卒業式と送る会がようやく終わり、少しは落ち着けるかと思われた翌週――
生徒会室で、澪が開口一番に言った。
「卒業式、卒業生を送る会が終わったばかりでなんですが……早速、新入生歓迎会の企画・運営の相談をしたいのですが」
その言葉に、倉子と真子は机に突っ伏した。
「……意外に……ハードスケジュールっすね……」
「イベントの連投って、芸能人でも辛いやつよ……」
そんなふたりをよそに、澪はにこやかに続ける。
「新入生には“先輩”として接することになりますし、皆さんの存在感はきっと心強いはずです」
「先輩、ね……」
「先輩になるのか……」
倉子がぼそりとつぶやく。
真子も続ける。
「やばいっす……SP、25歳、先輩はじめました……っす」
「いやぁぁぁぁっ!! 25歳、やばっ!!」
ふたりは揃って頭を抱えた。
「新入生に“人生の相談”される年齢よ、これ……」
「むしろ進路指導室にいそうな雰囲気になってきてるっす…… 下手したら担任の人生相談も受けることになりそうっす……」「ありそうっす。あの先生だと……」と真子がうめいた。
澪だけが、まったく動じずに頷いた。
「それでも、皆さんがいてくださるだけで、新入生たちは安心できると思います」
「……もしかして澪お嬢様、内心めちゃくちゃ楽しんでる……?」
かくして、まだ春休みにも入っていないうちから、新年度に向けての戦いが始まる。
SP25歳、副会長、そして――“先輩”。
新たな肩書きに、ふたりは震えるのであった。
【第17章-1:歓迎会プログラム】
生徒会室のホワイトボードに、澪が“歓迎会案”と大きく書き込んだ。
「歓迎会って、何するんっすか?」
真子が真顔で問いかけると、澪は首を傾げず丁寧に答えた。
「えっと……生徒代表の歓迎の挨拶、これは私ですね。そのあと各部活の紹介と、それぞれの部長からの挨拶があります。時間は、部活紹介が各1分以内。最後に歓迎発表の順番決めですね」
「歓迎発表?」 倉子が不思議そうに眉をひそめる。
「申請があったのは、合唱部、吹奏楽部、軽音部です。セッティング込みで1団体10分、合計30分を見ています」
「……結構、面倒ですね」
「部活の数はいくつあります?」と倉子。
「えっと、30ですね」
「じゃあ、30分プラス30分……1時間ですか?」
「部活の紹介挨拶って、1分もいらなくないっすか?」と真子が口を挟む。
「はい。でも、全体で1時間見ておくと、後半の発表に向けての予備時間としても使えますし、余裕をもたせておきたいんです」
「……なるほど。じゃあ、順番を決めていこうか」
「50音順でよくないっすか? 混乱もしないし」
「それで行きましょう」
こうして、歓迎会プログラムの骨子は静かに、しかし着実に決まっていった。
その作業の途中で、ふと真子がつぶやく。
「先輩、なんでうちら、真面目に生徒会してるですかね? SPなのに……」
「……あっ……」
「一瞬、学生に戻ってましたね?」
「……一応、生徒として在席してるから、しょうがない……」
「あと2年もやるすっよね」
倉子は深くため息をついた。
「……はぁ……」