31話 母からの贈り物、俺の知らない受け
特訓の報告と、日本での出来事を伝えるためだ。
木々のざわめきや鳥のさえずりが、俺の心に安らぎを与えてくれていた。
(母さん、俺、
心の中で
山の頂に辿り着くと、周囲には小さくても
★★★★
「エリー母さん。バートだぁー」
大きな声で呼び掛けて、背負っていた荷物を降ろして、その場に座り込み、母に語り掛けることにした。
(エリー母さん、会いに来たよ。今日は、特訓のことや山島家の人達のことを話したいんだ)
両手を合わせる、日本で習ったポーズをして、心の中で母に思いを伝えていた。
(最近、
自分の成長と、
「お前、エリーの息子か?」
農夫の格好をしているが、その目にはどこか
「あなたは誰なんだ?」
「誰でもいいだろう、別に……」
男は笑顔を見せたが、その表情には何か特別なものがあった。
「お前の
突然、言われたことと、初めて会った男から言われたことに、ビックリさせられた。
何故なら、俺の
自分の力について考えたことはあったが、具体的なことはあまり考えずに、使えて当然のように使っていた。
「お前の母は確か、雷の
男は微笑みながら教えてくれたが、その言葉に俺はまた、ビックリさせられていた。
雷の
(この人は誰なんだ? 何故、母のことを知っているんだ? さっきの言い方から考えると、教えてもらえないだろうなぁ……)
あっ、奥義の特訓で出た
(そのためなのか?)
自分の中に流れる血が、母の力を受け
フェリス姉さんは、アサシンとしての修行をしたことがないだろう。
姉さんは、呪文を発動させることが出来るのだろうか……。
姉さんがどのような力を持っているのか、俺は興味が
そんなことを考えていると、突然、男に命じられるように言われた。
「お前、背中を見せてみろ」
何故だろう……言葉は強い口調だが、この人には何故か逆らう気持ちが
俺は言われた通りに服を脱いで、男に背中を見せた。
そ~と振り返って背後を見ると、男は俺の
「やはり、お前の背中にある
「その水の
真剣な表情で、男に言われた。
「なら、どうすればいい?」
不安を抱えながら、俺は男に尋ねた。
「お前は先程、何かを考えていただろう? その考えに宛てがあるなら、その者に聞いてみろ」
男はそう言い残して、持っていた農具で地面を掘り始めてしまった。
男が始めた行動を見て、俺は不思議に思った。
(ここに農地はないが? 開拓をするのか?)
「何をしているのですか?」
「誰かがここに、素晴らしい恵みを残していったのだよ」
男は笑顔を向けて、俺に答える。
「モーイに似ているが、甘くて、うまいのだよ」
その言葉に興味を持ったので、男の行動をしばらく見ていた。
男が掘り出した物を見て、また俺はビックリさせられた。
(イ、イモじゃないかー!)
今日はなんて日だ! この男に
「見てみろ。これが天の恵みだ」
男はドヤ顔を俺に向けて、
母にお
俺はニヤリと微笑んで、男に告げた。
「あなたに、本当に美味しい食べ方を教えてあげますよ!」
「おお、なんだ! 何か教えてくれるのか?」
男は作業を止めて、その場に腰を下ろすと、俺の行動を見ていた。
俺は、
まずは、焼き石を作るために小石を集めることから始める。
周囲を見回して、焼き石に使えそうな小石を集める。
焼きイモを美味しく焼くには、焼き石の温度が重要なのと、ゆっくりと焼き上げること。
しっかり石を熱してからイモを包み込むことで、ねっとりでミツがたっぷりの焼きイモができる。
「これぐらいかな?」
手にした小石を見て、これなら焼けると思い、準備に取り掛かった。
集めた小石を火にくべると、じわじわと熱を持ち始める。
これでイモを焼く準備は整った。
焼きイモを焼くのは、本当に嬉しい気持ちになる。
美味しそうに食べている顔を想像しながら、男に向かって言った。
「焼き上がるまで少し時間が掛かりますが、待っていて下さい」
掘り出したイモを用意して、焼き石の周りに並べていく。
男から農具を借りて、並べたイモを隠すように焼き石を被せた。
石の熱がイモに伝わり、じわじわと焼けていく様子を見ながら、男が喜ぶ顔を想像している。
火の調整と石の位置の調整をしていると、男が嬉しそうな声で俺に言った。
「おお、いい香りがしてきたぞ! エリーの息子」
男に言われて、さらに男を喜ばせる気持ちが高まっていた。
焼きイモの甘い香ばしい匂いが
しばらくしてイモを見ると、イモからミツが垂れて、いい感じに出来上がっているようだ。
慎重に焼き石からイモを取り出して、男に手渡した。
「どうぞ、ミツがたっぷりで、ねっとり食感の石焼きイモです。熱いので気を付けて食べて下さいね」
「おー、これは、うまそうだな!」
男は焼きイモを
「うん。これは、うまいぞ! エリーの息子」
「これが食べたいなら、全部を取ってはダメですよ。またお会いする機会がありましたら、ご
笑顔で伝えて、俺は頭を下げた。
男は頷きながら『エリー、お前の息子は立派に成長しているよ』と
その言葉が俺の心に
母のことが彼の中でどれほど大きなものであるのかを、
(この人や、ルノーン界のみんなを守るために、俺はもっと強くなってみせるよ)
新たな決意を胸に抱き、俺は山を後にした。
彼こそがバートの母、エリーが所属していたアサシン部隊の隊長であった、現トラビスの国王、ラシン王そのものであった。
★★★★
山を下りる途中、自分の
母の雷の力を受け
(もし本当に母の力を引き出せるなら、俺はもっと強くなれるはずだ)
その思いが、俺の心に燃えるような情熱を
「次の特訓では、もっと意識してみる。俺にも母の血が流れているんだ! 何かしらの
自分に言い聞かせて、気持ちを新たにした。