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第6話 魔王軍



王国の国境を越え、フレイヤたちを乗せた馬車は穏やかな速度で進んでいた。青々とした草原が広がり、遠くには王都の尖塔がかすかに見える。フレイヤは窓際に座り、頬杖をつきながら外の景色を眺めていた。


「ねぇ、ティアちゃん。王都に着いたら最初にどのお菓子屋さんに行こうかしら?」フレイヤは目を輝かせてティアマトに尋ねた。


ティアマトは優雅に微笑み、「主様が以前お気に入りだった『甘味の館』はいかがでしょうか?新作のパフェが評判のようですよ」と答えた。


「それは楽しみね!早く食べたいわ!」フレイヤは嬉しそうに手を叩いた。


一方、ハムちゃんことバハムートは静かに目を閉じ、瞑想しているようだった。彼は普段から寡黙で、その存在感だけで周囲に圧倒的な威厳を放っている。


馬車の先頭では、わんわんことフェンリルが鋭い目で周囲の気配を探っていた。彼は鼻をひくつかせ、何かを感じ取ろうとしている。


「主様、何かがおかしい。周囲が妙に静かすぎる」わんわんは低い声で警戒を促した。


「そう?私は特に何も感じないけど」フレイヤは首をかしげた。


「いや、確かに何かが起きている。普通ならこの辺りで魔王軍の斥候と出くわしてもおかしくないのに」わんわんは険しい表情で遠くを見つめた。


その頃、王国の各地では奇妙な現象が起きていた。これまで猛威を振るっていた魔王軍が、突然戦線を離脱し始めたのだ。各地で戦闘を繰り広げていた魔族兵たちは、まるで見えない恐怖から逃れるかのように、無秩序に撤退していた。


