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第38話

38話 決戦終了! 取り戻した日常と俺の決意。


 俺達は戦いを終えて、タガーイ国に向かっている。

 先頭を歩いていたアサシン部隊の隊長であるタクマにいが大きな声で叫ぶ。


「ついに勝ったんだ! ジュビルの野望やぼうを打ち負かしたんだー」


 仲間達を見渡しながら、俺も感慨深かんがいぶかく思った。

 師匠ししょうも静かに頷いている。

 長い戦いの果てに、ついに辿り着いた平和な瞬間だった。


「これで安心して暮らせる日が来るのだな・・・・・・」


 師匠ししょうの声には安堵あんどひびきがあった。

 青空の下、緑豊かな大地と、遠くにそびえる美しい山々! まるで新たな始まりを告げるかのように、空が青く輝いている。


「この瞬間を迎えられたのも、みんなの力があったからだぁー」


 仲間達に向かって俺は叫んだ。


「うぅぅぅーーーー、オォォォォォーーーー!!!!!」


 仲間達も握りこぶしを高らかに上げた。


★★★★


 タガーイ国の村人達が集まってきて、俺達を迎えてくれた。


「英雄達が戻った!」


 歓声を上げながら、みんなの温かい拍手が続く。


「ジュビルを倒してくれたおかげで、私達は安心して暮らせるようになりました!」


 1人の村人が涙を浮かべて言った。

 タガーイ国のアサシンから、なんとなく話は聞いていた。

 夜になると不気味なうめき声が、森から聞こえていたと。

 でも、今夜からはうめき声は聞こえなくなるだろう。


「これからは、みなさんが笑顔で暮らせる世界を作ってくださいね」


 みんなの歓声と拍手が、さらに大きくなった。


★★★★


 村人達との交流が始まり、ありったけの酒と次々と運ばれてくる、決して豪華とは言えないが、いま出来る心からの料理もてなしだった。

 タクマにいが酒を手に取り、盛大に乾杯の音頭をとる。


「タガーイ国のみなさん、俺達のためにこのようなうたげを開いて頂きまして、本当に有り難う御座います」


「亡くなった者達に勝利の報告を届けるため、みなさんも大きな声でお願い致します。では、俺達の勝利に! 乾杯!」


 村人達の声が重なり、祝福の瞬間が広がる。

 えんが進むにつれ、村人達の歌声や笑い声がひびき渡り、戦いの疲れを忘れさせてくれる。

 俺達は共に食事を楽しみ、思い出話で盛り上がっている。


「そう言えば、あの時の戦いはすごかったな!」


 タクマにいはエールを飲み、笑いながら言った。


「俺もだ。みんなの力があったからこそ、ジュビルの野望やぼうを撃破することが出来たんだ」


 アサシン連合部隊や生き残った仲間を見て、俺は力強く握りこぶしそらに突き上げた。


「うぅぅぅーーーー、オォォォォォーーーー!!!!!」


 アサシン連合部隊や生き残った仲間と村人達も交じり、全員で握りこぶしそらに上げた。

 その時、各国の王達の馬車が到着したようだ。

 王達の護衛をしていたのであろう、ウエルス国、戦士部隊カイン隊長が王達を先導していた。

 以前、戦って彼の強さを分かっている俺には、納得が出来る人選だし、戦場に彼が居なかったことに納得が出来た。


 タガーイ国のデル国王が前に出てきて、静かに語り始めた。


★★★★


「みんな、聞け! みんなの勇気と力がルノーン界に希望をもたらした。これからも、この平和を守っていくために、共に手を取り合い助け合っていこうぞ!」


 デル国王の言葉に、俺達は深く頷く。


 各国の王達も平和な世界を守るため、これからも仲間達とともに立ち向かう覚悟が固まったようだ。

 各国の王達は、タガーイ城に向うためにカイン隊長の先導で、馬車に乗り込んでいる。

 最後に馬車に乗ろうとしていた王から、俺は声を掛けられた。


「おい、エリーの息子、良くやったな! また、焼きイモを食べさせてくれよな」


 一瞬、分からなかったが、俺に声を掛けた王は、トラビスの山頂で一緒に焼きイモを食べた農夫の男・・・・・・いや、トラビスの国王だった。


「えぇーぇ! 貴方が、イヤ、貴方様がトラビス国王だったのですね」


 ラシン王は頷き、優しい目を向けてから、俺達全員が見えるように手を上げてから馬車に乗り、城へ向かっていった。


 普段から酒を飲まない俺は、少し酔っていたが、一気に酔いが覚めた。

(※ルノーン界の飲酒は16才からなのでバートの飲酒はOKなのです。勿論もちろん! 現代日本では未成年の飲酒はダメですよ。お酒は20才を過ぎてからですよ!※)


★★★★


 夜も更け、星空が広がる中、アサシン連合部隊はき火を囲んで盛り上がっている。

 火のらめく光が、仲間達の顔を柔らかく照らしている。

 俺は、このルノーン界に強制的きょうせいてきに戻されてから、ずっと考えていたことをタクマにいに話しをする覚悟が決まった。


「タクマにい、少しいいかな」


「なんだ~よーバート。お前も飲めよ~」


 タクマにいは、かなり酔っているようだ。


(アサシン連合部隊の隊長としての重荷から、解放されたからな。仕方ないかな……笑)


「戦いが終わったばかりで悪いが、相談したいことがあるんだ。かなり酔っているみたいだし、明日の方がいいかな」


 微笑みながらタクマにいに尋ねた。


「バカ野郎、可愛かわい弟弟子おとうとでしからの相談を受けない兄弟子あにでしがいるかー」


 あれだけ酔っていた目が、一瞬でキリッとした普段の目になった。


 俺達は2人で宴を抜け出すと、村外れの大きな木に腰を下ろした。


★★★★


「どうした? バート」


「タクマにい、俺が何故、今ここに居るか分かるかい? 俺は強制的きょうせいてきにルノーン界に戻されたんだよ。理由はタクマ兄にも話せないが・・・・」


 俺は、ある決意をタクマにいに告げた。

 かなり考えていたようだが、タクマにいも俺が何をしたいのか理解をしたようで、協力してくれることになった。


「フェリス姫、お前の姉はどうするのだ?」


 タクマにいから真剣な表情で訪ねられたのだが、俺の答えは、もう決まっていたんだ。


「タクマにい、俺の本当の兄になってくれ! 姉さんを頼みます。タクマ兄さん」


「……分かったよ。無茶苦茶むちゃくちゃなことばかりをする弟よ。だが、アサシンとして、最後のケジメはちゃんと済ませるのだぞ」


「はい、兄さん。宜しくお願いします」


 ジュビルとの戦いより、俺にとっては困難なことに挑戦を始める。



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