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第二章 高架下の男

翌日。蒼は、言葉通り午後2時13分、町の高架下に向かった。

何も起きなければ、それでいい。ただの偶然。だが、彼の胸の中では、昨日読んだ本の不気味な文面が、釘のように刺さって離れなかった。

午後2時10分。小雨が降り始める。

2時13分。――静寂。

そして、電車の轟音に紛れて、ドンッという音が響いた。

高架の柱のすぐ下、地面に何かが倒れている。人だ。若い男。ぐったりと、目を見開いたまま動かない。群衆の中で、蒼だけが硬直していた。

「……本当に、書かれていた通りに――」

警察の規制線の外、蒼はひとりその場を離れた。その夜、彼は再び『透明な真実』のページを開いた。

次のページには、こう記されていた。

「Yの死によって、町の記憶は再び動き出す。次に消えるのは、S。彼女は過去を見た。」

S――高野紗英のイニシャル。


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