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第27話 港町とか海とかマジやば! 新しい街で情報収集!

王都を出発して数日。

あたし…いや、ウチ、愛内ゆきぽよは、次の目的地「港町リベルタ」へと向かっていた。

移動手段は、もちろん『身体強化 極』を活かした、徒歩での爆走!

乗り合い馬車とか、遅くてダルいし。

あっという間に、街道を駆け抜けていく。


そして、ついに!


「うっわー! あれ、海じゃん! マジやばー!」


視界の先に、どこまでも広がる青いキラキラしたものが現れた!

潮の香りが風に乗って運ばれてくる!

本物の海! 異世界の海!

テンション、ブチ上がり!


海沿いの道をさらに進むと、活気のある大きな港町が見えてきた。

あれが、リベルタかー。


港町リベルタは、王都とは全然違う雰囲気だった。

石造りの建物もあるけど、木造の、ちょっとゴチャっとした感じの建物が多い。

カモメの鳴き声が響き渡り、色んな国から来たっぽい船が、港にいっぱい停泊してる。

行き交う人たちも、屈強な船乗り風のおっちゃんとか、肌の色が違う商人とか、なんかエキゾチックな格好した人とか、マジで多種多様。


「へー、ここがリベルタかー。なんか、ごちゃごちゃしてて面白そうじゃん!」


とりあえず、情報収集の基本はギルドっしょ!

ウチは、リベルタの冒険者ギルド支部へと向かった。

王都のギルドほどデカくはないけど、それでも結構な広さだ。

中は、酒と潮の匂いが混じった独特の空気で充満していて、カウンターの周りには、いかにも「海の男!」って感じの荒くれ者や、うさんくさい目つきの商人がたむろしてる。


受付カウンターにいたのは、気の強そうな、姉御肌って感じの女の人だった。


「ちわーっす! ウチ、ゆきぽよ! Aランク冒険者なんだけど、なんか面白い依頼ない?」


ギルドカードを見せると、受付のお姉さんは、ウチのギャルな見た目とAランクのカードを交互に見て、一瞬、目を丸くしたけど、すぐにニヤリと笑った。


「へぇ、あんたが噂のAランクね。こんな若い嬢ちゃんとはね。まあ、いいさ。依頼なら色々あるよ。ただし、この街の依頼は、ちっとばかし荒っぽいからね。覚悟しときな」


なんか、肝が据わってる感じで、ちょっとカッコいいかも。


ギルドの酒場で、それとなく「蛇の目」とか、怪しい組織について聞き込みをしてみる。


「ねーねー、おっちゃんたち! この街で、なんかヤバい奴らとか知らない?」


「黒い服着た、怪しい集団とか見なかった?」


でも、リベルタの冒険者たちは、王都の奴らより口が堅いみたい。


「お嬢ちゃんが首を突っ込むような話じゃねえよ。さっさと帰りな」

「蛇の目だぁ? 知らねえな。聞いたこともねえ」


みんな、そんな感じで、全然教えてくれない。

ちぇー。


それでも、何人かに粘り強く聞いて回ってると、ポツリポツリと情報が出てきた。


「最近、港の第3倉庫街あたりで、夜な夜な怪しい荷物の積み下ろしをしてる奴らがいるって話だ」

「ああ。たまに、真っ黒な、どこの船とも分からねえ不審船が出入りしてるらしいぜ」

「裏路地じゃ、黒ずくめの連中が幅を利かせてるって噂もあるな。逆らうと消されるとか…」


第3倉庫街、黒い船、裏路地ね…。

だいたい、悪党のアジトって、そーゆーとこにあるって相場が決まってんのよ。


情報収集もそこそこに、ちょっと街をぶらついてみることにした。

活気のある市場とか、露店とか見て回るの、結構楽しい!


とその時。


「きゃあ!」

「金だ! 金を出せ!」


狭い路地の方から、悲鳴と怒鳴り声が聞こえてきた!

ん? なんか事件?


