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第10話 でかしたぞ、これで今日の目的は達成だ

「それで今日はどうしたんですか?」


「実は行きつけのカフェが私の好きな漫画とのコラボを開催してな、コラボメニューを注文すると限定グッズが貰えるのだがどうしても欲しいキャラクターがいるんだ」


「なるほど、俺に手伝って欲しいという事ですね?」


「ああ、その通りだ」


 こういうコラボのメニューで貰える限定グッズはランダムな事が多いため目的のキャラクターを当てるのは結構難しかったりする。そのため当てるまでかなりの量を食べなければならない。

 カロリー摂取量が爆増するためこれは女子の友達には頼みづらいはずだ。そして入奈には俺以外に頼めそうな男子はいないため白羽の矢が立ったという事だろう。


「分かりました、手伝いますよ」


「ありがとう、頼めそうな相手が有翔しかいなかったから助かる」


 クラスメイト達の前であんな風に誘われたにも関わらず入奈の頼みを断ってしまうと俺の印象が悪くなってしまいそうな気がしたので引き受ける事にした。それに入奈と一緒に過ごす時間はやはり嫌いではない。

 目の前にいると俺が付き合っていたは顔が同じだけの別人と最近思うようにした事もあって辛い記憶はあまり思い出さないようになってきている。恋人になると不幸になってしまうかもしれないが友達として付き合うなら全然有りだろう。


「ちなみにどこにあるカフェですか?」


「駅前のカフェだ」


「それならここからは割とすぐですね」


「よし、早速行こうか」


 俺と入奈は学校を出るとそのまま目的地に向かい始める。それにしても入奈と一緒に歩いていると相変わらず周りからめちゃくちゃ視線を向けられるな。しかも向けられる視線の数は前世の時よりも明らかに多いし。

 前世で視線を向けられていた理由は単純で入奈が凄まじく美人だからだ。綺麗系の美人で身長もかなり高い入奈はそれだけで目立つ。

 入奈はその容姿でコミュ障気味だった事が災いしてぼっちになりがちだったらしいが、そうでなければ多分めちゃくちゃモテていたと思う。

 しばらくして駅前のカフェに到着した俺達は席につく。壁には十年後の未来でも大人気だった明治時代を舞台にした作品のポスターが貼られていた。


「ヴァンパイアスレイヤーとのコラボなんですね」


「ああ、最近アニメ化も決定したし個人的には今一番勢いがある作品だと思っている」


 実際にアニメは大ヒットして映画が何本も作られるほどの人気作品になった。そうか、もうこの頃から人気だったんだな。ちなみに入奈が狙っているのは主人公とヒロインらしい。

 そんな事を考えながら俺達は早速コラボメニューを注文した。そしてメニューと一緒に運ばれてきた限定グッズを開封した入奈は残念そうな表情になる。


「……違う、これじゃない」


「まあ、そう簡単に欲しいのは当たりませんよね」


 どうやら入奈が欲しかったキャラクターでは無いらしい。まあ、開封して出てきたのが序盤に登場する敵キャラと作中であまり目立っていないキャラだったので残念になる気持ちなるのは当然だろう。

 気を取り直して限定グッズの貰えるコラボメニューを追加注文をすると今度は俺の開封した方からメインヒロインのグッズが出てくる。


「これで一つゲットですね」


「残るは後主人公だけだな」


 一気にテンションが上がる入奈だったが次とその次の追加注文では狙っている主人公は出てくれなかった。お腹もかなりいっぱいになってきたため食べるのはそろそろきつい。


「……まだ追加で注文しますか?」


「お互いにそろそろ限界だと思うし迷うな」


「じゃあ次で最後にしましょう」


「だな、とりあえず一つはゲット出来たしそうしよう」


 それから俺達は最後の追加注文をしてテーブルに運ばれてきた限定グッズを二人でドキドキしながら開封した。するとついに入奈が欲しがっていた主人公が俺達の前に現れる。


「あっ、出ましたよ」


「でかしたぞ、これで今日の目的は達成だ」


「ちょ!?」


 何と入奈は思いっきり俺に抱きついてきたのだ。周りから死ぬほど見られるから早く離してくれ。完全にやってる事がバカップルのノリだから。

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