目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第5章

第35話 メッセージを既読にするのがめちゃくちゃ怖いんだけど……

 一週間あったテスト期間が終わり中間テストが始まってから四日が経過した。帰りのホームルームが終わって放課後になった現在、クラスメイト達の雰囲気はめちゃくちゃ明るい。それもそのはず、だってようやく中間テストが終わったのだから。


「やっと終わったな」


「だね、初めての中間テストだから緊張したよ」


「大智と春樹は俺や有翔とは違って余裕だっただろ」


「おい、さらっと俺を仲間扱いするな」


 俺はいつも通り島崎や天瀬、須藤と絡んでいた。まだ答案用紙の返却をされておらず自己採点をしていないため絶対にそうとは言い切れないが、恐らく今回の中間テスト結果は前世よりもはるかに良いと思う。

 そもそも前世の一学期中間テストは入学式翌日にあった復習テストの結果が思っていたよりも良く油断したせいでぼろぼろだったのだから普通に考えてそれより悪い事は恐らくないはずだ。


「今日は職員会議の関係で部活も無いしどこかへ遊びに行かないか?」


「俺も須藤に賛成」


「二人が行くなら僕も行こうかな。佐久間君はどうする?」


「せっかくだし俺も行くぞ」


 ここ最近は入奈とばかり行動していたがたまには男同士で遊ぶのも良いだろう。同性という事で変な遠慮や気遣いなどもしなくて良いわけだし。

 とりあえず入奈には今日は一緒に帰れないとメッセージを送っておこう。俺はカバンからスマホを取り出すとLIMEで入奈にメッセージを送る。この辺りをしっかりしておかないと後が怖いからな。

 俺がそんな事をしている間にボウリングへ行く事が決定していた。ボウリングをするのは大学生の時以来になるのでかなり久々だ。

 あっ、でもそう言えば春休みに島崎とその他の友達と一緒にやった記憶があるのでアラサーサラリーマンではなく高校一年生の俺的にはそんなに久々でもない。久々とか言ったら間違いなく島崎から突っ込まれるだろう。


「ボウリングをするって事は市役所近くにあるアミューズパークか?」


「そうそう、この前も佐久間と一緒にいったあそこだぞ。てか、アミュパー以外は距離的に無いだろ」


「だね、他のボウリング場はここからだと流石に遠すぎるし」


「多分行くだけで疲れてボウリングする元気なんてなくなるぞ」


 そう言われてみれば確かにそうだ。市内にはアミューズパーク含めて三ヶ所しかボウリング場はない上に、他の二つは車でもそこそこ時間がかかる距離にある。

 だからアミューズパーク以外にわざわざ行くメリットなんて全くない。むしろ他の二つとは違いアミューズパークはゲームセンターが同じ敷地内にあるため優れているまである。


「じゃあ早速出発しよう」


「オッケー。あっ、誰が最初にアミュパーに着くか勝負しないか?」


「元野球部の須藤君が勝つ未来しか見えないんだけど」


「ああ、却下だ」


 俺が須藤の言い始めたくだらない提案を速攻で却下するとつまらなさそうな顔をしていたが、流石に三対一には勝てない事を悟り諦めていた。

 それにしてもこんなしょうもないやり取りをするだけでも結構楽しいな。ブラック企業の人間関係はあまりにも殺伐としていたためこんなふうに話せるような関係性は築けなかった。やはり青春時代は最高と言っても過言ではないだろう。

 それから俺達は学校を出てアミューズパークへとやって来た。そしてゲームセンターの二階にあるボウリング場の受付で手続きを済ませる。


「あっ、そう言えば入奈からの返信を確認してなかったな」


 シューズのレンタルを終えた後、玉を選んでいる最中にその事について思い出した俺はポケットからスマホを取り出す。スリープ画面を解除して画面に映った通知を見た瞬間、俺は思わず声を上げる。


「えっ!?」


 なんとそこには大量のメッセージと十回を超える着信履歴が表示されていたのだ。その相手が入奈である事は言うまでも無い。

 テストの最中に音がなるとめちゃくちゃだるいためマナーモードにして振動すらしない設定にしていたわけだが、それが最悪な形で裏目に出てしまったようだ。


「メッセージを既読にするのがめちゃくちゃ怖いんだけど……」


 正直通知を見なかった事にしたいレベルだったが流石にそういう訳にはいかない。もしこのまま放置し続けたら間違いなく家まで押しかけてくるためそうなった方がはるかに厄介な事は目に見えている。やはり覚悟を決めるしかないようだ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?