『王城の建国記念パーティには、緑に映えて愛らしいコーラルピンクのドレスを着て行くのよ! パーティーに疲れて、庭園の生け垣の影に忍んでいる王子様に出会えちゃうんだから。それで、ここからが重要よ! 彼に話すときは、礼儀なんて気にしちゃだめ! 気取らずに、とっても親しく接したら良いわ』
10歳で参加した建国記念パーティでは、渋る両親を説得して男性用の儀礼衣装を着用した。色もひっそり目立たぬアイビーブリーンを選んだ。だって、男爵家の一人娘が無防備に着飾ってパーティ会場に顔を出したら、爵位を継げない三男四男や、訳あり令息なんかが貴族位目当てで群がってくるから。そんなことになったら、打算だらけの婚約者をうっかり掴まされて、幸せとは程遠い人生を送ることになりかねない。
けれど、それだけ思い切った対策をしていても、
「あなたは贅沢ね。貴族位底辺に位置する男爵家のわたしでは、権力財力にものを言わされたら抗うことなどできないのよ。わたしが逃げるのは身を護るため。けどあなたのは、疲れるから、面倒だからの我儘でしかないのよ。しゃんとしなさい!」
一喝してしまった。そしたら、何故か王子の頬がコーラルピンクに色付いていた。思わぬところで、夢の語った色縛りが達成されてしまった。――なんだか気分が悪かった。