領主様の屋敷に俺が到着してからしばらくして国王陛下が乗っているらしい馬車が向かっているとの報告があり。メイドさんの1人は執事長であるバンさんの指示で領主様を呼びに行き、他の人達は王様を出迎える為に整列を始めた。
え?これってお忍びの訪問だよな?こんなに仰々しくていいのか?
まあ街からは離れているし、この屋敷の人達は事情を知っているから問題ないんだろうけど。
そう考えていると屋敷から領主であるバートン氏が出てきて、バンさんに声をかける。
「陛下の馬車がお近づきになっていると聞いたが、もういらしたか?」
「いえ、まだにございます」
「そうか、おうミヤシタ殿、貴殿も来ておったのか」
「はい、お久しぶりです領主様」
俺の存在に気付いた領主様が俺に声をかけると俺も返答をし、更に領主様は今回自分の屋敷をこの非公式会談に使う事になった理由を話す。
「ミヤシタ殿、この度の会談は陛下が強くお望みになったものなのだ」
「はい、それはアレフさんやゴルさんからも聞いています」
「王宮に平民たる貴殿を招くわけにはいかぬ以上、陛下の方から我が屋敷を使いたいという強い要望があったのだ」
「そうだったんですね」
王様の方が強く屋敷に来ることを望んだと強く強調する領主様は更に強調しながら話を続ける。
「王宮に招かずとも、王都に貴殿を呼ぶ方法もあったはずだが、それでも陛下はこちらに来ることを望んだ。私はこれを陛下のお心遣いと考えている」
「はい」
「だから良いなミヤシタ殿、決して陛下に粗相のないようにな!」
「は、はい……」
確かに王宮は無理でも王都のどこか、それこそ部下の屋敷を借りて俺を招く方法もあったかもしれないのに、王様はわざわざ時間をかけて王都からこのコーロまで来てくれたんだから、そりゃあ領主様やアレフさんが粗相のないようにと強く念を押すのも無理はないか。
そう考えていると馬車が屋敷の入り口で止まった。どうやらあれが王様の馬車か。ん?中から誰か出てきたが、王様か?
「これより、ビルディス国王、ダリアス陛下がおなりになります!決して非礼なきよう!」
どうやらあの人は護衛のようだな、武器を身につけている事から、ん?もう1人馬車から出てくるぞ!
あれがビルディス国王、ダリアス陛下。思ったより若い男の人だった。だが……、衣服こそお忍びの為かそこまで高級品ではなさそうだが、立ち振る舞いは王族のそれにふさわしいと言えるかもしれない。
「出迎えご苦労である」
これから俺はこの人と話すんだな。