『ねぇ!? ちゃんと攻略してくれないと困るんだけど? あなたの人生なんて、ゲーム開始までのあたしの下準備なのよ?
ついに始まるのよ、王立貴族学院の入学式から。あたしの最推し! 宰相の息子とやっと会えるわ。隠しキャラの隣国の王子も捨てがたいけど、出現条件が面倒なのよね。あぁ、そうだ。あなた娼館の前に張り込んで、フードで顔を隠した少年を捕まえてよ! 絶対よ』
14歳のとき、わたしは学園入学と同時に騎士団への仮入隊が決まった。真っ先に取り組んだのは、夢の声を逆手にとった行動だ。騎士団の立場を活用して、娼館の裏家業の摘発を先導した。唯一の女騎士であるわたしが女性の立場を護りたいと言えば、説得力は大きかったし、何より騎士団長とその令息からの力添えもあったから。
その甲斐あって、聖女誘拐の密命を帯びた隣国の王子を見付け、国外追放とすることができた!
捕縛や事件の後処理で、すっかり遅れて参加することになった入学式では、堅苦しい新入生代表挨拶をしている宰相令息の晴れの場を騒がせてしまった。お陰で、夢の彼女が入れ込んでいる彼には、すっかり嫌われちゃったけどね。
「この王国を導く陛下のお力になれた誉を盾に、国を守る宰相様……の息子である貴方、様の……浴びるべき注目を攫ってしまったこと、申し開きもございませんわ。全ては、大きすぎる騒ぎを鎮める一助を担わなければ
人気のない廊下の片隅で、ご友人らを従えてわたしに淑女としての立場をご忠告なさろうとした宰相令息様には、こうしてちゃんとお詫び申し上げた。騎士団長令息サンディス様が、いつの間にか距離を置いた柱の陰にいらしたのには、さすがにギョッとしたけど。身体をくの字に折り曲げて震えながら「それは、謝ったとはいえんぞ」なんて、涙目で呟いていらしたっけ。それにしても、どうして彼とはこんなにタイミングよく出くわすのか……?