「一体何が起こっているんだ!」王国の騎士団は混乱に陥っていた。指揮官たちは地図を広げ、急変する戦況に頭を抱えていた。


「敵が撤退している?理由がわからない……」


「まさか、フレイヤ様が戻ってこられたのでは?」


「そんな馬鹿な……しかし、この異常な撤退は何か大きな力が働いているに違いない」


兵士たちは不安と期待が入り混じった表情を浮かべていた。しかし、具体的な情報がないままでは行動を起こすこともできず、ただ混乱が広がっていくばかりだった。


一方、魔王軍の陣営でも深刻な混乱が起きていた。魔族兵たちは得体の知れない恐怖に駆られ、魔王の命令さえ無視して逃げ出していた。魔王は激怒し、四天王を呼び集めた。


「何事だ!なぜ我が軍が撤退している!」魔王の声は怒りに震えていた。


四天王の一人、暗黒の剣士ガルザが進み出て答えた。「申し訳ございません、魔王様。兵たちが未知の恐怖を感じ、制御不能の状態に陥っています」


「馬鹿な!我が命令に従わぬ者など許さん!直ちに兵を立て直せ!」


「しかし、彼らは何か強大な存在の接近を本能的に感じ取っているようです。このままでは……」


「黙れ!四天王であるお前たちがいるではないか。残った精鋭たちで敵を迎え撃つのだ」


「御意」四天王たちは深々と頭を下げ、命令に従った。



---


フレイヤたちの馬車は、のどかな風景の中を進んでいた。彼女はティアちゃんとスイーツの話に夢中になっていた。


「ハムちゃんも何か食べたいものある?」フレイヤはハムちゃんに微笑みかけた。


ハムちゃんは静かに目を開け、「主様のお勧めであれば、何でもいただきます」と淡々と答えた。


「ハムちゃんらしいわね。じゃあ、一緒に新作パフェを楽しみましょう」フレイヤは満足げに頷いた。


その時、わんわんが急に立ち上がった。「主様、前方に何かいる。気をつけて」


馬車が止まり、一行が外に出ると、遠くに魔王軍の残党らしき集団が見えた。しかし、彼らは明らかに混乱し、恐怖に満ちた表情でこちらを見ていた。


「な、なんだあいつら……!」魔族兵たちはフレイヤたちを目にすると、一斉に後退し始めた。


「なんだか逃げていくみたいね」フレイヤは首をかしげた。


「主様の存在に恐れをなしているのでしょう」ティアちゃんが静かに言った。


「でも、私何もしてないのに……」フレイヤは不思議そうに呟いた。


その時、遠くから魔王軍の指揮官が叫んでいる声が聞こえた。「戻れ!命令に従え!逃げる者は処罰する!」


しかし、兵たちは命令を無視し、四方八方に散り散りになって逃げていく。


「何が起こっているのかしら」フレイヤはその光景をじっと見つめていた。


わんわんは眉をひそめ、「どうやら本能的な恐怖を感じているようだ。主様の力に反応しているのかもしれない」と推測した。


「でも、私本当に何もしてないのよ?」フレイヤは困惑した表情を浮かべた。


ティアちゃんは微笑んで、「主様の存在そのものが、彼らにとっては圧倒的なものなのでしょう」と言った。


「そういうものかしら……」フレイヤは納得がいかない様子だったが、深く考えるのをやめた。



---


一方、王国軍の前線でも混乱が続いていた。


「敵が撤退している……これはどういうことだ?」


「追撃の命令は出ていない。罠の可能性もある、慎重に行動せよ」


「しかし、この機を逃す手はないのでは?フレイヤ様が戻られた可能性もある」


「それはまだ確認が取れていない。軽率な行動は避けるべきだ」


騎士団内では意見が割れ、指揮系統が乱れ始めていた。


「何としても情報を集めなければ」指揮官たちは焦燥感に駆られていた。



---


魔王は玉座の間で苛立ちを隠せなかった。


「兵たちはどうなっている!四天王は何をしているのだ!」


その時、四天王の一人、炎の魔女レイラが報告に現れた。


「魔王様、敵の正体が判明いたしました。どうやらフレイヤという人間が接近しているようです」


「フレイヤだと?聞いたこともない名だ。何者だ!」


「かつて王国の聖女と呼ばれていた存在のようです。しかし、その力は計り知れないとか」


「ふん、人間ごときが何を。四天王であるお前たちがいれば十分だ。全力で叩き潰せ!」


「承知いたしました」レイラは一礼し、部屋を後にした。



---


フレイヤたちは再び馬車に乗り、王都への道を進んでいた。わんわんは依然として警戒を怠らない。


「わんわん、そんなに心配しなくても大丈夫よ。早くお菓子を食べたいわ」フレイヤは笑顔で言った。


「しかし、主様。敵が近づいている気配がする。何か手を打つべきではないか」


「もし敵が現れたら、その時に考えましょう。それより、どのお菓子を食べるかの方が大事よ」


ハムちゃんは静かに言葉を添えた。「主様のおっしゃる通りです。敵が現れたとしても、我々が対処いたします」


ティアちゃんも微笑みながら頷いた。「主様はどうぞご安心を」


その時、前方の空に黒い影が現れた。それは巨大な飛竜に乗った魔族の軍勢だった。


「やれやれ、また邪魔が入ったわね」フレイヤは肩をすくめた。


「主様、ここは私が」ティアちゃんが一歩前に出た。


「お願いね、ティアちゃん」


ティアマトは美しい竜の姿に変身し、空へと舞い上がった。彼女は圧倒的な力で敵の飛竜隊を次々と撃墜していく。その光景はまさに圧巻で、敵は恐怖に陥りながら次々と墜落していった。


