目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第21話

 よし、アラはミュラに任せて、俺達はメイン料理開始だ。


「続き 始める」


「うっス!」


 まず材料の準備だ。

 赤色から緑色へと逆に変化して熟すミニトマトを10個、ミカンの様に皮をめくって取り出したニンニクを1欠、星の形をしたアサリを5個、鯛の切り身を人数分の3切れにする。


 鯛の切り身に塩をふって、5分くらい置いておく。

 置いている間にニンニクはみじん切りにして、ミニトマトは半分に切っておく。


 フライパンに油をひいて熱して、鯛を皮目から中火で焼く。

 皮が焼けたら裏返して、両面を焼く。

 鯛全体が焼けたら弱火にして、ニンニクを加えてまた焼く。

 ニンニクの焼けた香りが出てきたら、ミニトマト、アサリ、水を100cc、酒を大さじ2の量を加えて中火にする。

 ふつふつとしてきたら、蓋をして弱火で5分ほど蒸す。

 最後は塩、こしょうで味を整えれば……。


「アクアパッツア 完成」


 本当は、この上にイタリアンパセリを散らせた方が良いんだが……この世界にイタリアなんてあるわけが無い。

 まぁ探せばよく似たものは見つかるかもしれなかったが、時間を考えて今回は無しという事で。


「あくあぱっつあ? わ~すごい! こんなの、みたことない!」


「ん~……いい匂いっスね~」


 出来た物を器の中に入れてっと……。


「これで よし。持って 行って」


「うん!」


 ミュラが器を手に取り、席へと駆け出す。


「……」


 一方コヨミは器を手に、アクアパッツアをジッと見つめていた。


「?」


 どうしたんだろう。

 何か問題でもあったのだろうか。


「……この中に、まよねぇずを入れるのはどうっスか?」


「は?」


 一瞬、コヨミが何を言っているのかわからなかった。


「だから、まよねぇずをこの中に入れてみ――」


「却下!」


 出たよ、なんでもかんでもマヨネーズを入れようとする奴。

 俺は味付けなんて、その人の好きにすればいいとは思っている。


「ええ~、絶対に美味しいと思うっスよ?」


「マヨネーズ 元の味 消す! まず そのまま 食べる!」


 だが素の味を確認せず、即座に他の物を入れ味変してしまう奴が大っ嫌いだ。

 料理その物や作った人に対して愚弄していると感じてしまうからだ。


「う~……わかったっスよ……じゃあ、とりあえずサラダにかけるっス」


 これは、今後も目を光らせなければならんな。

 目を離すと全部マヨネーズ味になりかねん。


「あ~ん……もくもく……ん~! おさかな、おいし~!」


「もぐもぐ……うん、魚介類の味とトマトの酸味が合うっスね!」


 2人共、好評の様だな。

 どれ、俺も食うか。


「はむっ……もぐもぐ……」


 うん……貝の味が強すぎず、ミニトマトの酸味と淡泊な味わいの白身とのバランスもうまくいっているな。

 我ながら上出来だ。

 俺達は談笑をしつつ、アクアパッツアを楽しんだ。




「ふ~……おいしかった~。よいしょっと」


 満足そうにミュラが立ち上がり、器を流しへと持って行く。


「そうっスね~」


 コヨミも立ち上がり、流しへと向かった。


「さて、これを洗い終わったら食堂を開けないといけないっスね」


『……食堂を開けるか』


 言ってはなんだが、どうせお客なんて来ない。

 2階に隠れているのも暇なだけ……なら、ある程度動いても問題は無いだろう。


「なあ コヨミさん」


 器を流しに持って行き、器を洗っているコヨミに声をかけた。


「なんっスか?」


「また この中 見て いい?」


 薬の材料が保管されている食料保存庫に視線を向ける。


「そんなに興味があるんっスね。別に良いっスよ。あ、それも洗っておくっス」


「ありがとう」


 器をコヨミに渡し、食料保存庫へと向かった。


「ふふ~ん………………あっしまったっス! コカ、トリ、スー、ホー、オーのエサをあげ忘れてたっス」


 コヨミが急いで器を洗い始めた。

 それ様子を見て、ミュラが挙手をする。


「じゃあ、ミュラがエサあげにいってもい~い? ニワトリさんたちもみたいし」


「あ~じゃあ、お願いするっス。エサは棚の中にあるっスから」


「うん、わかった!」


 ミュラが嬉しそうに裏口から出て行った。

 すると、食堂の入り口からドンドンと扉を叩く音が聞こえて来た。


「「?」」


 俺とコヨミが同時に入り口の方を見る。

 もう一度ドンドンと扉を叩く音と共に、女性の声が聞こえて来た。


「コヨミ~? 居ないのですか~?」


「誰か来たみたいっス」


 コヨミと呼んでいるし、食堂が閉まっているのに扉を叩く。

 これは急ぎの要件かもしれんな。

 俺は急いで食料保存庫の中へ入り、扉を閉めた。


「…………はいはいっス。今開けるっスよ~」


 俺が食料保存庫に入ったのを確認していたのか、少しの間を空けた後にコヨミの声と共にカーテンの開く音がした。


「って、ノルンじゃないっスか」


 食堂からガチャリと入り口が開き、食堂の中に人が入って来た。


「いるじゃないですか……どうして、昼時に食堂を閉めているんです? ここは食事をするところでしょ? サボリですか?」


「サッサボリじゃないっス! こ、こっちにも色々と事情があるっスよ! それより、その姿はどうしたっスか? あちこち、汚れているじゃないっスか」


 別に盗み聞きをしたいわけじゃない。

 けど、ここに居る以上はどうしても2人の会話が聞こえてしまう。


「ああ、これですか? 仕方ないでしょ、ついさっきゴブリン討伐から帰って来たところなんですから」


『……え? ゴブリン……討伐……?』


 女性の言葉に血の気が引く。

 まさかと思いつつ、音を立てない様に静かに食料保存庫の扉を少しだけ開け、隙間から覗き込んだ。


『――っ!?』


 コヨミと話していたのは女性の上半身、馬の下半身、軽装な鎧を身に付けたケンタウロスだった。


『……あ……ああ……』


 俺はそのケンタウロスを見たことがある。

 ウルフカットの白髪、つり目の青い瞳。

 そして……首につけられている剣と弓がクロス状になっているペンダント。


『……間違いない……あの時の……!』


 俺が住んでいた巣を襲い、ミュラを発見した冒険者のケンタウロスだ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?