『新悟~~~どう?今日のあたしも可愛い??』
『うわぁっ驚いたぁ……あっ、ごめん抱き着いちゃってたわね』
『このワンちゃん可愛い~~えっ、あたしの方が可愛い?もうっ、分かり切ってること言わないでよ』
『新悟……あたしも初めてだから…痛くしないでね』
ぐ………なんですか………これは………多種多様なシチュエーションで由良江とラブラブするイメージが脳内を覆いつくしています………と言うかよくもまぁこれだけの妄想をしてきたものですねあいつは………
『ごめんね、新悟……こんなあたしで……』
屈してはいけません……こんなイメージに僕は絶対に負けません。こんな歪んだ愛に屈してはいけないの「やっぱりドM?」……なんですか?今の声は?由良江とはまるで違う……
「いーじゃん、イチャラブ。世界一可愛い子と好き放題できるんだから思う存分欲望を解放しちゃえばいいじゃん」
「貴女……メーちゃん?」
「よっす、オラメーちゃん。久しぶりだね」
四枚の翼でクルリクルリと回りながら、ポテトチップスを食べています。何と言う行儀の悪さなんでしょうか。
「なんで貴女はこんなところにいるんですか!!??ここって僕の脳内ですよね」
「ちょっと違う。ここはあんたの魂の中、だからほら、今はイチャラブイメージが見えなくなってるでしょう」
言われてみれば………夥しいまでの由良江の愛が感じなくなっています。
「あの子のスキルは生命、つまり魂には干渉できないみたいねぇ。いやぁ助かった。魂にまで干渉されていたらオラはドM男子とドS乙女の見たくもないイチャラブをずぅっと見せられることになるんだから」
「ちょっと待ってください。何がどうなっているんですか?ここが僕の魂の中?」
「そう。オラが勝手に住んでいるところ。そこに君を招待したの」
「勝手に住んでる?」
「ほら。この前死にかけた時オラとあったでしょ。あんとき面白そうだからちょっとあんたの魂にお邪魔することにしたんだ」
「……勝手なことしてたんですね」
「神様ってのは勝手なもんだよ。にしても、あんたの魂の中にいたら面白い体験ができるとばかり思っていたけど、オラの直感大正解!!まさかヤバい女がヤバい女神にクラスアップするとは思わなかった」
空中に浮きながら抱腹絶倒の大笑いをしだしました。スーパーボールのように魂の空間を縦横無尽に暴れまわります。この女神変わってませんね…
「で?これからどうするつもり新悟?」
「どうするもこうするもありません。由良江をお説教して元の世界に戻るんです」
「そいつは無理でしょぉ。オラが見たところ、いや、誰が見ても由良江ちゃんが新悟を手放すとは思えないよ。ここは力づくでも一旦逃げて体制を整える方がいいと思うね」
「確かにそれはそうですが……でもどうやって逃げるって言うんですか?力の差は分子一つと象以上の差がありますよ」
「新悟さぁ…何のためにオラが顔を出したと思ってるの?」
メーちゃんは僕の手のひらを握り締めました。ドクンドクンと身体が脈打ちます。
「オラの力を貸してあげる。そうすれば逃げることくらいできると思うよ」
「そのことなら以前お断りしたでしょう。僕の意思は変わりません」
「頑固だねぇ。でもあの時とは状況が違うよ。
なにせ、今度のお相手は全知全能にも等しい力を持っているヤンデレちゃん。オラ的には力なきものが力あるものをねじ伏せるって展開は好きだけど、残念ながら現実はそう上手くはいかない」
力がない…確かに僕は無力ですね……あの絶対的な力を得た由良江と比べればその差は歴然です……そして力を持った由良江がこのまま暴走を続ければ……あの歪みはきっと取り返しのつかないレベルになる。
「女神相手に女神の力を借りることをオラは不平等とは思わないね」
それにもしかしたら…僕は由良江のことを…
「それもそうですね…」
「あらぁ?もうちょっと反対すると思ったのに素直になったねぇ。ちょっとは成長したの?」
「状況が状況ですからね。ご助力、ありがたく受け取りますよ。ただ」
「オラ、ゾクゾクすっぞ」
僕の言葉を遮るようにメーちゃんは笑いました。
「オラは新悟の魂にずっといたんだから、気持ちは分かるって。
さ、そうと決まれば君の譲れない意思を貫きにいこっか」
「…ありがとうございます」
僕の譲れない意思……由良江に満ち満ちた人生を送ってきた僕の生き方の芯となってしまった一つ。
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「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「あら?まだ、イチャラブタイムは終わってないはずなのに………」
「はぁはぁはぁはぁはぁ………どうやら抜け出せたようですね」
「嘘でしょあんた……意思の力であたしのイチャラブビームから抜け出したって言うの?」
あの技ってイチャラブビームって名前なんですか、そのまんまのネーミングですね。
僕は息を整えて、由良江を真っすぐ見つめました。
「由良江、僕の人生全部をかけて貴女の歪みを正してあげますよ!」
由良江は少しだけ驚いたように目を大きくした後に、ゆっくりと猟奇的と言えるくらいに楽し気な笑顔になりました。
「さっすが、あたしの愛する人。一筋縄じゃいかないのね」