地上では、わんわんが魔族兵たちを迎え撃っていた。「俺の相手はお前たちだ!」彼は鋭い爪と牙で敵を瞬く間に倒していく。


ハムちゃんは静かに手をかざし、強力な魔法で敵の増援を封じ込めた。


「これで一段落ね」フレイヤは満足げに微笑んだ。


「主様、お怪我はございませんか?」ティアちゃんが降り立ち、優しく尋ねた。


「ええ、大丈夫よ。みんなのおかげね」


わんわんは鼻を鳴らし、「ふん、敵も大したことなかったな」と言った。


「さぁ、早く王都に向かいましょう。お菓子が待っているわ」フレイヤは再び馬車に乗り込んだ。



---


こうして、フレイヤ一行は魔王軍の抵抗を軽々と突破し、王都への道を順調に進んでいった。一方で、魔王軍は次第に崩壊し、王国軍はその状況に戸惑いを隠せなかった。


「敵が全滅している……一体誰がこんなことを?」


「まさか、本当にフレイヤ様が戻られたのか?」


「情報を集めろ!この機を逃すな!」


王国中で様々な噂が飛び交い、人々の間には希望と混乱が広がっていた。



---


魔王は最後の手段として、自ら前線に出ることを決意した。


「我が自ら出向いてくれる。残った兵は全て集結せよ!」


四天王たちはその命令に従い、最後の抵抗を試みようとしていた。



---


フレイヤたちは王都まであとわずかという地点まで来ていた。


「もうすぐね。楽しみだわ」フレイヤは心躍る気持ちを抑えきれなかった。


しかし、その時、再びわんわんが警戒の声を上げた。


「主様、強大な気配が近づいている。どうやら魔王自らが出てきたようだ」


「やれやれ、本当にしつこいわね。わんわん、お願いできる?」


「お任せを、主様」わんわんは自信に満ちた笑みを浮かべた。




フレイヤたちを乗せた馬車は、静かな田園風景の中を進んでいた。窓から差し込む陽光が心地よく、フレイヤはティアちゃんことティアマトに話しかけた。


「ねぇ、ティアちゃん。王都に着いたら最初にどのお菓子屋さんに行こうかしら?」


ティアちゃんは微笑んで答えた。「主様がお気に入りだった『スイートガーデン』はいかがでしょうか?新作のフルーツタルトが評判のようですよ。」


「それは楽しみね!」フレイヤは目を輝かせた。


ハムちゃんことバハムートは、静かに目を閉じて座っていたが、フレイヤの楽しそうな声にわずかに微笑んだ。


そのとき、わんわんことフェンリルが突然立ち上がった。「主様、前方に強い気配を感じます。どうやら誰かが待ち構えているようです。」


馬車が止まり、一行は外に出た。道の先には、鋭い眼差しを持つ戦士が立っていた。彼は堂々とした態度でフレイヤたちを見つめ、静かに口を開いた。


「私は四天王の一人、ガルド。この先へ進むことは許されない。」


フレイヤは少し眉をひそめた。「また邪魔が入ったわね。早くお菓子を食べたいのに。」


フェンリルが前に出て、「主様、ここは私にお任せください。」と申し出た。


「お願いね、わんわん。」フレイヤは軽く頷いた。


ガルドは剣を抜き、構えをとった。「来るがいい。」


フェンリルは静かに相手を見据え、一瞬のうちに距離を詰めた。二人の間で激しい攻防が繰り広げられたが、フェンリルの動きは速く、力強かった。


「なんという速さだ……!」ガルドは驚きを隠せなかった。


フェンリルは冷静に、「これで終わりです。」と言い、最後の一撃を放った。ガルドはその場に膝をつき、静かに敗北を認めた。


「見事だ。あなたたちの実力、確かに認めました。」


戦いが終わると、フレイヤは微笑んで言った。「さすが、わんわん。頼りになるわ。」


フェンリルは少し照れた様子で、「主様のためですから。」と答えた。


ティアちゃんは安心した表情で、「これで先へ進めますね。」と述べた。


ハムちゃんも静かに頷いた。


一行は再び馬車に乗り、王都への道を進んだ。フレイヤは窓の外を眺めながら、「早く『スイートガーデン』のフルーツタルトを食べたいわね。」と楽しそうに話した。


ティアちゃんは微笑みながら、「きっと主様のお口に合うと思います。」と答えた。


そのとき、遠くの空に一羽の鳥が飛んでいるのが見えた。ハムちゃんがそれに気づき、「穏やかな日ですね。」と静かに言った。


フレイヤはうなずき、「本当に。こうしてみんなで旅をするのは楽しいわ。」と微笑んだ。


フェンリルは前方を見据えながら、「次に何が待ち受けていても、私たちなら乗り越えられます。」と力強く言った。


「頼もしいわ、わんわん。」フレイヤは彼に感謝の視線を送った。


こうして、一行は順調に旅を続けた。彼らの絆はますます深まり、目的地である王都までもうすぐだった。




フレイヤたちの馬車は、緑豊かな森を抜け、王都への道を順調に進んでいた。フレイヤは窓から差し込む木漏れ日に目を細めながら、ティアちゃんに話しかけた。


