私が選んだ底の厚い黒い靴を踏みしめて、私達は透明さを失ったビルを発見した。
窓のあった場所が全て吹き抜けになっていて、風通しが良かった。私はそのビルをローアングルで撮影する。遠くで立つ中村くんの背中を写して。
「どっちに行く?」中村くんは首を傾げた。
「暴徒じゃない人がいる場所を探そう。必ず、あると思うから」私は言った。