覗いてみると、ガラの悪いチンピラ風の男たちが、若い女の子を取り囲んで、カツアゲしてる真っ最中だった。

うわー、テンプレな悪役。


「ちょ、ウザいんだけど! この街、治安悪くね?」


ウチは、ため息をつきながら、チンピラたちの前に割って入った。


「あんたら、何してんの? ダサすぎなんですけど」


「あぁ? なんだ、この派手なアマは! 関係ねえヤツはすっこんでろ!」


チンピラの一人が、ナイフをチラつかせて脅してくる。

しょーもな。


「はいはい、ゴミはゴミ箱へー」


ウチは、襲いかかってくるチンピラたちを、一人ずつ、軽く蹴散らしていく。

パンチ一発、キック一発で、面白いように吹っ飛んでいくチンピラたち。

数秒後には、全員地面に伸びて気絶していた。

楽勝。


「だ、大丈夫ですか…? あの、ありがとうございます!」


助けた女の子が、涙目で感謝してくる。


「いーえ、どーいたしましてー。気をつけなよー」


女の子に手を振って、その場を立ち去ろうとすると、後ろから声をかけられた。


「あんた、なかなかやるじゃないか」


振り返ると、そこには、薄汚れたコートを着た、胡散臭い笑顔の細身の男が立っていた。

年の頃は、30代くらい?

いかにも、情報屋って感じ。


「誰? あんた」


「俺か? 俺は、この街で細々と情報屋をやってるモンさ。さっきのケンカ、見させてもらったよ。あんた、ただの嬢ちゃんじゃなさそうだねぇ」


男は、探るような目でウチを見る。


「もしかして、あんた、『蛇の目』って組織を探してるんじゃないかい?」


「! なんでそれを…」


「ククク…このリベルタで、俺の知らない情報はないんでね。もし、蛇の目の情報が欲しいなら、取引しないかい? あんたの腕っ節と、俺の情報を交換するってのはどうだい?」


男は、ニヤリと笑う。

うさんくささMAXだけど、こいつ、何か知ってるっぽい。


「いいよ。取引成立。で、何を知ってんの?」


「話が早くて助かるよ。蛇の目は、このリベルタで、主に密輸と…聞くところによると、人身売買にも手を染めてるらしい。表向きは、大きな海運会社を隠れ蓑にしてるが、奴らの本当の拠点は、港の第7埠頭にある、今は使われていない古い大型倉庫だ。夜になると、そこが連中のアジトになる」


「第7埠頭の、古い倉庫ね…」


思ったより、具体的な情報が出てきた。

こいつ、マジで使えるかも。


「ただし、その倉庫の警備は、かなり厳重だぜ。並の冒険者じゃ、近づくことすらできやしない。ま、あんたなら、どうにかなるかもしれんがね」


男は、またニヤリと笑う。

なんか、試されてる感じ?

まあ、いいけど。


「情報、サンキュ。役に立ったわ」


「どういたしまして。もし、上手くやれたら、また何か面白い情報を持ってきなよ。いつでも歓迎するぜ」


男は、そう言って、人混みの中に消えていった。

結局、名前も聞けなかったな。


まあ、いっか。

これで、蛇の目のアジトの場所は特定できた。

あとは、夜になるのを待って、そこに忍び込むだけ!


「めんどくさいけど、さっさと終わらせて金貨ゲットしなきゃね!」


ウチは、決意を新たにして、まずは腹ごしらえのために、港で一番ウマいと評判の海鮮料理屋を探し始めた。

潜入前には、やっぱ美味しいもの食べとかないとね!


夜。

月明かりだけが、波止場をぼんやりと照らしている。

潮風が、ちょっと肌寒い。

ウチは、情報屋の男に教えてもらった、第7埠頭の古い大型倉庫群の前に来ていた。

周りには、人影一つない。

でも、倉庫のあちこちには、見張りの黒装束が立っているのが見える。

数は…ざっと見て、10人以上?


「さて、どっからお邪魔しよっかなー?」


ウチは、ニヤリと笑って、闇に紛れて動き出した。

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