9話 元アサシン、美空とイベントへ行く。〈上〉
風呂から戻った俺は、この国に来てからも習慣となり体に染み付いている
だが手入れをしながらも、この数日、思っていたことがある。
(なんで俺は、
特に今夜は、そのことを考えてしまう。
この国に来て、初めて
本当に俺は、このままでいいのだろうか? ふう~。
手入れも終わったし、もう寝るか? 明日は美空に楽しんでもらいたいからな。
手入れが終わった
★★★★
翌朝、2人の起床前に起きて、焼きイモ用の石を洗っていた。
「バート、早いな。おはようさん、ご苦労様だ」
いかにも旅行に行くような
「ああ、おはよう
何年ぶりだろう? 俺にとって久々の
俺が幼かった頃、
たくさんの靴の中から、出掛けるようなお
「なんだよバート、そんな顔もするんだな、心配するな。美空と留守を頼むな! じゃ~行くよ」
俺の肩を軽く叩き、
(俺は、どんな顔をしていたのだろう?)
すぐに追い駆けて、
★★★★
リビングに戻り、テレビを
「バートおはよう」
美空が二階から下りて来て、台所に向かった。
「おはよう、美空。朝食はなんだい?」
「今日は、時間がないからB.L.E.Tサンドにするね」
「分かった。頼むな」
(B.L.E.Tサンドとは、なんだ?)
分かっているように返事を返したが、俺には何が出て来るのか? 全く分からなかった。
「バートは、コーヒーを飲んで待っていてね」
「ああ、有り難う。美空」
出されたコーヒーを飲みながら、台所で朝食の準備をしている美空の手際の良さを(スゲーな~)と思いながら見ていた。
「出来たよ~。バート」
出された皿には、トーストしたパンにベーコンと言う肉を焼いた物と、目玉焼きとレタスとトマトが挟まれていた。
確かに時間がない時に食べるには、効率の良い食べ物だった。
美空は台所で、片付けをしながら、立ったままで食べていた。
「美空もこっちに来て、座って食べなさい」
お兄さんぶって言ったが、逆に言い返されてしまった。
「出掛ける女性は時間が必要なの。早く準備をしなくてはならないのよー」
「・・・・分かった。スマン」
元の国でもそうだった! 一定階級以上の女性達が出掛けると言うことは、自分達のステータスの確認も
(この国でも、そうなのか?)
それ以上、俺には何も言えなかった。
「ごちそうさま~。バートも時間の確認をしながら、お仕事をしてね」
俺に伝えて、美空は二階に上がって行った。
俺もB.L.E.Tサンドを食べ終えて、コーヒーカップと皿を洗って片付けた。
トラ先輩の食事の用意を済ませて、そのまま外に出た。
石を触り、石の乾き具合の確認をしながら時計に視線をやると、10時チョッと前だった。
(アサシンとしては当然の時間管理だな!)
ドヤ顔で自室に戻り、出掛ける準備をして美空のことを待っていた。
★★★★
〈コンコンコン〉
「バート、準備はどうかな? 大丈夫なら出掛けよう」
「準備はOKだ。美空」
美空から借りたバッグを肩に背負い、ドアを少し開けた瞬間だった。
体は覚えているようで、とっさに呪文、
(誰だ? 今のショートヘアの美女は? 山島家にはロングヘアの
「バート、開けるよ~」
ショートヘアの美女とトラ先輩が俺の部屋に入って来た。
トラ先輩は俺の
俺は〈しー〉のポーズをトラ先輩にしていた。
「あれ、居ない。何処から声が聞こえたんだろう? 下かな? トラ下に行くよ」
ショートヘアの美女とトラ先輩は、部屋を出て行った。
素早く下に下りて、鳴かずに黙っていてくれたトラ先輩に感謝をした。
後でトラ先輩の好物を
誰だ? 声は美空だが匂いと外見が全く違う。
「バート、何処に居るの~。もう出掛ける時間だよ~」
(
素早く戦闘体制をとりながら、トイレの方へと移動して、二階からショートヘアの美女を見ながら声を掛けた。
「トイレだー。今から下に行く~」
ショートヘアの美女が、二階を見ながら返事をした。
「はーい。待っているねー」
