入れ替わりの理由はわかったかもしれないけど、どちらにしても願掛け石のキツネは火曜日まで出てこない。仕方なく三人は入れ替わった体のままで週末を過ごすことになった。
土曜の夜は、家族が外出中のアキトの家で久々のお泊り会を開くことにした。そうすれば、ハルタとナツミの家族にも怪しまれないで済む。
アキト(体はナツミなので)は入浴に困ったけど、目隠ししてナツミ(体はハルタだけど)が体を洗うことで解決した。
三人は昔話で盛り上がって夜更かししたが、ぐっすり眠りに付いた。
「もうちょっとハルタの体で遊んじゃうぞ」
ナツミ(体はハルタだけど)は日曜の朝、寝坊したハルタ(体はアキトだけど)を揺すり、ニヤリとしながらそう言った。
「うーん……ナツミ。オレの体……おもちゃじゃないからな」
目をこすりながらハルタが起き上がった。
「ボクはナツミの体、違和感しかないんだけど」
アキトは二日目の朝にまだ困惑気味だ。
「あ、そうだ、アキト。きのうは聞けなかったんだけどさ……」
ハルタはけっこう寝覚めはいい。
「ああ、ハルタが聞きたいことはわかるよ」
「え?」
「ボク、今はナツミの体だけど、女の子になりたいってわけじゃないから。自分でもさ、なんでハルタを好きになっちゃったか、わかんないんだ。友情だと思ってたんだけど……やっぱりちょっと違うんだ」
「でもオレなんか好きになるなんてさ。オレ、バカだし、なんの取り柄もないしさ」
「……人を好きになるのに理由っているの?」
「あ、ああ、うん。確かにそうだよな。ごめん。オレだって、なんでこんな怖い女子、好きになっちゃったんだか」
そう言ってハルタはアキト(体はナツミなので)を見てから自分の体(中身はナツミなので)を見た。
「ふーん、ハ・ル・タ・くん。そういうこと言っていいんだね」
「あ、言いません。だから、どうかオレのこと、好きになってください」
「やだ。バカハルじゃなくて、私はアキトが好きなの!」
「はは、やっぱり堂々巡りだね。でもさ、しばらくはこのままでもいいかな。ボクたち、幼なじみだしね」
「そうだな」
「うん」
「あ、このままってのは体のことじゃないよ。その……」
「わかってるって」
「当たり前でしょ。あ、そうだハル。私、この体でバッティングセンター行きたいんだけど」
ナツミは入れ替わりを楽しむ余裕が出てきたようだ。
「ええ? オレ、筋肉痛になるのやだよ。しばらく運動してなかったし」
「筋肉痛になるの、私でしょ?」
「まあそうだけど……」
「男子の体で一度でいいからやってみたかったんだから」
「しょうがないなあ。きょうはやることないし、じゃあみんなで行くか」
ハルタ(体はアキトだけど)も乗り気になった。
「はは。ボクも筋肉痛にしないでよ。ハルタが全力でやったら大変なことになりそう」
「わかったよ」