『女装して家まできてよ』
SNSのメッセージを見ると、前回圧倒された大男ことオオグロチャンから屈辱的な要求がきていることに気づいた。
「お、おぼっちゃまどうされたのですか!?」
光輝が怒りと恐怖で震えていると、執事の千垣があまりに常軌を逸した主人の様子に声をあげた。
「これを見ろ」
「こ、これは!?」
光輝のスマホの画面に表示されたメッセージを見て、千垣は驚愕の声を上げる。
「僕は今フィジカル特化の変態野郎から脅迫を受けている」
「おぼちゃま、すぐに訴えるべきです!」
「ダメだ。奴は裁判所の召喚状が来た途端僕の土下座写真や女装写真をネットにばら撒くと言っている」
「さすれば、ネットによる被害を事前に防ぐと言われる辣腕弁護士もいると言われている稀崎家に頼られるしかないのでは」
進退極まる光輝の発言に、危機感を強めた千垣は主人から反感を買うことで唯一打開できるであろう手段を彼に提示する。
「バカを言うな! 今更あんなことをした奴に頼るわけがないだろうが! 誰のせいで僕が今こんな惨めな目に遭っていると思っているんだ!」
「で、ですが……!」
「断る! 断じて頭を下げるなどという選択肢は存在しない! それこそ僕を屈服させようとしている秋也の思う壺だからな!」
「ぼちゃま……」
宥めるために千垣が声を上げるが、逆に光輝の反発心を強める結果に終わり、千垣の声が途絶える。
「ふん! 変態ごとき僕が逆に手玉にとってやるわ! 所詮矮小な脳みそしか持たない猿にすぎないからな!」
そんな執事の憂いなど歯牙にもかけず、恵那と秋也への反発心を糧にして光輝はどんどんと増長していく。
「ここから見事あの変態を手懐けて、クソ生意気な秋也を始末させてやる! お前はそこでいらない心配でもしていろ!」
ーーー
〜2時間後〜
「あっ♡ あっ♡」
オオグロチャンを手懐けるはずだった光輝は、逆に異様に上手いオオグロチャンのキスによって手懐けられていた。