テスト期間に突入してから数日が経過した。週明けからいよいよ中間テストが始まるため俺は結構真面目に勉強している。前世ではちゃんと大学生になれたが今世も上手くいくとは限らないため油断するつもりはない。
「まあ、一回勉強した内容だからか結構頭には入ってきやすい気がするけど」
俺はそんな事をつぶやきながら図書室へと向かって歩く。初日に家で勉強をしてあまり集中出来なかったため二日目から放課後は図書室で勉強するようになったわけだが入奈も一緒だ。
最初は一人で勉強するつもりだったが入奈も付き合うと言い始めたためそうなった。ただし学年が違うため勉強内容は全然違ってくる。
だから隣り合って座ってはいるが基本的には一人で勉強しているのとあまり変わらない。ただし、詰まっていると英語以外は入奈が教えてくれたりする。
逆に俺は英語が得意で二年生の内容でもある程度分かるため教え返したりもしているが。図書館に着いて勉強の準備を始めていると入奈が現れる。
「おっ、今日は先に来てたのか」
「ええ、帰りのホームルームで長々と喋る担任の話が今日は珍しく短かったので」
「その辺は先生によっても違うよな」
「ですね、年齢が高くて上の役職の人が特に長い気がします」
「確かに教頭先生や校長先生は全校集会の時も毎回長いもんな」
ちなみに前世で勤めていた会社では五十代の専務の話がめちゃくちゃ長かった。そのため朝礼の時間がオーバーする事は頻繁にあったし、そのせいでアポに遅刻しかけた事もある。
言うまでもなくそれが原因で案件が流れた場合も上司から詰められるのは俺だったため堪ったものではなかった。何回後ろから専務をぶん殴ってやろうと思った事か。
そんな事を思い出しながら俺達は今日の勉強を始める。しばらくそれぞれ黙々と勉強をする俺達だったが入奈が解いていた英語の問題の回答を見た俺は口を開く。
「あっ、そこはNOじゃなくてYESですよ」
「えっ、何故だ? ここは普通に考えて否定のNOを使うのが正しいと思うのだが」
「この問題はややこしいんですけど否定疑問文なのでYESとNOが逆になるんですよ」
「……そう言えば授業でも習ったような気がするがやはりイマイチピンとこない」
他の科目は全く問題ないがやはり英語はとにかく駄目らしい。昨日一緒に勉強していた時もこんな感じだったし、多分得意になる事は無いのではないだろうか。
今はまだ翻訳アプリの精度もあまり良く無いが十年後はめちゃくちゃ正確性があがっていたし、そのうち英語なんて勉強しなくても良い時代が来そうな気もするが少なくても俺達が大学受験をする間は間違いなく必要だ。
「それにしても有翔は昔と変わらず英語は得意なんだな」
「海外のサイトを見てたらいつの間にか得意になったんですよね」
あまり大きな声では言えないが海外のサイトで遊べたブラウザのエロゲに中学生の頃にハマった結果、自発的に英語を勉強するようになったという経緯がある。やはり男子はエロが絡むと強いというのはまさにこの事だろう。
「あれっ、そう言えば俺が昔から英語が得意って事なんて入奈先輩に話してましたっけ……?」
「……ああ、何かの会話をしている時にポロっと言っていたぞ」
記憶には残っていなかったが入奈がそう言うのであれば多分そうなのだろう。それから二人で勉強を続けるうちに気付けば一時間以上が経過していた。
「そろそろ一旦休憩にしないか?」
「そうですね、ぶっ通しで勉強しても効率はあまり良く無いですしそうしましょう」
「長時間ずっと座りっぱなしなのも体に悪いからな」
そんな言葉を口にしつつ入奈は立ち上がって大きく背伸びをし始める。それと同時に胸が強調されて変な気分になりそうになったため目を逸らす。
前世では恋人同士だったためそれなりにそういう行為もしていたが今世では違う。いやらしい目で見て嫌われる事だけは避けたい。
「これから下にある自動販売機コーナーへ行こうと思うんだが有翔はどうする?」
「俺もちょうど喉が渇いていたので一緒に行きます」
俺がカバンの中から財布を取り出そうとしているとそれを入奈が止めてくる。
「飲み物くらい私が奢るぞ、ここ最近のお礼も色々したかったしな」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらう事にしますね」