目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

80 602/2003

 春が例年より早く終わりそうな気配があるその日、私は友くんと先輩に教えられたカフェに行ってピザトーストを食べ、丘に登って一望千里の眺めを堪能した。珍しく着ている白いワンピースを仄かに掠る春風に揺らしながら、次に水族館へと向かった。

 水族館ではルートに従って薄暗い道を通る。そして青い世界を巡る魚に目を奪われ、何枚か仕事用のカメラで写真を撮った。

「どうせならさ」

 友くんの提案で通行人にお願いし、私と友くんのツーショット写真を私用カメラで撮ったりもした。

「本当に綺麗だね」

 友くんは水族館に感動している様子だった。聞いていた通りそれなりにボリュームがあって、結局、全てのエリアを回るのに二時間くらいはかけてしまった。私も友くんも美しく幻想的な海底の様子に釘付けになったのだ。

 歩き疲れて、私は十メートルほど高さのある大きな水槽の前にあったベンチに腰をかけた。慣れないヒールも、疲労具合に加担している。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?