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第18話

18話 玄人げんと 町内会の慰安いあん旅行りょこうと言う任務にんむに向かう。


 電柱のライトがともり始める夕暮れ時、玄人げんと任務にんむの準備を整えて二階から下りてきた。

 玄人げんとの表情は真剣そのもので、心の奥には重い決意が秘められている。

 今回のターゲットは、長年国民をあざむき、私利しり私欲しよくをむさぼる政治家せいじか

 玄人げんとにとって、この任務にんむは単なる死事しごとではなく、正義のめの戦いだった。


玄人げんと、本当に行くのか?」


 心配な気持ちを抑え、俺は玄人げんとのことを見ていた。

 玄人げんと任務にんむに向かうための確認をしていると、俺の心臓は鼓動こどうを速め、無事を祈る思いが強くなっていた。


「心配するな、バート。俺達は、るべきことをやるだけだ」


 玄人げんとは微笑みながら答えたが、その目は鋭くなり、覚悟が宿っていた。


「でも、もし玄人げんとの身に何かあったら……」


 言葉を続けるが、玄人げんとは俺に軽く手を挙げてさえぎった。


「大丈夫だ! 俺達はこれまで何度も任務にんむをこなしてきた。今回も必ず成功させる」


 玄人げんとは親指を立ててから下に向け、いつもの決めポーズを俺に見せた。


「気をつけてな、玄人げんと。無事に帰って来てくれよ」


 玄人げんとは頷き、しっかりとした目で俺に言った。


「必ず戻る。美空とトラと待っていてくれ」


 玄人げんとは力強く言い残し、そのまま玄関に向かっていった。

 俺は、玄人げんと任務にんむに向かう背中を見送ることしかできなかった。

 玄関のドアが閉まる音がひびき、俺は静かな部屋に1人残された。

 玄人げんとが無事で居ることを願っているが、どうしても心配が尽きなかった。

 玄人げんと任務にんむの内容を考えると、気が重くなってくる。


「何か出来ることはないのかな……」


 小声でつぶやいたが、俺の出来ることは、ただ玄人げんとの帰りを待つことだけだった。


★★★★


 その後、俺は二階から下りてくる美空の姿に気付いた。

 美空は丈の短いTシャツに短パンを着ていて、俺には刺激が強い姿だった。


「バート、お待たせ! あれ、父さん行っちゃった? もぉ~テレビもけないで何しているの?」


 美空がテレビのリモコンを取り、テレビをける。


「美空、今日の夕食は何にする?」


「今日は父さんも慰安いあん旅行りょこうに行ったし、ピザでも頼んじゃおうか?」


 このような雰囲気を作ってくれる美空が、俺は好きだ……。


(誰が好き? 俺が? 美空のことを……ま、まさかな……)


 俺は自分の頭を軽く叩いた。

 あっ、今日は久々に俺の知らない食べ物を言われたぞ。


「ああ、そ、それにしよう。美空」


 美空はメニュー表を開き、俺にも見せるが全く分からないぞ。


(ヤバイ、ヤバイよ~……ヤバイって~! ピザって、どんな食べ物なんだよ~……)


 その時、美空がメニュー表を指差した。


「美空はねー、バートと食べるからラージラージサイズのクワトロとサイドでポテトとチキンのセットがいいなー」


 美空の言っている言葉は、俺には呪文を唱えているように思えた。

 しかし助かったぁ、返事を返すことができる。


「うん。美空がいいなら、それでいいよ」


 俺はニコリと微笑んで返事が出来た。

 美空は早速ピザ屋に連絡をして、注文を済ませると、台所でスプーンと金色の缶を持ってきた。

 スプーンで缶を叩くと、二階からすごいきおいでトラ先輩が下りて来た。


「今日は美空達もピザを注文しちゃったからね!」


「ニャー、ニャー」


 トラ先輩は美空の足にスリスリしながら、行ったり来たりをしている。

 缶を開けてトラ先輩の食事の準備を済ませると、トラ先輩は一目散いちもくさんに台所に行って、美味しそうに食事を始めた。


〈うみゃいにゃ~ にゃっぱりきんにゃんは、うみゃいにゃぁ~(バートには、そう聞こえております)〉


(……ん? あ、あれ? トラ先輩の声なのか? トラ先輩は話すことが出来るのか? う~ん……)


「美空、あれはトラ先輩の好物なのか?」


「うん、金缶はトラの大好物なんだよ」


「そうなのか、分った。教えてくれてありがとう」


 トラ先輩の好物を俺はまた、1つ覚えた。


(ドラッグストアーで買えるなら、後で献上けんじょうさせていただきます。トラ先輩)


山島やましま様、ご注文のピザをお届けしましたあぁ~』


 こちらも注文していたピザが届いたようだ。

 だが、美空の持ってきた箱の大きさに俺は一瞬、言葉を失った。

 箱の大きさはホットプレートの箱と同じぐらいの大きさだった。


「えーと……み、みそらさん。これを全部2人で食べるの? かな?」


「そうだよー。余裕でしょー、2人なら」


(おいおいおい。さすがに2人でこの量はさぁ……)


 この世界の食文化には、本当に感心させられる。

 食べた感じはルノーン界にもある巨大なデリシャスパンパに似ているが、俺には例えられることが出来るボキャブラリーがないのが残念だった。

 ただ言えることは、ピザと言う食べ物は、超絶にうまい! という言葉の一言だった。

 気付くと、あまりの美味しさに、30分ほどで俺と美空のお腹の中で幸せな気持ちにさせてくれていました。


(はい。食べちゃいましたとも全部……チキンとポテトも……)


 食事中に明日から開催されるコミックターゲットの話をされた。

 新作メニューの開発で、すっかり忘れていたことを反省して、食後は美空さんに手伝ってもらい、コミックターゲットの準備が大変だった……汗。






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