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第22話

22話 疾風しっぷう 激烈げきれつ アサシンズ マスターズ2(タクマルート終章)運命の再会。


 全力を尽くしたが、タクマはジュビルを取り逃がしてしまった。

 タクマの心には、くやしさと焦燥感しょうそうかん渦巻うずまいている。

 ジュビルに、トドメを刺すことが出来なかった自分を責めながら、タクマはバン王とエミリア王妃の王室に向かうことを決意した。

 王室に到着すると、ボロボロの状態のタクマが王室のドアを静かに開けた。


★★★★


 タクマの姿を見た師匠ししょうは、おどろきと喜びの表情を浮かべる。


「良く生きて帰ったな、タクマ。お前が無事であることを知れて、本当に安心した」


 苦虫を噛み潰した表情で、タクマは師匠ししょうに報告を告げる。


「ありがとうございます、師匠ししょう。ですがジュビルのヤツを……」


 その時、バン王とエミリア王妃が意識を取り戻して、タクマに視線を向けた。

 2人の目は光が戻り、過去の記憶が宿っている。


「タクマ、お前はウエルス国のために本当に頑張がんばってくれていた。勿論もちろん! 私達のために、そしてフェリスのために」


 バン王が言うと、エミリア王妃と視線を合わせて頷いた後、エミリア王妃が話を続ける。


「私達が昔、任務にんむで危険な状況にあった時、外でヨチヨチ歩いていた女の子が居たのです」


「辺りが危険な状態だったので、その子を危機から回避させるために私達が救出をしたのです」


「その子のご両親を探りましたが見付けることが出来なかったのです」


 その言葉にタクマは耳を傾ける。

 エミリア王妃の言葉が、まるで運命の糸を解きほぐすように感じた。


「その子がフェリス姫なのですね?」


 バン王とエミリア王妃と目を合わせて、タクマは見た資料が真実なのだと確信した。


「そうだ! 私達は子供が居なかった。なので、彼女をが子として育てることにしたのだ」


 バン王の言葉が、真実を告げる。

 師匠ししょうもバートを救出した時のことを思い返した。


「タクマ、われもバートを救出した時のことを覚えている」


「バートの母から、まだ話すことのできない幼い子供をたくされたのだ」


「バートを救出したさい、部屋の中の様子が、もう1人いる感覚があった」


「しかし、バートの母達の援護えんごに向かったので、われはみんなから遅れていたのだ」


「なので、素早く離脱りだつをしなければならなかったのだ」


〈トラビス国の山の中で救出したことを、われも覚えている〉


 バン王と師匠ししょうが目を合わせて同時に言った。

 その言葉を聞いた全員が、フェリス姫とバートが双子の姉弟であることを確信した。


「タクマ、フェ、フェリスは今、ドコに居るのか?」


 バン王が心配そうにタクマに問い掛ける。


「フェリス姫は、私がお守りしております! 無事です。バン王」


 回復したバン王とエミリア王妃は、師匠ししょうを再びロギーと呼び掛ける。


「ロギー、あなたが来てくれて本当に感謝します」


 師匠ししょうは微笑みながら、バン王とエミリア王妃に向き直った。


「君達が無事で本当に良かったよ。バン、エミリア」


 その時、バン王が真剣な表情で言った。


「タクマ、聞け! ウエルス国の侵略しんりゃく戦争せんそうは、イグニスのロギー、タクマの功績こうせきで回避された」


(バン王は、自分がイグニスからの密偵みっていだと気付いてらしたのか……さすが、元アサシン)


 タクマは片膝を付き、頭を下げたままの体制からバン王と視線を合わせる。


勅令ちょくれいだ! 私達が目覚めた今、私達の力を結集して、再びこの国を守る必要がある」


 エミリア王妃も続けた。


「私達の決意が、国を守る力になるのです」


 その言葉に、タクマは力強く頷いた。

 師匠ししょうと目を合わせた後、タクマはウエルス国、バン国王とエミリア王妃の2人に決意を告げた。


御意ぎょい、必ずお守りいたします。イグニス国、服部はっとり流派りゅうはのタクマではなく、ウエルス国の服部はっとり流派りゅうはのタクマとして」


 師匠ししょうもタクマに視線を向けたまま頷いた。

 しかし、その直後、一本の矢が王室のガラスを突き破り、床に刺さった。

 素早くタクマが手に取ると、矢には紙が結ばれている。

 紙をほどき、開いた瞬間、ジュビルの声が聞こえ始めた。


「ケェケェケェー。今回は失敗したが、必ず、ルノーン界をわれが手に入れてやる。覚悟をしておけよ、貴様ら……」


 タクマの表情が険しくなり、ジュビルの言葉がタクマの心に重くひびいた。


「まだヤツは、ルノーン界に災いを起こすつもりなのか……」


 タクマは矢をへし折って、怒りの感情をあらわにした。

 その時、師匠ししょうが静かに言った。


「バートのことが心配だ。バートのために、われらはどう動くべきなのか……」


 大きく深呼吸しんこきゅうをして、タクマはジュビルへの怒りの感情をおさえて、冷静に返答をした。


「私もバートが無事で居ることを願っています。バート、弟弟子おとうとでしを見付けるために、全力を尽くします」


 バン王とエミリア王妃は、緊張した面持ちでタクマを見つめる。


「タクマ、頼む。フェリスのことを守ってくれ」


御意ぎょい。命に替えてでも、必ずお守り致します」


 片膝を付き、頭を下げて、タクマは力強く答えた。

 こうして、タクマ、師匠ししょう、バン王、エミリア王妃は、フェリス姫を守り、消息不明しょうそくふめいのバートを案ずるのであった。



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