「というわけでして、ブラド家が主導して復旧作業に入らせていただきます! 協力、および支援に手を貸していただける方は、これから各地に設置される復興名簿に――」
水の都アクアリムの大噴水広場にて。家の協力を無事に取り付けたマギアさんが、街の人々に復興の協力をお願いしている。
作業内容を聞き、動揺している人々は非常に多いようだが、このままでは街の存続に関わると考えた人々が、我先にと手を挙げていく。
いまは戸惑う人たちもやがては一丸となり、街の復興に向けて歩いていけるだろう。
「スライムを利用した浄化作戦ねぇ……。すっげぇ作戦を考えるよなぁ」
「彼らに汚れた水を浄化する能力があるとは思わなかったわ。私たちもそれなりに冒険をしてきたつもりだけど、まだまだ知らないことは多いみたいね」
共にマギアさんの話を聞いていたウォル君とアニサさんは、感心したような表情を浮かべていた。
とはいえ、この街の周辺に住むスライムたちの水質浄化能力だけでは、元の状態に戻るまでに膨大な時間がかかってしまう。
浄化作戦が上手くいくかどうかは、ウォル君たちにお願いしたことが実を結ぶかどうかにかかっているのだが。
「ソラ君からもらった手紙は、冒険者ギルドに預けたから心配はないはずよ。アマロ村のユールって人宛てでいいのよね?」
「ええ、それで大丈夫です。なるべく早く届くと良いんですが……」
アマロ村と水の都はそれなりに距離が離れている。
手紙が届いてユールさんがこの街に訪れるまでの時間を考えると、結構な日数がかかってしまうだろう。
「ウォル君たちが大量の水を用意してくれて本当に助かったよ。でも、一体どこから持って来たんだい?」
「ああ、あれか。ちょっと仕置きをしたついでに……な!」
「ええ、そうね。憲兵さんたちに取り調べをしてもらうついでに……ね」
示し合わせて笑い出す二人を見て、首を傾げてしまう。
水の都に戻ってきた僕たちが最初に見たのは、大量の水を無料で配るウォル君たちの姿だった。
見たことがない二人組と共に作業を行っていたのだが、彼らは既にこの場にはいない。
ある程度水を求める人たちがはけた後、まるで犯罪を起こした人物のように警備の人たちに連れて行かれてしまったのだ。
状況から察するに、何かしら犯罪を起こそうとした人物たちを懲らしめ、接収した水を一般人に配っていたと見ることはできる。
ウォル君がどうにも気になると言って、どこかに出かけて行ったことと関係していると思うのだが、この様子では教えてくれなさそうだ。
「いくら大量の水だっつっても、街全体に数日分行き渡ったとは思えねぇがな。ソラたちが浄化方法を考案してくれなかったら、大変なことになってただろうぜ」
「お互いが行動した結果が、うまく噛みあったってわけだね」
ウォル君と共に笑い合い、固めた拳をぶつけ合う。
彼であれば、こういう呼び方をしてみるのもいいかもしれない。
「ねえ、ウォル。これからの数日間、君も街の復興を手伝うんだよね?」
「当ったり前だろ。乗り掛かった船――って、なんか違和感があったんだが、気のせいか?」
素っ頓狂な顔を浮かべるウォルに笑いつつ、復興計画の詳細を伝える声に耳を傾ける。
家族以外で呼び捨てにできる人物。
意外と悪くないかもしれない。