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第36話 友達とは具体的にどこの誰だ?

 意を決してLIMEアプリを開いた俺は入奈にメッセージを送る。下手に嘘をついてバレてもろくな事にならないと分かっていたため正直な理由を書いた。

 するとメッセージを送った瞬間既読になり、そして五秒も経たないうちに着信がくる。勿論電話をかけてきた相手は入奈だ。俺は恐る恐る電話に出る。


「も、もしもし」


「なあ、今はどこに誰と一緒にいて一体何をしているんだ?」


 入奈の明らかに普段よりトーンの低い言葉を聞いて俺は致命的なやらかしをしていた事にようやく気付く。学校を出る前に入奈にLIMEで送ったメッセージに俺は理由などを一切書いていなかった。

 三人が話している最中にずっとスマホを触っているのは良く無いと思い一緒に帰れない事しか書いていなかったのだ。なるほど、それで心配になったのか。何故か理由は分からないが前世と比べて入奈は過剰なまでに心配性なのだ。


「すみません、メッセージに詳しく書いてなかったですね。今は友達とアミューズパークに来てます」


「友達とは具体的にどこの誰だ?」


「名前を言っても多分誰なのか分からないと思いますが全員同じクラスの男子です」


「そうか、今日は男子だけで遊んでいるのか」


 入奈の声のトーンはさっきよりも明るくなっていたためとりあえず面倒な事態に発展する事は上手く避けられたらしい。


「って訳で友達を待たせてるのでそろそろ電話を切りますね」


「ああ、また後で」


 通話を終えた俺はポケットにスマホを戻す。電話を切る間際に入奈が言っていた言葉の意味がちょっとよく分からなかったが三人を待たせているので深くは考えずにさっさと玉を選んでレーンに向かう。


「やっと来た、佐久間だけ玉を選ぶのにえらく時間がかかったな?」


「急に電話がかかってきたんだよ」


「あっ、それであそこにずっと立ち止まってたんだね」


「ちなみに有翔が電話してた相手は誰なんだ?」


 須藤は興味津々な表情でそう聞いてきた。相手が入奈な事を伝えると天瀬はともかく、島崎と須藤はめちゃくちゃいじってくると思う。だから俺は適当な嘘をついて乗り切る事にする。


「よく分からない営業の電話だよ、どこで番号を知ったのかは知らないけど結構しつこかったからだるかった」


「なるほど、そう言えば俺も似たような電話がこの前かかってきたわ。俺や佐久間みたいな未成年に営業してもあんまり意味なんてないのにバカだよな」


「そんなどうでもいい電話だったのか、てっきり有翔の事だから女の子でも口説いてるのかと思ってたのに」


「俺達の中でそれが出来そうなのは顔面レベル的に天瀬だけだろ」


「さらっと僕を巻き込まないでよ」


 ひとまず全員信じてくれたようだ。それから俺達は気を取り直して四人でボウリングを始める。俺は久々過ぎて割と苦戦していたが島崎と天瀬はそこそこピンを倒していた。それに対して須藤のスコアは圧倒的だった。


「よっしゃ、またストライク」


「須藤君は本当運動神経が良いよね」


「ああ、何回目のストライクだよ」


「須藤に関してはなんで野球部に入らずに俺と同じ漫画研究部に入ったのか謎だ」


「野球より漫画が好きだったからとしか言いようがないな」


 漫画研究部は島崎のような細そうなオタクが多いイメージなので須藤のような見るからに体育会系の体格が良いゴツイ奴が部室にいたら浮くに違いない。

 まあ、島崎と仲良くなったおかげで須藤は俺達のグループにいるわけだが。そんな事を考えながらボウリングをやっているうちにあっという間に1ゲームが終了した。言うまでもなく結果は須藤の圧勝だ。


「じゃあ早速2ゲーム目をやるか?」


「その前にちょっとトイレに行かせてくれ」


「僕も喉が渇いたし自動販売機に行きたいな」


「佐久間と天瀬もそう言ってるし一旦休憩にしようぜ」


 須藤も特に反対しなかったため休憩する事にした。俺がトイレに向かっていると見覚えのある顔が視界に入ってくる。変装をしていたが間違いなく入奈だった。えっ、一体何しに来たんだよ。

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