僕の人生はヤンデレ女に支配されかけてきたと言っても過言ではありません。早くに両親を亡くし、どこぞのヤンデレ女に粘着されてきたせいで友人関係も十分に築くことはできませんでした。それゆえ僕は、自身の魂を磨き上げることに注力することが出来たとも言えますが、それでも僕は未熟な人間、一人ぼっちは寂しかったです。
そんな僕にとって良くも悪くも唯一ある太い繫がりは由良江なのです。
だからこそ、望む望まざるに関わらず、僕は由良江のことを誰よりも見てきています。
「なんの冗談か知りませんが、貴女が奴隷になるなんて似合わな過ぎて嘔吐しそうですよ」
そんな僕が姿形に声色を変えた程度で由良江を見間違うわけがないでしょう。
すると「あはははははは」と高笑いと共に黒髪の少女が由良江へと変化していきました。
「流石ね新悟、あたしを愛するあんたなら見抜いてくれると思ったわ。どう?あんたって和装好きでしょう、和服の美少女を見てますます愛が大きくなったんじゃないかしら?」
「愛してませんよ。僕の瞳は魂を捉えられるだけです。
ところでここは何ですか?」
あたりを見回すと円状の形をした場所でした。漫画やゲームででてくる闘技場、コロッセウムのような印象を受ける場所です。
殺風景なのに静謐な美しさを携えていますが、やたらと目立つところに僕と由良江の10倍スケール黄金像がデカデカと光っているのが品性のなさを強調していますね。
「あんたってこういう闘技場的な場所好きだったでしょ。だからちょっとあたしの好みを入れて創ってみたのよ。ちなみにあたし達の結婚式もできるようになっているわ」
「どこに力入れてるんですか…」
由良江は周りを歩き始めました。コツコツと言う足音がやけに身体に響いてきます。
「あたしは知ってるわ、あんたは元の世界、そしてあたしが巡ってきた異世界全てをあわせても一番精神力が強い。何事にも屈することが大っ嫌いな存在だって」
「お褒めに与り光栄ですよ」
「そんな頑固なあんたがあたしを愛するためにこの世界を創ったのよ」
僕が由良江の愛するために創った世界…ですか。
「……そうですかご苦労なことですね。それより質問があります、貴女の創造のスキルは…」
「違う違う、新悟との愛の結晶ね。スキル名はちゃんと言ってちょうだい」
無視して何事もなかったように言を続けます。
「貴女のスキルは『創造』姿形を変えられる類のものじゃないはずでしょう。なのにどうして違う少女の姿になんか」
にやりと微笑み、口元に指をそえてきました。
「新悟、そんなスケールの小さい考え方じゃダメよ。言ったでしょう、あたしのスキル創造『新悟との愛の結晶』は生命以外なら何でも創造できる力……ねぇ新悟」
そして由良江の美しい顔が悪戯っぽく歪みます。
「スキルに命があると思う?」
「ま…まさか……」
「そう、あたしはスキルでスキルを創り出すことが出来るのよ!!変身だろうが瞬間移動だろうが思うがまま、スキルを無効化できるスキルをさらに無効化するスキルも創れる!!これが何を意味するのか分かるかしら?」
………僕の唇はゆっくりと動いていきました。
「全知…全能」
「イグザクトリー」
なんと言うことです……ラスボスでもそこまで欲張りな真似はしませんよ……本当に大和撫子的な控えめな淑やかさがない女です。
「ま、全知全能って言ってもあんたの心を無理やり手に入れる力なんてものは創れないし、仮に創れたとしてもそんな方法であんたの心を手に入れても意味はないのよね。
だから全身全霊で全知全能の全身美麗なあたしを感じてもらうことにしたわ」
僕の全身に力が入りました。360度全てに気を配り、これから何が起こっても対応できるように気合を入れます。
「いったい何をする気ですか?」
「そんな気を張らないでいいわよ。気楽気楽に行きなさい…それでは」
由良江が腕を天に掲げ、指を鳴らしました。すると由良江の胸からピンク色の光線が発射されます。それは僕の胸を貫きました。
「何故指パッチンを……」
「気分。
じゃ、スタート」
その宣言と共に僕の脳内にマグマのように熱く、そして大宇宙のように広大できりのない情報が流れ込んできました……喚く余裕もありません……くっ……この………圧倒的すぎる情報は……イメージは………
「新悟、まずはジャブ程度だけどあんたはこれから720時間あたしとのイチャラブ生活のイメージを見てもらうわ。あたしの良さを存分に堪能し、あたしのことを好きになりなさい」
こ……の……ストロングスタイルのヤンデレが………