三部南が僕の行きつけのフォトスポットを教えて欲しいと懇願して来た。
僕は彼女から向けられる好意が初めてだったので初めは戸惑ったが、佐々木くんが遠くから。
「いいね。行きましょう」
と右手で軽いガッツポーズを見せてくれた。
僕は彼らと打ち解けられたのかもしれない。
南さんを僕の気に入ったフォトスポット(物資探しで見つけた場所)に連れていった。
僕から右側にはヴィンテージ感ある平屋の保育園があって、僕の背後から左側の架道橋の下を道路がカーブし、目の前には昔、一緒に行った事がある堤防に続く傾斜の急な階段がある。
その石の階段の手すりのすぐ横に、桜の木が一本だけ揺れていた。
「綺麗……春に来たかったわぁ」
と南さんは目を輝かせて云ってくれた。
「村瀬さんは、狭い場所が好きなんですね」
佐々木くんが云う。
「そうだね。閉塞感があった方が、何だか安心する性分なんだ」
僕ははにかんだ笑みを作って微笑んだ。
「それ、分かりますよ」
佐々木くんもさっぱりとした笑みを返してくれる。
僕は写真撮影に必死になっている南さんを後ろから、一枚、撮った。
もしこのカメラを無事に生還した彼女が見てくれたら、きっと喜ぶと思うから。