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深まる疑問

 人夫さん達の尽力により仮設の療養部屋は無事に完成を迎えた。これにより少しはミミも休みやすくなりそうだ。


 そんな時にゴルさんが療養部屋を目にしてかつて王都に住んでいた時にケガ人の治療に教会に詰めていた事の話をしたので、少しはミミの事も知っているかもしれないと思った俺はゴルさんに尋ねてみた。


「あのゴルさん、ゴルさんは王都に住んでいた頃はやはりマカマカ教団にも出入りする事ってあったんですか?」

「ええ、時々師が教団の者達に治癒魔法の指導に行く際に私も同行しました。もっとも当時は私も未熟だったので一緒に教えを受ける立場ではありましたが」

「ミミが前に話していたんですが、ザリアン氏よりご教授されたと、もしかしてその時ミミに会っていたりします?」

「いえ、多分ミミ殿がなさった話は師が王都を離れる少し前の事でしょうし、私はその時には師に同行する事もありましたが、一人前の治癒士として王族や貴族の求めに応じた治療をしておりました」


 ゴルさんもミミの事は知らないか、そう思うと意外な話をゴルさんはしてくれた。


「しかし、ミミ殿の才には驚かせれますな遅まきながらマカマカ教団に入団し、わずか3年で一人前になる為の派遣を認められるとは」

「え?ミミって子供の頃からいたわけじゃなかったんですか?確かミミはもう16歳のはず」

「ご存じなかったのですか、ミミ殿は13歳より聖女見習いの修行を開始しましたが、本来それは早いどころか遅いくらいなのです」


 13歳での修行開始が遅いがそれでもミミは才を発揮し、3年で一人前となるべく街への派遣を認められたのか、待てよ、更なる疑問が浮かんだし、もう1度ゴルさんに聞いてみる事にした。


「13歳で修行を始めるのが遅いなら、それ以前のミミは一体何をやっていたんですか?」

「申し訳ない、私もそこまでは知りませぬ」

「そうですか」

「しかし、ユーイチ殿がミミ殿の修業期間をご存じなかったとは、ミミ殿はだいぶユーイチ殿を信頼しているように私には思えたのですが」


 そう言えば最初に聖女見習いになろうと思った理由を聞いても、話してくれなかったな。あれも最初はまだ俺との信頼関係はさほどできていなかったから話してくれないと思ったんだが、今はどっちなんだろう?俺が思ったほど信頼関係が築けていなかったのか?あるいは、わざわざ改まって話すような事ではないのか?……それともミミ自身にどうしても話せない、あるいは話したくない理由があるのか。


 この後、悩む俺に対して思わぬ出来事が起きる事を今の俺はまだ知らないでいた。

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