目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第14話

「……ごめんハルタ」

「え? 何謝ってるの? アキト」

「ホントは一生言わないつもりだったんだけど……ボク……ハルタのことが好きなんだ。ハルタがボクのことを好きになってほしいって願ったんだ」

「え? それはオレ、知ってるし、オレ、アキトのこと好きだぞ」


「もう、バカハル! そうじゃないって」

「え? どういうこと?」

「ホントごめん……気持ち悪いよね」

「あ!」

 ちょっと間があった。

「……そうかあ。ああ、そうか、はは」

 さすがのハルタ(体はアキトだけど)も気付いてちょっと困った顔になった。

「もう友だちじゃいられないよね?」

 アキトがちょっとうつむき加減で聞いた。

「え? そんなことあるわけないだろ……」


「そんなのさ、最近じゃ普通でしょ? アキトもなんで謝ってるのよ」

 ナツミが割って入った。

「あ、ああ、うん……」


「あ! 学校でも習ったよな。なんて言うんだっけ?」

 ハルタが声を上げた。

「LGBTQでしょ。でもさ、アキトはアキトだからね」


 また少し間があって、ハルタが言った。

「あ、うん。そうだよな。オレ、アキトなら付き合ってもいいかも」

「もう! バカハルはホント、デリカシーないなあ」

「え? いやあの……うそじゃないんだけど……」


「それに、さっき私のこと好きって言ったのはどうしたの?」

「そうだけどさ。じゃあナツミ、オレと付き合ってくれるの?」

「え? それはまあ、お友だちなら」

「それじゃあ今と変わんないじゃん」

「いいじゃないそれで」


「はは。二人ともありがと。そうだね。ボクも、お友だちならナツミと付き合ってもいいかな」

 アキトは二人の様子を見てほっとしていた。


「もう、アキトもデリカシーないなあ。私だってアキトのこと、本気で好きなのに」

「もう、オレがへこむこと言うなよ、ナツミ」 

「言うよ。だってこうなったら私、ハルがライバルってことじゃん」

「えええ? それじゃあオレはアキトがライバル?」

「それならボクはナツミがライバルになるけど……あっ!」

 アキトが何かをひらめいた。


「どうしたの? アキト」

「神様の意図がわかったよ」

「どういうことだよ、アキト」

「ボクらの願い、かなってるみたいに見えるんだ。体の入れ替わりで」

 アキトが説明を始めた(体はナツミだけど)。


「まずさ、ハルタがボクに入ってるでしょ。で、ナツミはハルタに入って、ボクがナツミに入ってる。ということは、三人が一方通行の片思いだったはずなのに、見た目では全部が両想いみたいになってるんだ」

「うう。頭の悪いオレにはよくわからない……」

「ボクに入ってる今のハルタの視点から考えてみて。ボクの今の体はナツミで、好きなのはハルタだから、横から見ると、見た目はナツミがハルタを好きで、中身はボクがナツミを好きって構図になってるんだ」

「あ、確かに」


「で、ナツミはボクのことが……ホントに好きなの?」

「もう、何回も言わせないでよ」

「あ、ごめん。信じられなくてさ。うれしいけど……ごめん」

「もう、こんなとこで私のこときっちり振らないでよ」

「……ごめん」

「はは、俺にも勝ち目があるかな」

 ハルタ(体はアキトだけど)が微笑んだ。

「あ、それはないと思う。今のアキトの体のままならともかく。ああ、それでもやっぱりないかな」

 ナツミは冷たく言い放った。

「なんだよナツミ、それはないだろ」


「はは、話の続きね。ナツミはボクが好きってことは、今のボクの体に入ってるのはハルタだから、ここでもハルタの願いがかなってる。で、ナツミはボクの体に入ってるから、ボクの願いもかなってる」

「なんかすごいな」

「そういう感じでさ、入れ替わりによってボクらの願いが全部、二重にかなってるように見えるんだ」

「なるほどね。でも、実際はぜんぜんかなってないけどね」

 ナツミが(体はハルタだけど)ちょっとあきれた声で言った。


「そうなんだよなあ」

 アキトが難しい顔になった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?