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第12話 それは喜ぶべきなのか残念がるべきかどっちなんだろうな

 俺が十年前に逆行転生してから早いものでそろそろ一ヶ月となる。しばらくは社会人時代のクセが中々抜けず色々と失敗もしていたがようやく順応してきた。そして明日からはついにお待ちかねのゴールデンウィークという事で昼休みの教室内はその話題で持ちきりだ。


「明日から五連休って控えめに言ってもマジ最高だよな」


「ああ、大量の課題が無かったらなお良かったんだけど」


「なら須藤君は課題を全部サボってみる?」


「いやいや、そんな事をしたら間違いなく呼び出しをくらって吊し上げられるから」


 島崎と須藤、天瀬も他のクラスメイトと同じようにゴールデンウィークの話題で盛り上がっている。言うまでなく俺もゴールデンウィークは楽しみだったため普段よりもテンションが高い。

 ブラック企業サラリーマン時代は二連休すら一年にほんの数回しかないレベルで忙しかったため五連休なんて本当に久々だ。

 しかもサラリーマンの時は自分が不在の間に仕事がめちゃくちゃ溜まり、休み明けが地獄というパターンがほとんどだったため気が休まらない休日を過ごしていた。

 だが今はそんな心配をする必要すらないため心置きなき休める。だから先程島崎が口にした五連休って控えめに言ってもマジ最高という言葉には激しく同意だ。そんな事を思っていると佐渡さんが話しかけてくる。


「佐久間君と天瀬君も明日用のLIMEグループに誘っておいたから参加よろしくね」


「うん、ありがとう」


「後で入っとくわ」


 俺達がそう答えると佐渡さんは満足そうに頷いて自分の席に戻っていった。俺と天瀬はゴールデンウィーク中にクラスメイト達と遊ぶ予定がある。ちなみに島崎と須藤は既に別の予定が入っていたらしく残念ながら不参加だ。


「男女混合で遊ぶってなんか青春時代に戻った感じがするよな」


「いやいや、今がその青春時代だろ」


「佐久間君ってたまにおじさんっぽい事を言うよね」


「だな、有翔って一体何歳なんだよって思う事がたまにあるし」


 俺の何気ない一言を聞いた三人からそうツッコミを入れられた。気を抜くとこんなふうにやらかしてしまうため注意が必要だ。

 それから昼休みが終わり食後の眠気を我慢しながら午後の授業を受けてようやく放課後がやってきた。教室を出た俺が靴箱に向かうと入奈の姿が目に入ってくる。


「もはや氷室先輩がいても何も思わなくなりました」


「それは喜ぶべきなのか残念がるべきかどっちなんだろうな」


「氷室先輩の好きな方で良いと思います」


 少し前にコラボカフェへ行った翌日から入奈は靴箱で俺を待ち構えるようになった。そこから俺は毎日入奈と一緒に帰っている。

 時々俺に対して異様な視線を向けてくる事があるがそれ以外は普通だ。俺と入奈の相性は悪くないため会話などは普通に弾む。

 そもそも相性が良く無かったら前世でも付き合っていなかったに違いない。たまに振られた時の事を思い出したりもするが前ほど辛くはなくなってきた。恐らく俺も少しずつ乗り越え始めたという事だろう。


「そう言えば有翔はゴールデンウィークはどう過ごすつもりなんだ?」


「基本的には家でダラダラしようと思ってますけど、明日に関してはクラスメイトと遊ぶ予定なんですよね」


 いつものように二人で帰っていると入奈がそんな質問をしてきたため俺は何も考えずにそう答えた。すると何故か入奈は警戒したような表情になって口を開く。


「……ちなみに遊ぶ相手は男子か?」


「いえ、女子も一緒ですよ」


 明日は予定の合ったクラスメイトの半数近くが参加するためその中には当然女子も含まれている。そんな事を考えていると入奈の顔がだんだんと険しくなっていく。


「有翔なら大丈夫だとは思うが女子には十分注意しろよ、嫌な事をされそうになったら逃げればいいから」


「分かりました、一応肝に銘じておきます」


 クラスメイトの女子が俺の害になるような事をしてくるとはとても思えなかったが、入奈の表情があまりにも真剣だったためひとまずそう答えておいた。

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