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32 1201/2003

 私は次に、会社員の男性を説得した。

 彼は白いシャツが血に濡れており、精神的に不安定そうだった。

「今日の調子はどうですか?」

 私が尋ねると、会社員の男性が答える。

「……胃袋がねじ曲がった感覚がある。随分ひどい」

「ご飯、置いておきます。食べやすいものを選んでおきました」

 私は温かいスープを差し出す。

「熱湯……電気があるのか?」

 私は頷く。

「このショッピングモール、屋上にソーラーパネルが備え付けられていたんです」

 男性の耳がぴくりと揺れる。

「本当か?」

 男性は前かがみになって尋ねてくる。

「はい」

 男性はとりあえず、私が差し出したスープを奪うように受け取ると、ごくりと飲んだ。

 そして、お腹が減っていたのか、何度もスープを口に運び、いつの間にか男性の顔には、消えかけていた生気が少しずつ戻ってきた気がした。

「ありがとう。すまない。不甲斐ないところを見せてしまったね」

 男性は最終的に立ち上がってくれた。「長谷川さん」という名前だと教えてくれる。

 長谷川さんは、主に私と村雨くんのどちらとも、友人として関係を築いていった。

 私はその日から、日記のように写真撮影を始める。


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