「ティアちゃん、王都に着いたら、新しくできたスイーツ店に行ってみない?」


ティアちゃんは微笑んで答えた。「もちろんです、主様。『甘味の楽園』というお店が評判のようですよ。」


「それは楽しみね!」フレイヤは嬉しそうに手を叩いた。


ハムちゃんは静かに目を閉じて座っていたが、フレイヤの楽しそうな声にわずかに微笑んだ。


しかし、その穏やかな時間は長く続かなかった。突然、わんわんことフェンリルが険しい表情で立ち上がった。


「主様、前方に強い気配があります。どうやら魔王軍が残った兵力を総動員しているようです。」


フレイヤはため息をついた。「また邪魔が入るのね。早くお菓子を食べたいのに。」


馬車が止まり、一行は外に出た。道の先には、三人の四天王が揃って立ち塞がっていた。彼らはそれぞれ独特のオーラを放ち、その背後には大勢の魔族兵が待機していた。


中央の男が口を開いた。「我らが魔王様の命により、ここで貴様らを討つ!」


フレイヤは興味なさそうに彼らを見つめ、「わんわん、どうする?」と尋ねた。


フェンリルは自信に満ちた表情で答えた。「主様、ここは私たちにお任せください。」


ティアちゃんもうなずいた。「私たちで対処いたします。」


ハムちゃんも静かに頷いた。


四天王の一人、暗黒の剣士ガルドが剣を抜き放ち、「かかってこい!」と叫んだ。


フェンリルは一歩前に出て、「俺の相手はお前だ」と宣言した。


一方、炎の魔女レイラは炎の魔法を繰り出し、ティアちゃんに向かって攻撃を開始した。


「ティアちゃん、気をつけてね」とフレイヤが声をかける。


「ご心配なく、主様。」ティアちゃんは優雅に舞いながら、氷の魔法で炎を相殺した。


最後の一人、巨人のゴルドはその巨大な体でハムちゃんに迫った。しかし、ハムちゃんは静かに手をかざし、その動きを止めた。


戦いは激しさを増していった。フェンリルは素早い動きでガルドの攻撃をかわし、逆に強烈な一撃を加えた。


「なかなかやるな、だがまだ終わらん!」ガルドは再び剣を振るった。


「無駄だ。」フェンリルは冷静に相手の攻撃を見極め、一瞬の隙を突いてガルドを倒した。


ティアちゃんはレイラの炎を完全に封じ込め、氷の結界で彼女を閉じ込めた。


「これでおしまいです。」ティアちゃんは穏やかに微笑んだ。


「まさか、私が敗れるなんて……」レイラは驚愕の表情を浮かべた。


一方、ハムちゃんは巨人のゴルドに向かって静かに語りかけた。「あなたの戦いはここまでです。」


その言葉とともに、ゴルドは動きを止め、地面に倒れ込んだ。


こうして、三人の四天王は次々と敗北し、魔王軍の残党も戦意を喪失して逃げ出した。


フレイヤは腕を組みながら、「みんな、お疲れさま。これでやっと先に進めるわね。」と微笑んだ。


フェンリルは得意げに「主様のためなら、いつでもお役に立ちます。」と言った。


ティアちゃんも「主様が無事で何よりです。」と微笑んだ。


ハムちゃんは静かに頷いた。


馬車に戻り、一行は再び王都を目指して進み始めた。フレイヤは窓の外を眺めながら、「これで邪魔もなくなったし、早くスイーツが食べられるわね。」と心を躍らせた。


しかし、フェンリルはまだ警戒を解いていなかった。「主様、魔王が自ら出てくる可能性があります。ご注意を。」


「そうね。でも、わんわんたちがいれば大丈夫でしょ?」フレイヤは微笑んだ。


「もちろんです、主様。」フェンリルは力強く答えた。


ティアちゃんも「私たちが全力でお守りします。」と続けた。


ハムちゃんも静かに頷いた。


こうして、一行は王都への最後の道を進んでいく。彼らの前には、まだ試練が待ち受けているかもしれないが、フレイヤはただスイーツへの期待で胸を膨らませていた。




フレイヤたち一行は、ついに王都の門前にたどり着いた。壮麗な城壁と高くそびえる塔が目の前に広がり、その光景にフレイヤは胸を躍らせた。


「やっと着いたわね!早く『甘味の楽園』に行かなきゃ!」フレイヤは目を輝かせて言った。


「主様、お疲れさまでした。長旅でしたね」とティアちゃんことティアマトが微笑んで答えた。


「ハムちゃんも大丈夫?」フレイヤはハムちゃんことバハムートに声をかけた。


「問題ありません、主様」とハムちゃんは静かに頷いた。


わんわんことフェンリルは周囲を警戒しながら、「主様、王都の中でも油断は禁物です。魔王が近くにいる気配があります」と忠告した。


「でも、今はお菓子の方が大事なの。魔王なんて後でいいわ」とフレイヤは気にする様子もなく城門をくぐった。


王都の中は人々で賑わっていたが、その表情にはどこか不安が漂っていた。魔王軍の侵攻に怯えているのだ。


「何だかみんな元気がないわね」とフレイヤは首をかしげた。


「魔王の脅威が近づいているからでしょう」とティアちゃんが説明した。


