「本当にここを通らなきゃダメか?」と中村くんが訊く。私は縦に頷いた。
地下通路では腰の高さに達しそうなくらい汚水が溜まっていて、顔にマスクを着けて服をいつでも脱げるようにしながら水を歩いて行った。
中村くんが自ら先陣切って行ってくれたから、私は心置きなく泥濘を掻き分けて進むことができた。その時、横に伸びた道に点在した泥で汚れて廃れた居酒屋さんと占い店、喫茶店を画角に収め、一枚撮影した。