「ドーン!」
地を揺るがすような轟音が響き来る。
それは、巨大な骸骨と黒い巨人とが同時に突き出した腕同士が激突する音だった。
青白い光をほんのり放つ骨の腕と黒々とぬらつく太い腕。
その二つが軋みを上げんばかりにガッチリと組み合っていた。
それは一進一退といった様であり、どちらも引かんばかりの迫力に満ちた組み合いだった。
けれども。
時間を経るにつれ暗黒の巨人がジワジワと優勢となりつつあった。
骸骨はゆっくりながらも押されつつあったのだ。
『死体だと押し負けちゃうかも知れないのよね』
つい先程に耳にした、紀野さんの言葉が脳裏を過ぎる。
同じぐらいの図体だとしても、肉が付いていない骨だけの身体なら、その重さは随分と劣ってしまうのだろう。
それぞれの力が同じだとしても、身体が軽ければ押し負けてしまうのかもしれない。
ハラハラしつつ事の推移を見守っているうちに、事態は更に悪化してしまう。
唐突に「ガギィィン!」と鈍い音が響き来た。
ビクリと身体を震わせた僕の目に飛び込んできたのは、左の腕をすっかり失ってしまった骸骨の姿だった。
長さも大きさもまちまちの何本もの骨が地面の上にバラバラと散乱しつつあった。
黒い巨人は、その右腕を急に引きへと転じたらしい。
そのため、骸骨の左腕は肩から引き千切られてしまったのだろう。
未だ組み合っていた右の手を振り解き、やや後ろへと飛び退く骸骨。
地面に散らばっていた数多の骨はフワリと浮き上がって骸骨の傍へと漂い行く。
それから次々と骸骨の肩口へと組み合わさって、程無いうちに腕の姿を取り戻す。
動きを確かめるように、その指を握り締めたり伸ばしたりした骸骨は、再び黒い巨人へと歩み迫る。
けれども。
唐突にその頭部、つまり髑髏は弾かれるように吹き飛んでしまったのだ。
唖然として見遣る僕の周りに
唐突の冷たさに、思わず身を
一体何事なんだと怯えめいた思いを抱きながら、向かい立つ二つの巨体を見遣る。
黒い巨人の頭部から水の塊が猛然と迸り出る様が目に飛び込んで来る。
それはまさに『水撃』と言わんばかりの有様だった。
迸り出た水撃は、つい先程に元の姿に戻ったばかりの骸骨の左腕へと命中する。
そして、長短様々の骨をバラバラと四散させてしまった。
黒い巨人の猛攻は水撃に留まらなかった。
その右腕を真横に掲げたかと思うと、一気呵成に振り回して来たのだ。
振り回された腕は見る見る間にその長さを増す。
腕がグングンと伸びゆく様は、まるで鞭のようにも見えてしまった。
鞭のようなその腕は、頭と左腕を失った骸骨の側面へ痛烈に命中する。
強かに打ち据えられた骸骨は、吹き飛ばされたようにして横倒しとなってしまう。