎士団や衛兵の人たちが、小型の魔物を着実に数を減らしていく。

諜報員のお姉さんたちは、負傷した人を安全な場所へ運んだり、パニックになってる人に冷静に指示を出したりしてる。

なんか、いい感じの連携プレーじゃん!


どれくらいの時間が経ったんだろ。

気づけば、あれだけ湧いて出てきた魔物の姿は、ほとんどなくなっていた。

広場には、魔物の死骸と、破壊された露店や装飾の残骸が散らばっていて、かなり悲惨な状態だけど…。


「…終わった…のか?」


誰かが、か細い声で呟いた。

広場を包んでいた喧騒が、嘘のように静かになっていく。


戦闘、終了。


広場の被害は、かなり大きい。

建物もボロボロだし、地面もあちこち陥没してる。

負傷者も、たくさん出てるみたいだ。

でも、ゆきぽよの無茶苦茶な活躍と、騎士団や衛兵、側近たちの奮闘のおかげで、死者は…奇跡的に、ほとんど出ていないらしい。


アルフォンス王子は、すぐに負傷者の手当ての指示を出したり、不安がる民衆に「もう大丈夫です!」って呼びかけたりしてる。

王子様、マジ働き者。


戦後処理は、駆けつけたギルドの人たちも協力して、迅速に進められていく。

ウチは、もうヘトヘトで、その辺の瓦礫に腰掛けて休んでいた。


すると、アルがこっちにやってきた。

その顔は、疲労困憊って感じだけど、どこか清々しい表情をしてる。


「ゆきぽよさん。…本当に、ありがとう」


アルは、深々と頭を下げた。


「あなたがいなければ、王都は…この国は、壊滅していたでしょう。なんと礼を言ったらいいか…」


「いやいや、別にいーって。ウチも、暴れたかっただけだし?」


照れ隠しで、つい、そんなことを言ってしまう。


「ゆきぽよ殿!」


騎士団長のおじさんも、屈強な騎士たちを引き連れてやってきた。

そして、全員が一斉に、ウチに向かって敬礼する!


「貴殿の勇気と力に、心から敬意を表する! 王都を救ってくれて、感謝する!」


「え、あ、ど、どうも…」


なんか、ガチな感謝と尊敬の眼差しを向けられると、めっちゃ照れるんですけど!


周りを見ると、避難していた民衆の人たちも、遠巻きにこっちを見て、手を振ったり、お辞儀したりしてる。

中には、「ありがとう、お嬢ちゃん!」って叫んでる人もいる。


…なんか、マジで、英雄扱いじゃん。

ウチ、ただ暴れてただけなのに。

でも…。


(ま、当然っしょ! このウチがやったんだし!)


心の中で、ちょっとだけ、ドヤ顔してみる。


その後、アルの隠れ家に戻って、改めて状況整理の会議が開かれた。


「『蛇の目』の首魁らしき男は取り逃がしましたが、彼らの計画は阻止できました。奴らの目的は、式典の妨害による混乱の誘発と、おそらくは我々の戦力…特に、ゆきぽよさんの力のデータ収集だったのかもしれません」


アルが、厳しい表情で分析する。


「しかし、脅威が完全に去ったわけではありません。『蛇の目』は、まだ必ずや次の手を打ってくるでしょう。我々は、この国から奴らを完全に排除するまで、戦い続けなければなりません」


アルは、強い決意を目に宿して、宣言した。

側近たちも、力強く頷く。


(はぁー、まだ続くのかー。めんどくさ)


正直、もう帰って寝たい気分だけど…。

あの黒ローブのムカつく顔を思い出すと、なんか、このまま終わらせるのもシャクだ。

それに、アルとか、騎士団のおじさんとか、宿屋のおばちゃんとか、なんか、守ってやりたいって思う人たちが、この世界にもできちゃったしなー。


「…しょーがないなー」


ウチは、大きなため息をついた。


「分かったよ。もう少しだけ、この面倒な戦いに付き合ってやるよ。ただし! 約束の金貨500枚と、バカンスと、スイーツ全奢りは、絶対だからね!」


「! ありがとうございます、ゆきぽよさん!」


アルが、またパッと顔を輝かせる。

現金なヤツめ。


戦いの傷跡が生々しく残る王宮広場。

傾き始めた夕陽が、瓦礫の山をオレンジ色に染めている。

でも、その光景は、終わりじゃなくて、始まりの合図みたいにも見えた。


これから、どうなるか分かんないけど。

とりあえず、ウチはウチのやり方で、この異世界で生きていくしかない。

Aランク冒険者として、王国の(非公式な)切り札として、そして、ただの能天気ギャルとして!


「…とりあえず、腹減った! 晩飯、何にしよっかなー!」


ウチは、お腹をグーグー鳴らしながら、今日の晩御飯のことと、約束のスイーツのことを考え始めるのだった。

戦いは続く! けど、腹が減っては戦はできぬ、ってね!

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