書物室を後にした私は1人部屋に戻る為に屋敷内を数冊の書物を持って歩いていると。ノービスに関してのある事を思い出した。
セリスティア「あれ?そう言えばノービスの家族構成には確かに姉はいるって記されてるけれど実際のゲームには出でいないわよね。あのエレイナの強気さはまるでゲームでのノービスと瓜二つだったわ。」
そう、そもそも『CRYSTAL《クリスタル》 SYMPHONIA《シンフォニア》』の登場人物は主人公であるアリサと攻略対象キャラである彼等の他にサブキャラクターが存在するが、中にはレイラは疎か、ノービスの姉であるエレイナだって存在はしない。何故ならば情報のみだからだ。
その時、私はある違和感を感じた。
もしかしてこの世界はゲームとは違う別の何かがある?正直分からない。そう思うと私の腹からキュ〜っと小さく鳴り出す。
セリスティア「………それにしても小腹が空いたわね、全く、あの2人、とくにエレイナが来たせいで折角の至福のティータイムがおじゃんになったじゃないのよもう。」
どうするか、此処は書物室に戻ってレイラに紅茶と茶菓子を用意する様にお願いしようかな?でも、またエレイナにべったりとイチャつかれるのは流石に勘弁したいし。
そう思ってると階段下の方から何かモワモワと美味しそうな匂いに気付き、私は脚を止めた。
セリスティア「何だろう?下から良い匂いがするわ。」
何かの匂いに誘われた私は階段で1階へと降りると。偶然か当屋敷のメイド長で名前は確か、そうだ。シーナだったな。
そのシーナは私に気付いたのか、何やら困った表情をしながら、私を呼び掛けて来た。
シーナ「あ、お嬢様、丁度良い所に。」
セリスティア「どうかしたのかしら?」
シーナ「御来客様用の茶菓子を用意出来たのですが、肝心のレイラとエレイナ様達の姿が見当たらず仕舞いでして、何処に居るのかお嬢様は存じませんでしょうか?来客室に居た筈が突然と姿を消してしまいまして。」
両手に持ったおぼんに乗せた山盛りの手作りクッキーの皿が置かれてある。恐らく匂いの元はこれだろう。そしてシーナはどうやらレイラ達を探している様だ。
どうする?いや、待てよ、もしかしたらメイド長であるシーナなら何処か落ち着ける場所がある事を知っているかもしれない。取り敢えず、書物室にレイラ達が居る事を伝えておこう。
セリスティア「レイラ達なら書物室に居ると思うわ、今でもまだギャーギャーと女同士騒いでるのかもしれないと思うけれどね…。そのせいで静かに本を読む暇も無かったわ。」
シーナ「そうでしたか、申し訳御座いません。3人は後でこの私が直接お叱り致しますので。」
セリスティア「別に貴女が謝る必要は無いわよシーナ。レイラ達を叱るのは程々にしておいて頂戴。………コホン、それよりもシーナ。メイド長である貴女に少し尋ねたい事が有るのだけれど、何処か1人落ち着ける場所は知らないかしら?」
シーナ「落ち着ける場所ですか?」
セリスティア「ええ、さっき言ったけれど、エレイナ様、いいえ、エレイナお姉ちゃん達が突然やって来たせいで静かに本を読む暇も無かったからね。」
その事を伝えるとシーナは『何処かあったかしら?』と右手で頭を抱えながら悩むも、ハッ、と思い出したか
シーナ「それでしたら良い場所が御座います、ただ……。場所が場所なのでお嬢様に見合うかどうかは……。」
セリスティア「別に其処でも構わないわ!その場所に案内して!」
シーナ「か、畏まりました……。では、御案内致します。」
私のお願いを受けたシーナの後を追うかの様に連いて行く。途中、2階から私の事を呼ぶ声が響くも全く気にしないでおこう。
そして、案内された良い場所と言うと。
セリスティア「驚いたわ、まさか
シーナに案内された良い場所、それは家の屋敷の右隣にある使用人達の寮館3階にあるメイド長用の自室であった。
セリスティア「へぇ、家の屋敷に使用人用の部屋があった何て知らなかったわ。」
シーナ「…まさかお嬢様が使用人のお部屋もとい、メイド長である私の部屋に案内される何て思いも寄りませんでした。」
セリスティア「何?」
何処にでもある普通のベッド、横に小棚とその上にランプ、木製の机に椅子、クローゼット。使用人らしい普通の部屋だ。
セリスティア「案外悪く無いわね、この部屋も。使わせて貰うわ!」
シーナ「よ、宜しいのですか?この様な使用人使われては私が旦那様と奥様に怒られてしまいますよ!?」
セリスティア「あら?知ってるかしら、バレなければ問題無い。って。」
こんな事を言われた以上、最早何も言えないとシーナは溜息をしてから了承した。
シーナ「………わ、分かりました。この事は誰にも言いません。ただ。御夕食の時間までは利用しても構いませんので。どうぞお使い下さいませ。」
セリスティア「有難う、愛してるわシーナ。」
確して私は新たに1人で落ち着けられる場所の確保に成功を果たした。メイド長のシーナと言う道連れを付けて。