おいおい、あの美女は美空だ……あっ! 昨夜見た攻略本と言う書物に描かれていた、キャラクターに似ているぞ。
俺は急いで下に下りた。
俺を見て、ショートヘアの美女に言われた。
「バート遅いよ~。急いで駅に向かうよ」
思わず、俺は言葉をかけて確認をしてしまった。
「み、みそらさん、なのかなぁ?」
「も~、何を言っているのー。早く駅に向かうよ」
美空であろう美女に腕をつかまれて、2人で家を出た。
★★★★
駅に向かいながら、美空から色々と説明を受けている。
ウィッグでショートヘアになっていること。
メイクで今の顔になっていること。
カラーコンタクトと言う物で、目の色が変わっていること。
衣装は小さなタイヤが付いているキャリーケースと言う、美空が引いている物に入っていることなど。
美空の楽しいは準備が大変なようだ。
★★★★
駅と言うところに着いたようで、美空は周りを見ている。
「りょうちゃーん」
「みーちゃん」
2人は待ち合わせをしていたようで、美空が時間を気にしていたことが分かった。
「みーちゃ~ん、そちらの人は誰なのかな~? 彼氏?」
美空の友人が品定めをするように、ニヤニヤしながら俺のことを見ている。
「違うよ~。父さんのお
俺はこの時、初めて知った。
「今日は、バートも一緒だから宜しくね。
「ハーイ。みーちゃん、バート君、今日は宜しくねぇ~」
「宜しく頼む。
俺達は電車と言う乗り物に乗り、イベント会場へと向かった。
★★★★
(こんなに多くの人を移動させることが出来るとは……電気はどのように作るのか俺には分からないが、鉄ならタガーイ国が造れば、この巨大な乗り物は造れるかも知れないな!)
40分くらい電車に乗り、そろそろイベント会場近くの駅に着くようだ。
(本当に、この国は
そんなことを考えていて電車から降りずに居ると、あっ! と言う間に目的地に着いていたようで、慌てた美空に手を引かれ、電車を降りて会場へと向かって歩いていた。
……手間の掛かる兄でスマンな、美空さん。
(だが、俺は元アサシンだ! 歩いている時に、このイベントに行く人達がすぐに分かったぜぇ)
何故なら、美空と
キャリーケース見ながら歩いていたので、視線を上に向けると、目の前には巨大な三角形がひっくり返り、脚を伸ばして立っていた。
(おいおいおい、なんだよ、この巨大で立派な城は! 俺達はここに行くの? この国の王と会えるの?)
「み、みそらさん。俺達は、この大きな城で遊ぶのか? この大きな城には王は居るのか?」
「みーちゃん、バート君って面白いね~。なりきるのは中に入ってからね」
「
「フムフム、楽しみにしているよバート君。あ、王様は居ないからね~……笑」
「……ふう~」
どうやらイベントのテンションのお陰か? 変に思われずに済んだ。
俺達はイベント参加の手続きを済ませて、コスプレの準備のために更衣室のところで別れた。
★★★★
更衣室に入って着替えていると、知らない人から声を掛けられた。
「その衣装、
「は、はい。どうぞ……。汗」
俺は急いで準備を済ませて、更衣室前で美空と
「ねぇねぇ彼、
「うん、イケてるし、衣装も
(うぅ~……呪文、
「バート君、
先に出てきた
「
(これで返しは、いいんだよな?)
「ありがとう、バート君。みーちゃん、すぐに来るから」
(昨夜見た美空の衣装もだったが、
「遅くてゴメンね~」
振り向くと、昨夜見せられた衣装を着た美空が現れた。
でも、バート兄さんが心配をしていたように、なっているじゃないかぁ~。
歩く度に、そのタワワなオパーイ様がアチコチに動いて、アサシンスーツからポロリンしてしまいそうになっているじゃないかぁ~。
「どう?
美空は、手作りであろう
「みーちゃん、
「ありがとう、
ワチャワチャしていて、とても2人は楽しそうにしている。
今日は美空と
「みそら~、似合っているぞ。
2人を誘い、俺達はコスプレ会場へと向かった。