彼女と並んでベンチに座っていると、心に
押し止めるでも無く、無理に絞り出すでも無く、水が低きに導かれるようにして言葉は自然に口から流れ出ていた。
僕がどんな言葉を発しようとも和泉さんは否定することなんて無かった。
相槌を打ちながら僕の話に耳を傾けていて、僕が言葉に詰まったと時も続きを促すようなことなんて無かった。
興味本位に話を聞き出すようなことも無かった。
淡々と静やかに、僕の言葉に耳を傾けてくれていた。
「もう、死にたい……」と、吐き捨てるようにして打ち明けた時もそうだった。
切れ長の目をやや大きく見開いて、悲しげに頷く程度だった。
その素っ気なさは目の前に拡がる夜の海のようであって、拒まれないことは僕の心に言いようの無い安らぎをもたらすものだった。
今日だって、死にたいという気持ちを延々と弄び続けていた。
この世に留まる資格など持ち合わせておらず、心を騒がせるものなんて必要無いと思っていた。
夜の海のような静謐に心を委ねたいとぼんやり願っていた。
桜舞う公園で紀野さんと出くわしたのは、全く以て事故のようなものだった。
彼女が僕に構ったことは、ほんの気紛れだったに違いない。
思いも寄らず出くわした根暗なクラスメイトを気紛れに
そう考えると気持ちは一段と沈み行くようだった。
だから、一刻も早く和泉さんと逢いたかったのだ。