禁断の恋。それは、「おねショタ」……。いや、歳の差なんて。いやいやいや、そもそも私はだらしない男なんて、これっぽっちも興味ないんだからね。もう、やめてよね。
「ほら、バカな事いってないで、冒険者ギルドに行くわよ」
「んー? おねショタに過剰反応する聖女ってなんか気になるなあ」
元日本人だってバレちゃったかな?
露天商の続く王都のメインストリートを、西に向かって一〇分程歩いたところで、王都のセンター冒険者ギルドに到着した。
私がイメージしていたギルドとはちょっと違い、ここで冒険者に関する全ての事務処理が整う、まさにセンター施設。
中に入ると広いロビーがあった。入口付近から中程まで、左手には食堂、右手にはソファなどが並べられていて、複数の冒険者パーティたちが酒を酌み交わしつつ陽気に語り合っていた。
「冒険者登録をしたいのだけれど……」
ギルドの受付嬢に話かけた。
「はい〜、新人さんですね〜。あちらの別室で適性検査を受けてきてくださいね〜」
検査結果を記録する、紙を手渡せれて、私と勇者としあきは、検査室へと向かった。
――検査室にて
「では、受付で受け取った紙に、名前を書いてください。出来ましたら、あちらにある検査装置の番号順に検査を受けていってください」
一番から十番まで番号が付けられている装置が並んでいる……。運転免許センターかっ!
一番……視力検査(ぇ?)
二番……聴力検査(えぇ?)
三番……血液検査(うん、魔力量を測るのね)
四番……魔法エレメントに対する耐性検査
「私は、聖女なのだけれど、全てのエレメントに耐性があるみたいですね。勇者としあきは……」
火魔法……、過剰反応した肌が赤くなる。
水魔法……、過剰反応した肌が水ぶくれに。
土魔法……、まったく反応なし、ただの土のようだ。
風魔法……、過剰反応した身体が乾燥してカサカサに。
光魔法……、聖なる光に耐えきれず、嘔吐。
五番……身体能力測定
筋力、瞬発力、持久力など、基本的な身体能力を測る。異世界なので、ただの握力計ではなく、魔力と連動した測定器や、特定の魔物を模したダミーへの攻撃などで測るも、勇者としあきの測定結果は……。
「なんで俺の秘めたる力が測れないんだ!」
「見た目通りじゃん……」
六番……精神力・意志力測定
幻覚を見せたり、精神攻撃を模したりして、どれだけ冷静を保てるか、どれだけ強い意志を持っているかを測る。
幻覚を目にした勇者としあきは、「これはあのラノベの展開!」と、メタ発言をしながらも全く耐えられなかった。「精神力は俺、自信あるんだけどな…」と言い訳。まさにビッグマウス大魔王。
「ネットで鍛えられたメンタルは、異世界では通用しないのね……」
七番……知識・経験値測定(あるいは適応力)
異世界の常識に関する質問、地図の読解、危険な魔物への対処法の知識など。
「うん、テンプレート通り」
勇者としあき、ご満悦である。だが、いざ実践的な質問になると的外れな答えをしたり、ゲーム知識で乗り切ろうとして失敗したりやっぱりグダグダ。
「俺、MMORPGやり込み勢だから大丈夫!」
「頭でっかち……」
八番……魅力・カリスマ性測定
他者からの信頼度、人を惹きつける力、リーダーシップの適性など。勇者としての「人望」を測る。
「ハーレム勇者だから当然だろ!」と豪語するも、周囲の魔物ダミーやNPCからの反応が芳しくない。
「お、おかしいな、モテスキルはあったはずなのに!」
「ねーよ! そんなスキル……。そりゃそうでしょうね……」と納得。そういえば、この男の付与スキルって何なんだろう? まあ分かったところで、また訳解んない上に、説明も不十分なものなんだろうし、おいおい分かるでしょう。
九番……運(ラッキーポイント)測定
さすがに私は、「聖女の風格」持ちなので、ずば抜けた運を持っているようだ。SSS級と判定。一方、勇者としあきは……。ダイスの出目や、ランダムな事象での結果などを計測。
「俺は主人公だから運も最強!」と自信満々だが、最悪の目が出続けたり、何かと不運な結果に。
「ある意味アンラッキーをピンポイントで引ける才能?」
十番……最終総合評価(面談含む)
これまでの結果を踏まえて、ギルドの担当者との最終面談。場合によっては、特別な魔法陣で資質を再確認するなどした結果。
ランク認定:Fランク冒険者
スキル:不明
運:不運に全振り
魔力の適正:全ての属性において適正なし
魅力:皆無
「おい待てよ、おかしいだろ。おれ異世界転移勇者だぞ? 俺を試しているのか?」
「んーおかしいわねえ。なんかしらのスキル付与があるものだと思っていたのだけれど…・・」
あの神様のことだ。また、これにも裏というか隠された何かがあるに違いない。
「しばらくは強そうな魔物は相手にせずに、ザコクエストで路銀を稼ぐのがいいかもね」
「ぐぬぬ……。わざわざ転移させておいて、この扱いかよ……」
「……!」
「まてよ? まてまて、いやいや、まてよ? これもセオリー通りじゃないか? 無能扱いされていたが、『実は俺TUEEE』という展開!」
「追放ざまあ キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
「……えぇ(困惑)」
「なあ、俺、追放されるのか? (わくわく)」
「勘弁して……」
なんなのこの男。ただのネットジャンキーかと思っていたけど、異世界テンプレート小説も嗜んでいたの?
―― つづく ――