「それじゃあ、まずは俺から」
そう言って自己紹介を始めたのは、先ほどシロに説明を促した、人当たりの良さげな男の子だ。
シロが去ってから、彼の提案で、1人ずつ自己紹介をしていくことになった。もしかするとこれから、長い期間この屋敷で顔を合わせることになるかもしれないのだ。相手を知る機会を用意してくれたことに感謝しなければ。
私たち6人は広間の奥に置いてあるソファーに、テーブルを囲むような形で座っていた。
「俺の名前は
彼の名前は梶原くんというらしい。同い年くらいかと思っていたが、2学年も上だった。癖だろうか、彼はしきりに右足の膝あたりをさすっている。
「じゃあ、次あたしねー。名前は亜紀。
次に話し始めたのは、梶原くんの右隣に座っていた、見た目の派手な女の子だ。自分で言った通りオシャレが好きらしい。とても明るくて、クラスの中心にいそうな子だ。
すると今度はその隣に座っていたおとなしそうな女の子がおずおずと話し始める。
「えっと、
「えーっ。他に何かないの? あ、灯子動物好きだったじゃん。そうゆうの言いなよ! 自己紹介ってそういうものでしょー?」
「私はいいよ……。人前で話すの苦手だから」
藤本さんに指摘を受けていたが、拒否してしまった。どうやら相当な人見知りのようだ。
「あー……。次は私の番ってことでいい?」
藤本さんと春城さんが話しているところに、気まずそうに声をかけたのは、さっきシロに質問を投げかけたお姉さんだ。終始気だるげな雰囲気が漂っている。
「あ! ごめんなさい。どうぞどうぞ」
藤本さんが謝ると、彼女は、地声だろうか、低めのハスキーな声で話し始める。
「私は
気だるげなのは雰囲気だけではなかったようだ。興味なさげに自己紹介を済ませて、黙ってしまう。少々とっつきにくいイメージを与えた。
「じゃ、じゃあ、わた……ぼ、僕の番だね。僕は
ここに集められたのは、学生だけではないみたいだ。社会人までいるなんて。
それにしても、おどおどした人だなぁ。なんて思っていたら、梶原くんから私に声が掛かった。
「次、君の番だよ」
そうだ、私の前に5人すでに自己紹介が終わった。未だに夢見心地で忘れていたが、次は私の番だ。
「あ、えっと、私は東英江です。高校一年生。16歳です。趣味は……楽器で、クラリネットできます。よろしく」
趣味に関しては、柴崎くんの件もあって少し吃ってしまったが、それ以外は普通に紹介を済ますことが出来た。
「よし! これで全員の紹介が終わった訳だけど……、これからどうしようか」
もう完全に梶原くんがリーダーだ。自己紹介していてわかったが、この割と濃い面子をまとめてくれるのは有り難い。
「えっと、さっきのうさぎ……、シロ、だっけ? あの子は、この屋敷の中に、私たちの原点に関するものがあるとか言ってたけど……。とりあえず探してみる? 屋敷の探索も兼ねてさ」
さっきのダウナー系のお姉さん、改め牧さんが提案する。
「ぼ、僕も賛成だな」
遠山さんが、やはり吃どもりながら賛成の意を示すと、私含め残りのみんなも彼女の案に食いついた。
――こうして私たちは屋敷を隅々まで探索することになった。