「そうなの。でも、私たちがいるから大丈夫よね」とフレイヤは自信満々に答えた。


一行は繁華街を進み、目的のスイーツ店『甘味の楽園』に到着した。店の前には美しい看板が飾られ、甘い香りが漂っている。


「やっと着いた!新作スイーツが楽しみだわ!」フレイヤは嬉しそうに店内へと足を踏み入れた。


店内に入ると、店員たちは驚いた表情でフレイヤを見つめた。「フレイヤ様、お戻りになられたのですね!」


「ええ、新作のスイーツをお願い」とフレイヤは笑顔で答えた。


店員たちは慌ただしく準備を始めた。


その頃、王城の前では魔王が自ら姿を現していた。巨大な黒い翼と不気味なオーラを放つ彼の姿に、人々は恐怖で凍りついていた。


「愚かな人間どもよ、今日こそこの王国を我が手に落とす!」魔王の声が響き渡った。


王国の騎士団は必死に立ち向かうが、魔王の圧倒的な力の前に次々と倒れていく。街には絶望の色が広がっていた。


「このままでは王国が滅んでしまう……」国王は玉座の間で頭を抱えていた。


その時、一人の兵士が駆け込んできた。「陛下、フレイヤ様が王都に戻られたとの報告が!」


「本当か!彼女がいれば希望がある!」国王は顔を上げた。


一方、フレイヤはスイーツ店で至福の時間を過ごしていた。


「このケーキ、本当に美味しいわ!ティアちゃんも食べてみて!」フレイヤはティアちゃんに勧めた。


「ありがとうございます、主様」とティアちゃんは一口食べて微笑んだ。


「ハムちゃんもどう?」フレイヤはハムちゃんに声をかけた。


「いただきます、主様」とハムちゃんは静かにケーキを味わった。


わんわんは外の騒ぎを耳にし、「主様、どうやら魔王が王城前に現れたようです。ここは危険です」と報告した。


「そうなの?でも、今はスイーツが大事だから」とフレイヤはまったく動じない。


「しかし、このままでは被害が広がります。私が行ってまいります」とわんわんは決意を固めた。


「わかったわ、わんわんに任せるわね」とフレイヤは軽く頷いた。


わんわんは一礼し、急いで王城へと向かった。


王城前では、魔王が高笑いを上げていた。「抵抗しても無駄だ!この国は終わりだ!」


その時、わんわんが堂々と現れた。「ここから先へは一歩も進ませない」


「貴様は何者だ?」魔王は不敵な笑みを浮かべた。


「フェンリルだ。主様の邪魔をする者は許さない」


「一匹の狼ごときが私に挑むとは愚かだ!」魔王は強大な魔力を放ち攻撃を仕掛けた。


しかし、わんわんはその攻撃を軽々とかわし、鋭い爪で反撃した。二人の間で激しい戦いが繰り広げられる。


「なかなかやるな。しかし、これで終わりだ!」魔王はさらに強力な技を繰り出した。


「無駄だ」わんわんは冷静に相手の攻撃を受け流し、一瞬の隙を突いて魔王に致命的な一撃を与えた。


「ば、ばかな……この私が……」魔王は驚愕の表情を浮かべ、地面に崩れ落ちた。


王国の兵士たちはその光景に呆然とし、やがて大歓声が上がった。「魔王が倒れた!勝利だ!」


わんわんは静かにその場を後にし、再びスイーツ店へと戻った。


店内では、フレイヤが満足そうにスイーツを味わっていた。「本当に美味しかったわ。おかわりしようかしら」


ティアちゃんは微笑んで、「主様、お腹を壊さないようにお気をつけください」と言った。


「大丈夫よ。ハムちゃんももう一つどう?」とフレイヤは勧めた。


「ありがとうございます、主様」とハムちゃんは静かに受け取った。


そこへ、わんわんが戻ってきた。「主様、魔王は倒しました。もう安心です」


「ありがとう、わんわん。これでゆっくりスイーツを楽しめるわね」とフレイヤは微笑んだ。


外では人々が歓喜に湧いていた。「フレイヤ様が魔王を倒してくださった!」


国王や貴族たちがスイーツ店に駆けつけ、「フレイヤ様、ありがとうございます!ぜひ王城へお越しください!」と口々に言った。


「うーん、今はスイーツでお腹がいっぱいだから、また今度ね」とフレイヤは軽く手を振った。


人々は彼女の飄々とした態度に戸惑いつつも、その存在に感謝の意を示した。


「さあ、次はどこのスイーツを食べに行こうかしら?」フレイヤは楽しそうに席を立った。


「主様の行きたいところへお供いたします」とティアちゃんが答えた。


「私もです、主様」とハムちゃんも続けた。


わんわんは周囲を見回しながら、「次に何があっても、私が全力でお守りします」と宣言した。


「頼もしいわ、わんわん」とフレイヤは彼に微笑みかけた。


こうして、フレイヤたちの旅はまだまだ続いていく。彼女のスイーツへの情熱は尽きることがなく、その道中でどんな冒険が待ち受けているのか、誰も知る由もなかった。



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