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第33話

33話 姉の力、雷の呪力印じゅりょくいん(下)


 カインとの戦いを経て、仲間達と共にウエルス城に戻ってきた。

 俺の心には、フェリス姉さんとの再会に対する期待が高まっている。

 姉さんが雷の呪力印じゅりょくいんを受けいでいたら、さらなる力を得ることが出来るかも知れないと思っていたからだ。

 広場に戻ると、フェリス姉さんが待っていた。

 姉さんはウエルス国の姫として、優雅ゆうがな姿で周囲の人々に微笑み掛けている。

 その優しく微笑み掛けている姿が一瞬、美空と重なって見えてしまった。


「タクマからバートが来ると聞いていたから、待っていたんだよ」


 姉さんは俺に気付くと、明るい声で呼び掛けられた。


「ゴメン姉さん! ウエルス国の戦士部隊の隊長さんに模擬戦もぎせんをしてもらったんだ」


「隊長と戦って勝ったよ!」


 俺は普通に報告をしたつもりだったのだが、姉さんには興奮こうふん気味ぎみに報告したように見えていたようだ。

 手を口にえると、『クスッ』と笑ってから俺に返事をした。


「それは素晴らしいことね、バート。あなたの成長を頼もしく思うわよ」


 姉さんは、俺の頬に優しく手をえた。


「姉さん俺、もっと強くなりたい。母さんの力を受けぐ可能性を感じているんだ。姉さん、姉さんの背中に……」


 姉さんは頷き、俺の口に優しく指を当てた。


「私の雷の呪力印じゅりょくいんを受けぐことで、あなたはもっと強くなれるわよ」


(やはり姉さんが、雷の呪力印じゅりょくいんを受けいでいたのか!)


「本当にいいの?」


 期待に鼻息が荒くなるほど、俺の胸は高鳴たかなっている。


勿論もちろんよ。私とバートは双子の姉弟なんだよ! 私が使えない力を使ってもらえるなら、お母さんも喜ぶし、その力を持つ資質があなたにはあるのよ」


 姉さんに『場所を変えましょう』と言われて、俺は姉さんの部屋に連れていかれた。


★★★★


 美空の部屋へ入る時もドキドキするが、姉さんとは言えウエルス国のお姫様の部屋に入るのは、違うドキドキがしていた。


(ビックリした。姉さんの部屋の香りは、美空の部屋の香りと同じような香りがしていた)


 姉さんが俺に手を差し出して、服を脱ぐのを手伝ってくれている。

 俺は真剣な表情を向けて、姉さんと目を合わせた。


「姉さん、背中を見せてもいいかな?」


「いいわよバート。お願い」


 姉さんは優しく微笑んでいた。

 目を閉じて心を落ち着かせて、姉の力を感じようと気持ちを集中させている。

 姉さんは、初めて聞くような呪文を唱えるているようだった。

 呪文を唱え終えると、俺の背中にある風の呪力印じゅりょくいんの横に出ていた、水の呪力印じゅりょくいんにそっとキスをしたようだ。

 その瞬間、初めて感じる激しい痛みが俺の全身をけ回り、その激痛に必死に耐えていた。

 全身から変な汗が出るぐらいの激痛に耐えていると、今までなかった雷の呪力印じゅりょくいんが水の呪力印じゅりょくいんに変わり、俺の背中に現れた。

 鮮やかな雷の光が俺を包み込み、力強いエネルギーが流れ込んでくる。


「これで私達、双子の力が一つになったわね」


 姉さんは感慨深かんがいぶかげに言った。


「す、すごいよ、姉さん! これが雷の力なんだね」


 俺はおどろきと興奮こうふんでいっぱいになった。

 俺の中に流れる雷の力は、まるで新たな命が宿ったかのようだった。


「この力を大切にして、仲間達を守るために使うのよ!」


 姉さんは微笑んで、優しく告げた。


「任せてよ、姉さん。絶対に守ってみせるから! 雷の呪力印じゅりょくいん……本当にありがとう」


 力強く笑顔で答えると、周囲に風が吹いて俺の体を優しく包み込む。

 その感覚を楽しみながら、自分の中に宿った雷と風の呪力印じゅりょくいんを感じていた。


(これから、もっと強くなってみせる。仲間を守り、ルノーン界のみんなを守ってみせるぜ!)


 心の中で決意を固め、俺はジュビルとの最終決戦に向けて仲間のところに戻った。




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