それからのことは、あまりいい出来事はなかったと思う。
ニュースで聞く単語はネガティブな言葉ばかりで、一家心中、放火、強盗、殺人――戦々恐々と、終焉は実体を伴って迫ってきた。
私たちに残された時間は、あとわずかだ。
そして私たちのような一般人は、ただ指をくわえて、ぼうっと見ていることしかできない。混乱の余波は止まることを知らなかった。警察が機能しなくなった県があり、どこかの国では国家転覆のようなことが起きたとも聞く。
小惑星はまだ地球に落ちていないのに、もう地球に小惑星が落下したかのように感じられた。
SNSでは、不謹慎ながら予言者を名乗るアカウントがこうつぶやいていた。
『恐怖の大王がやってくる』
その予言者が本物ではない証明は容易かった。
スピリチュアルなアイコンに星空のヘッダー、自己紹介欄には長文で支離滅裂な言葉が並び、最後には怪しいドメインのURL。そして、ここ十年ほど毎日、『恐怖の大王が来る』と言い続けていた。
そんな当てずっぽうのアカウントだったのに、そのポストは恐ろしく早く拡散された。