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第21話

21話 疾風しっぷう 激烈げきれつ アサシンズ マスターズ2(タクマルート)奥義おうぎ解放かいほう解毒げどくの希望。


 タクマは、妖術ようじゅつ薬師やくしジュビルとの激闘げきとうの中、ジュビルの力を試すように炎の呪文を繰り出していた。

 周囲の洗脳されたウエルス兵達が、かつての仲間の姿を思い出させるたび、タクマの心は痛んだ。


「この戦いは、俺達の未来を左右する」


 タクマは決意を新たにして、炎の力を高める。

 7年間の過去を思い出して、仲間を守るために戦っていることを再確認した。


「タクマ、お前の炎は本当に美しいな!」


 突然、タクマの耳にかつての仲間の声がひびいた。


「だが、俺達はお前の敵だ!」


 その声の主は洗脳された兵士の1人で、タクマの親友のライヤだった。

 タクマは痛みを感じながらも、強い決意で答えた。


「ライヤ、お前達は洗脳されている。俺は必ず、お前達を救う!」


「救う? 俺達は選ばれた者達だ!」


 ライヤは狂ったように叫び、タクマに向かってやりかまえた。


「お前の炎など、俺達には通用しない!」


 タクマは冷静さを保ちながら、再び呪文を唱えた。


炎波えんぱ!」


 大きな炎が波のように広がり、迫る兵士達を押し返した。

 タクマはそのすきに、さらに別の兵士に向かって呪文を唱えた。


炎輪えんりん!」


 放った呪文は、大きな炎の輪となった。


「うわあぁー!」


 洗脳された兵士達は、炎の輪に包まれて、苦しむ声を上げた。

 心の中でタクマは葛藤かっとうしていた。

 かつての仲間を傷つけることは、タクマにとって非常に辛いことだった。


「タクマ、俺達はお前を止めるためにココに居る!」


 別の兵士がタクマに叫ぶ。


「お前がどんなに抵抗しても、ジュビルの力にはかなわない!」


「そんなことはない! ジュビルの力は必ず打ち破り、お前達を救い出してやる!」


 タクマは強い声で答えた。

 そして、タクマは今まで準備していた必殺の呪文を唱える決意を固めた。


炎流えんりゅう!」


 炎の流れが全身を包み込み、タクマはその力を最大限に引き出した。

 周囲の洗脳された兵士達がおどろきの表情を浮かべる中、タクマはジュビルとの間合いを詰めるために2重呪文 俊足しゅんそくを唱えてダッシュする。


「お前のようなアサシンが、われに勝てると思うなよ!」


 ジュビルは冷笑しながら、手をかざして魔方陣まほうじんを展開させた。


影縛かげばく!」


 その瞬間、タクマの動きが止まった。

 影に捕らわれ、身動きが取れない。

 あせりを感じながらも、タクマは心の中で3重呪文を唱え続ける。


(でえっ、出ろおぉぉぉー 炎刃えんじん……)


(で、でえっ、出ろおぉぉぉー 炎刃えんじん……)


「で、でえっ、出るんだあぁぁーー 炎刃えんじん!」


 炎をまとったやいばが影を切り裂き、タクマは自由になった。

 そして、再びジュビルに向かって全力でダッシュした。


「まだまだ、われには力がある!」


 ジュビルは冷笑しながら周囲にさまざまな魔方陣まほうじんを展開して、タクマの動きを封じようとした。


「ジュビル、貴様きさまの力など、服部はっとり流派りゅうはには通用しない!」


 心の中で決意を固め、タクマは封印をしていた服部流はっとりりゅう奥義おうぎを発動させる。


服部流はっとりりゅう奥義おうぎ タクマしき 実体じったい 分身ぶんしん 炎虎えんこ!」


 奥義を唱えた瞬間、タクマの周囲に7つの赤く輝く炎の呪陣じゅじんが展開した。

 呪陣じゅじんの中からは3人の分身と周囲にほのおまといし4頭のトラが姿をあらわした。

 タクマの表情がさらに険しくなり、ジュビルに向かっておそい掛かる。


「な、なんだ! この力は!?」


 おどろいたジュビルは、炎のトラが自分に迫って来るのを見て、洗脳しているウエルス兵を盾にした。


「これで貴様の終わりだぁ! ジュビルー」


 全力で叫び、タクマは攻撃を続ける。


 しかし、ジュビルは魔方陣まほうじんを展開して、一瞬の隙を突いて逃げ出した。


「くそっ、逃げるなー、ジュビルー」


 タクマは叫んだが、ジュビルはすでにやみの中に消えていた。

 タクマは力尽きて、地面に膝を付いた。


「やってしまった……クソッ。トドメを刺せなかった」


★★★★


 一方、師匠ししょうは、タクマから受け取った解毒薬げどくやくを持って、王室に潜入していた。

 隠密極おんみつきわみを使い、完全に姿と気配けはいを消して、師匠ししょうは王室の内部に進入する。


(バン王、エミリア王妃……)


 師匠ししょうは心の中でつぶやいた。

 以前は、ライバルであったバン王の変わり果ててしまっている姿を見て、言葉を失った。

 かつての威厳いげんある姿はどこにもなく、彼は無惨むざん洗脳薬せんのうやくの影響を受けていた。


「お前は、もう……」


 師匠ししょうは目を細めたが、解毒薬げどくやくの小瓶をにぎり締めて、すぐに気を引き締めた。


解毒薬げどくやくを飲ませるんだ。エミリア王妃にも!」


 解毒薬げどくやくを手に取り、王妃の口元に近付ける。


「これを飲んで、必ず目を覚ましてくれ」


「誰……誰なの?」


 エミリア王妃は、ぼんやりとした目で師匠ししょうのことを見上げる。


われはロギー。かつてバン王と王妃、君達と共に戦った者だ。君達を救うために、ここに来た」


「バン……王……助けて……」


 エミリア王妃は涙を流しながらつぶやいた。

 師匠ししょうは、解毒薬げどくやくを2人に飲ませることに成功した。

 だが、効果が出るまでに半日かかることを歯痒はがゆく思った。


(どうか、どうか、タクマの解毒薬げどくやくがきいてくれー)


 師匠ししょうは心の中で強く祈った。


「必ず、君達を救い出す」


 こうして、タクマと師匠ししょうの運命が交差し、ルノーン界の運命をか賭けた戦いが続くのだった。



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